緊迫した空気の中、本田はゆっくりと口を開く
「僕は〇〇高校に合格出来ますか?」
真剣な眼差しで十円玉を見つめる
スッと十円玉が動き出す
“はい”
それを見た本田の顔からは自然と笑みが零れた
「鳥居の…」
そう言おうとした瞬間、十円玉が“いいえ”に移動した
「え!?何で!?」
本田は目を見開き十円玉を見つめる
するとまた十円玉が“はい”に移動する
再び胸を撫で下ろそうとした時にまた十円玉が動きだす
ゆっくりだったのが次第に加速されていく
はい…いいえ…はい…いいえ…はい…いいえ…はい…いいえ…
十円玉は何度も“はい”と“いいえ”の間を行き来する
「と、鳥居の位置までお戻り下さい!!」
怖くなり叫ぶようにそう言うと、十円玉はピタッと動きを止めて鳥居の位置に戻った
荒くなる呼吸を落ち着け、再び十円玉を見据える
本田は怖い反面、どうして“いいえ”になったか知りたかった
「こっくりさん、こっくりさん。どうして合格出来ないんですか?」
震える声でそう聞いてみる。すると…
“し”“ぬ”“か”“ら”
「え!?」
流石にその言葉に動揺を隠せず、目を見開き、口をパクパクと動かしていた
「そ、そんなの嘘に決まってる!鳥居の位置までお戻り下さい!」
取り乱しながら十円玉に叫んだ
死という一番恐ろしい言葉を突き付けられた本田は、もう冷静さを失っていた
それでもパニックを起こしている自分を深呼吸で落ち着けようとする
そしてまだ不安と恐怖はあるものの、本田はしっかり十円玉を見据え、口を開く
「こっくりさん、こっくりさん…。ど、どうぞお戻り下さい」
ゆっくりと十円玉が動き、“はい”へ移動する……はずだった
“いいえ”
「こっくりさん、こっくり。どうぞお戻り下さい!…お戻り下さい!!」
何度言っても答えは同じだった
“いいえ”
「な、何で…!?」
呟いたつもりだったが、それを聞き十円玉が物凄い速さで動きだす
一文字一文字と迷いも無しに移動していく十円玉
紡がれていく言葉を見た本田の顔からは血の気が引いていった
“お”“ま”“え”“を”“た”“べ”“る”“た”“め”
「うわぁぁぁ!!!!!」
恐怖のあまり本田は指を離してしまった
こっくりさんをやる上での注意
それは“絶対終わらせること”
本田はそれが出来なかった
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