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3

街に入るには関税がかかる。
それは大きい街ほど高い。

リオルが訪れたその街、「レナーハルス」はこの辺りでは一番栄えている貿易街だ。

そのため、街の至るところには様々な売店が立ち並び、商人の声が鳴り響く。

久しぶりの街の活気に新鮮さを感じながら、リオルは目的の場所へと向かう。

「たしかここらへん……あっ、いた。おーいブラッキー!」

「んっ? おぉリオル! 久しぶりだなぁ」

体を粉で真っ白に染めたそいつは、リオルの小さい頃からの友人、ブラッキー。
体が粉で真っ白なのは、彼がパン職人の見習いだからだ。

「どう? 最近」

「ん、まあまあかな。何とかぼちぼちやってるよ。とっ、無駄話すると師匠がうるさいからさ。ごめんな」

「あぁ、そうだね」

仕事中の無駄話があまり好かれないのはどこの国でも同じだ。

「それで? こんな時間に来たということは、客として来たんだろ?」

んんっと咳払いしてから、ブラッキーは聞いた。

「うん。ここの小麦粉を袋一杯にして売ってほしいと思ってね」

「……また凄い量だな。何かあったのか?」

高価な小麦粉は貴族以外、客人や式典などで使われるのが一般的だ。
普段は固くて苦いライ麦パンを食べるし、リオルはそんなに嫌いではないので苦にはなっていないのだが、あいにくと今回の客人は安いものでは納得してはくれそうにない。

そんなわけで、高価な小麦粉を購入する羽目になっているのだ。

「ふーん。大変だな」

「まぁね、まだ寄らないといけない場所があるからね」

「そうなんだ。あっ、小麦粉だったな。ちょっと待ってろよ」

そう言うと、ブラッキーは店の奥へと消えていった。
その間、リオルは自分の財布と睨めっこをしていた。

「おまたせ、小麦粉ね。ほら」

はちきれそうな袋を抱えてブラッキーは戻ってきた。
なんだか、さらに白くなった気がする。

「料金は?」

「2シーナでいいぜ」

この量でこの金額は安いほうだ。
そう思って、リオルは銀貨を二枚差し出した。

「まいどっ」

「ありがとう。じゃあ仕事頑張ってね」

挨拶をしてリオルはパン屋をあとにした。
まだまだ買うものは山ほどある。

日がくれる前に帰りたいと、リオルは思った。






やけに静かだと思った。
どうやら連れはこの俺様を置いて、どこかに行ってしまったようだ。

「んー……あふ」

久しぶりのふかふかなベッドのおかげか、やけに目覚めがいい。
昨日死にかけていたのが嘘のように感じられる。

特にすることもなく、ベッドの上でぼーっとする。

外に出ようかと思ったが、雪が降っているからやめにした。

「暇だな……」

ただ時間だけが過ぎていく。
もう一眠りしようかとベッドに横たわった時、暖炉の火が消えかけていることに気がついた。

薪を入れるのはめんどくさいが、これ以上寒くなるのはごめんだ。

「やれやれ」とまた起き上がり、暖炉に近づく。

そして薪を手にしたとき、もう一つ気になることがあった。

「あれ? これ、リオルか? てことは隣は兄さんかな……」

暖炉の棚に置いてあった写真だ。

薪を適当に火の中に投げ込みその写真に釘付けになる。

「なんか、この人どこかで……」

その時、玄関の扉にかかった鍵が外れる音が小屋の中に響いた。
思わず体がビクリと反応してしまう。

「っ! たくっ、びっくりさせるなよ。おいリオ――」

言葉を失ったのは、入って来たのがリオルではなかったから。

まさか、いやそんなわけない。
これは夢だ。俺はまた寝ぼけてるんだ。

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