「なぁなぁ!『こっくりさん』って知ってるか?」
ここはとある中学校の教室
退屈な授業が終わり、休み時間に入ったところだった
黒板には難しい数式が書かれており、その前で伸びをしたり次の授業の用意をする生徒がいた
その一瞬の静かな空間を誰かがぶち壊す
『こっくりさん』という言葉と共に…
「知ってる!でもそれ迷信でしょ?」
「この前俺の友達がさ…」
「そういえば三組の奴がさ…」
さっきまでの静けさが嘘のように、教室が生徒の話し声で溢れ返る
今この学校では『こっくりさん』がブームのようだ
迷信、誰かがやって行方不明になった…話すことは色々
そんな話に耳も貸さず、教室の隅っこで読書をする男子生徒がいた
彼の名は本田 治。真面目そうな雰囲気を漂わせ、本に書かれている文字を見つめていた
「本田はどう思う?」
そこに彼の友人が話し掛けてくる
本田は本から目を離さず、興味ないの一言で終わらせた
その反応に彼の友人は少し落胆した様子を見せる
「お前もさ、もう少しな」
キーンコーンカーンコーン…
友人が何か言おうとした瞬間にチャイムが鳴った
怠そうな顔をしながら席へ戻る友人。それと同時にガラガラと扉が開き、先生が入ってくる
本田は『こっくりさん』の話を気にせずに教科書を開いた
* * * *
放課後
陽が沈み始め、学校は淡い橙色に染まっていた
グランドでは運動部が部活動をしている
本田は帰宅部なので何もせずに一人で帰っていた
両手で参考書を抱える様に持ち、それを見つめながら歩いていた
まだ受験生にもなってない彼はレベルの高い高校に受かる為、必死に勉強していた
その為、どうでもいい世間話等は一切受け付けない
「…はぁ」
重い溜息をつき、不安げな表情を浮かべる
少し早くから勉強してるからと言って、安心することは決してない
本田の心には少し早めの受験のプレッシャーというものが押し寄せていた
それが溜息という形になり空気中に吐き出される
「受かるかな…」
受験生なら誰でも思うことを呟く
そんな時だった
「うわっ!?…何だこれ?」
目の前から一枚の紙が本田の顔に張り付くように飛んできた
それを手にとり、何か確認する
赤い紙だった
表に鳥居・『はい』『いいえ』・ひらがな五十音が書かれ、裏には狐の絵が描かれた紙
「これって…」
まさしく今話題沸騰中の『こっくりさん』だった
本田は呆れた顔をし、紙をくしゃくしゃに丸めようとした
“こっくりさんは何でも知ってる”
ふとクラスメイトが言っていた言葉に彼の手の動きが止まる
今彼の頭の中に受験に合格出来るのかという悩みがあった
更に中学生の心にはまだ子供の心、好奇心というものがあった
この二つの衝動に耐え切れず、本田は赤い紙を家に持ち帰った
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