バンギラスの口内は夏を思わせるようなジメジメとした蒸し暑さだった
放り込まれたブイゼルは、その柔軟な舌の上にいた。唾液と思われるものさえなければ、非常に快適だと言ってもおかしくないであろうと、思わせるような柔らかさだ
しかし、うっとりしている場合ではない。現に今、自分は食べられそうになっているのだから
「だ、出せ! コノッ!」
ジタバタと暴れるものの、柔軟な舌には敵うわけもなく、ただただブイゼルの体力を奪っていくだけであった
「ククク。元気なヤツは大好きだぜ?」
刹那、舌が器用に上下にうねりブイゼルを更に口内の奥に送る。唾液がまるでローションのような働きをし、ブイゼルはいとも簡単に動かされる
「うわわっ! ま、待った!」
あたふたと慌てるブイゼル。バンギラスは、関係なしに口を動かす
すると、ブイゼルの体に、あの鋭く尖った牙が突き立てられた
「う……ぁ……」
「心配ない。今は殺す気はさらさらないからな」
その言葉に少し安堵するも、すぐにその感情は砕け散った。牙が体に食い込んできたのだ
「うっ! い、痛い!」
「んっ? 甘噛みだが?」
ブイゼルの体に容赦なく牙が食い込む
次第に牙が食い込んだ箇所から、血が滲んできた
その真っ赤な液体は、ブイゼルの体を伝って、舌に落ちる
「おっと、少しやり過ぎたか」
その瞬間のバンギラスが力が緩んだ瞬間をブイゼルは見逃さなかった
体の向きを変え、舌に噛みついたのだ
「っ! お前……」
ブイゼルの口に、苦いような酸っぱいような、とにかく不快な味が広がった
気は進まなかったが、そんなことを気にしていたら命がなくなると感じたブイゼルの必死の抵抗だった
だが、事は更に最悪の事態へと進んでしまう
バンギラスはブイゼルを吐き出すどころか、頭を上に突き上げ一気にブイゼルを喉の入り口にまで運んだ
「もう少し、いたぶるはずだったが気が変わった。さっさと飲み込ませてもらう」
ブイゼルが何かを言う前に、バンギラスはもう一度頭を上に突き上げた
重力にしたがって、ブイゼルはズルルッと滑り落ちる
「うわぁぁぁぁぁっ!」
“ゴグリッ……”と、少々鈍い音をたてて、バンギラスはブイゼルを飲み込んでしまった
喉の膨らみが、次第に腹の中へと消えていったのだった
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