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第一話

ガタンゴトン…ガタンゴトン…


規則正しく鳴り続ける電車の音
私は緑のシートの座席に座り、窓の外を眺めていた

外の景色は電車のスピードに合わせ、スライドしていく
私の目には鮮やかな色だけが写された

向かいの席に視線を移せば仲良さげな親子が座っている
母親と五歳ぐらいの小さな男の子
窓の外を見ては、綺麗ね、と呟いていた

溜め息が零れる
目の前の親子は私にとっては理想の親子

私と母は仲が悪く、よく喧嘩をする
今日も喧嘩した
原因は私の成績の話
高校受験を控えているにも関わらず私の成績は最悪
長い口論が続き私は外に飛び出した

そして今に至る
私の頭の中には疲労と倦怠が取り巻いていた

何処で降りようかなんて決めていない
ただ心の赴くままに行動しているだけ
今は列車の窓から見える沢山の景色が唯一の癒しになっている

私は窓枠に頭をもたせながら、その景色を見つめる
けれども私の心には何も生まれなかった

車内にアナウンスが響き渡った
どうやら駅に到着するらしい

「……あっ」

思わず声を出してしまった
窓の外が黄色に染まっていた

向日葵畑らしい
真ん中に巨大な風車が建っており、周りを向日葵が囲っている
そして奥には山があるという、絵画を見ているような光景だった

完全に心を奪われた私は駅に着くとすぐ降りた
ICOCAカードを使って改札口を通り抜け、売店の前を通り過ぎる
東出口と書かれた場所から外へと出て周囲を見渡す

空は相変わらずの曇り空
折角上がってきたテンションも下がってしまう

向日葵畑は駅から少し離れた位置にあるらしい

煉瓦が敷き詰められた可愛らしい道を歩き出す
知らない場所だから道に迷わないように線路沿いを歩いた

時折、真横を電車が通過する
その度に吹いてくる風が心地良い

「あった!♪」

歩くこと数分
やっと目的の場所を見つけた

電車の窓から見た時と同じ
辺り一面を向日葵の黄色が埋め尽くしていた
綺麗な光景だけど、やっぱり曇り空だという事が惜しい

とりあえず私はその中へ入っていく事にした
12/08/05 00:32更新 / どんぐり

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まろやか投稿小説 Ver1.53c