* * * * *
「ごちそうさまでありんした♪」
妖狐は満足げな笑みを浮かべ、まだ膨らんでいる腹に目を向けた
「妾に聞かなければ合格出来たはずでありんしたのに、馬鹿な人間でありんしたね」
妖狐にとっては僥倖、しかし本田にとっては不幸以外の何物でもない
そんな本田の不幸を妖狐は嘲笑し、視線を膨らんだ腹から机へと変える
机の上には、あの赤い紙と十円玉が置かれていた
それを見つめる妖狐の顔には残念そうな表情が浮かべてあった
「まだ足りないみたいでありんすね…もっと人間を喰らわねば」
そう口にし、窓の外を見つめる
陽は沈み、辺り一面暗くなり始めていた
その光景を見せる窓を妖力を駆使して開ける
涼しい夜風がカーテンを揺らし、妖狐の体毛を靡かせた
妖狐は風の愛撫でを目を閉じて気持ち良さそうに浴びると、ニヤリと笑いだす
「次はどんな人間か楽しみじゃ…♪」
そう言うと妖狐は赤い紙に吸い込まれるように姿を消した
そして赤い紙は窓から飛び出し、風に運ばれながら次の獲物を探しに行った
音が消えた暗い部屋の中
そこには唾液に包まれた制服だったものと、机の上には十円玉一枚が置かれていた
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