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第七話

狼が私を咥え込む
最初は頭から腰までが収まる

蒸し暑く、生臭い空間
そこの半分ぐらいを占める薄くて平べったい舌
それが張り付くように私の体を這う

巨大な犬に舐められたような感触だった
ベロリと言うよりペタペタと言った感じの方が正しいかもしれない

そんな事を考えている内に舌が器用に私の上半身を持ち上げる
さりげなく食い込んでいた牙の痛みも消え、次の瞬間に下半身も収まってしまう

それと同時に狼が動き出す
傾斜がついた床に滑る音を立てながらも脱出しようとする

ねっとりとした唾液が私の体に絡み付く
別に舌が私に塗りたくっているわけではない
狼が動く度に揺れる口内で私が転がっているからだ
激しい揺れ、時折体が軽く跳ねる

気がつけば折角乾き始めた制服と共に私の体は、唾液まみれになっていた
牙にぶつかって痛い思いをしたが、怪我はない
極力苦痛を避けさせようとしているみたいで、舌も私に巻き付いて固定しようとしている

私は狼に身を任せる事にした
ここで抵抗しても意味はないからだ
それに、この温かさには何処か安堵感がある
奥に行けばもっと……

そう感じた自分に軽い嫌悪を覚えた
けれど間違いではない

狼が一瞬止まったかと思えば舌に傾斜がついた
唾液でぬるぬるの状態になっている私は、ゆっくりと奥へ滑っていく
最後に舌が軽く波を打つように動いたかと思えば、私は狭い肉洞に入り込む

あらゆる方向から柔らかな肉の抱擁を受ける
弾力があり、何処かツルツルとした感触
そんな肉が私を奥へと引きずり込む
縦横と伸縮する肉洞を進み、ある程度落ちると強めの圧迫を受けた

息が出来ない苦しさ
でもそれはたった一瞬だった


ごくっ


と生々しい音と共に解放され、私は胃袋に送られる

「また…」

二回目の胃袋
相変わらず胃壁は柔らかく、不快な場所である
でも今ここが一番安心出来る場所でもある


むにゅぅ…


早速胃壁が私を歓迎してくれる
体に合わせて形を変え、密着してくる
…少し気持ち良いかもしれない

ゆっくりと胃袋の奥へ運ばれていく
その度に私の肌に粘液が絡み付き、胃壁と擦れてニチャニチャと粘着質な音を奏でる
それは奥へ進めば進む程、音量が増していく

そして私はまた全身が胃壁に包み込まれてしまった
鼓動音を聞きながら、マッサージを受ける


むにゅっ、もにゅっ…ぐちゅぐちゅ…ぺちゃっ!


「んんっ!」

私が胃袋に収まった今でも狼は動き続けている

揺れる事を忘れていた私は顔から胃壁の中に突っ込んでしまう
顔がスライムに包まれるような感覚…息が出来ない

急いで顔を離し、息を吸う
湿り気を帯びた臭い空気が胸を満たす
吐き気を催したが必死に堪えた

宥めるように、胃壁がまたマッサージを始める
手や足、腰や肩までしっかり揉み込まれていく
本来は溶かす為の行為だと思うと恐ろしいが、今は違う
温かくて、気持ち良い場所…

ずっとここに居たい
そんな気持ちが溢れてくる

「うっ…うぅ…」

目から涙が零れる
何故泣いてるかは、よく分からない
ただ…ただ…私は独りで泣いていた
12/08/05 00:35更新 / どんぐり

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