今は真夏
向日葵が一番生き生きとした姿を見せる季節である
それと対称的に人間が一番へばる季節でもある
肩甲骨まである真っ黒な私の髪
冬は温かいけど、夏はとにかく暑い
ポツポツと滲み出る汗を手で拭い、畑の入口へと入る
そこには私の身長と同じぐらいの向日葵が沢山並んでいた
気晴らしに最適なそこに足を踏み入れる
コンクリートとはまた違った地面の感触
それがスニーカーを通して伝わってくる
今足元に広がる地面が、この向日葵畑を作り出してるかと思うと不思議な気持ちになった
そんな気持ちに浸りながら、私はこの畑の中心部へ足を運ぶ
目の前にあるのは、巨大な風車
赤茶色の煉瓦で作られたオランダの写真によく出てくるようなもの
けれど羽は止まっていた
風が吹かないのか、誰も使っていないからか…
それでも向日葵畑との組み合わせは良い
写真でしか見たことのない風車を、私は見上げていた
「あれ…?」
ふと扉が目に写った
半開きのようで、少し中が見える
好奇心で扉の前まで行き、中を覗き込んでみる
しかし、誰かいる気配はなかった
そんな扉に私は少しずつ近づいていた
そして半開きの扉の取っ手に手をかけ、ゆっくりと引く
ギィ…と不気味な音が響き渡る
「んっ、ゲホッゲホッ!」
中は埃っぽかった
しかも薄暗くて冷たい空気が不気味さを醸し出している
窓が無ければ完全に真っ暗だった
「これは…小麦粉…?」
入口から入ってすぐの所に、布製の袋がいくつか置かれていた
その周りに白い粉が落ちている
軽く袋の中を見てみると、その粉が沢山入っている
小麦粉かは、はっきり分からないが、この風車は粉引き風車だと分かった
そのまま私は階段を上がった
ギシギシと木造ならではの物音をさせ、一段一段と足をかけていく
そして二階へと出た
今にも穴が空いてしまいそうなフローリングの床
その中心に巨大な石臼が置いてあった
真上を見れば同じく巨大な木の棒と、それを動かす巨大な歯車が並んでいる
それ等は所々に蜘蛛の巣が張ってある
それが、この風車がいかに古く、長い間使われていないかを物語っていた
「あっ」
色々見ている内にテラスの様なものがあるのに気づいた
崩れないか確認し、テラスに出て外の景色を一望する
電車の窓や、歩きながら見た光景とはまた違った鮮やかな光景
眼下に広がる黄色の世界、眼前には高く聳え立つ山々
綺麗なはずなのに…やっぱり曇り空なのが惜しい
ある程度景色を堪能すると私は風車から出ようとした
「……?」
しかし、何かの気配が私の足を止める
風車の二階をあちこち見たけど、誰かいるとは思わなかった
ゴトッ
「え!?」
何か物音がした
逃げようと思ったけれど、好奇心に負けて物音がした方向へ向かう
そこには、石臼と沢山の袋があるだけ
だと思った
「あ、あれは…?」
隅っこの方に何かいた
目を凝らして見れば四足歩行で犬のような外見をもつ…
向日葵のように黄色い狼だった
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