昼間だと言うのに薄暗い森の中
季節も変わり、赤や黄色に葉が色を変える
冷たい風が吹き抜け、紅葉が散るそこはとても美しく、そして不気味な場所だ
「やめとこうぜ…?」
黒髪の若い青年はそう言った
貧弱そうな体を震わせ、不安混じりの声で何度も何度も…
だが、もう一緒にいる白髪の男は彼を無視して奥へ進んでいく
少し年老いた男の手には銃が握られていた
狩猟によく使われる長い銃、猟銃だ
更に胸ポケットには片手で使える銃、ベルトには短剣が挟まれている
その装備から分かるように、彼等はハンターだ
依頼を受け、この森に来たらしい
人喰い魔女の棲む森へ
熊や鹿とは全く違う相手
その為、奥へ進む度に男達の表情は緊張で強張っていく
額から汗が流れ、猟銃を持っている手にも力が入る
青年も同じだ
冗談を言う事すら出来ない
そんな緊張に包まれた彼等を自然が奏でる音が包み込む
カサカサと葉が揺れる音
森の中で谺する鳥の鳴き声
長閑な風景や音と思えるそれは、彼等に更なる不安を抱かせる
そしてゆっくりと、着実に彼等の心に恐怖心を植え付けていた
「や、やめとこうぜ…」
また青年が言う
身の危険を感じ、何度も男を説得しようとする
何度も何度も何度も……
だが、男は聞かない
だから彼等は辿り着いてしまったのだ
「さぁて、どっちから喰ってやろうか?」
死という名の終焉に
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