ある水曜日の三時限目、授業は体育・・・
この日の授業では、クラス合同でのサッカー試合があり、僕は今現在、それに参加している。
ワイワイ・・・ガヤガヤ・・・
僕は昔、サッカー部に入っていた経験がある。
とはいうものの、それは9年も前の話・・・小学1年の頃にやっていたテクニックなど、ほぼ無いに等しい。
そもそも僕は球技が嫌いだ。
球技だけではない。スポーツ全般・・・水泳を除くほぼ全てのスポーツが大嫌いだ。
ーーーなんだって怪我を負うリスクを背負い、わざわざ体を動かして疲れなくちゃいけないんだ。
そう考えているために、当然この試合にもやる気は出ず・・・
とりあえず、敵の進路を塞ごうと思いゴール前でつっ立っている。
そうして人が来るのを待ちながら、疲れきった目をし、
目の前で繰り広げられる試合をまるで観客であるかのように眺めている。
これが僕の現状だ。
「あっちへいったぞー!」
目は試合を向いている。
が、つまらないサッカー試合の事など興味を持つはずもなく、
頭の中で僕は別の事を考えていた。
念頭にあったのは・・・ヴェリタの事。
凡人のはずの僕に訪れた非日常の存在、フェリア。
ある意味望んでいた存在とは言え、僕は何かしらの行動を起こし、彼女を呼び寄せてはいない。
やって来たのは向こうから。それも一方的に。そう・・・正に棚からぼた餅だったはず。
だが、彼女が来た理由は僕がヴェリタに狙われているから。そして僕を喰われ好きにするため。
どちらも、僕の存在が知れているから起きたこと。ならば、僕が何かしらの原因を作ってしまったはず。
テロ組織に狙われる原因を・・・
この矛盾が、僕の中で大きな謎となっていた。
考えようがない疑問・・・更に、思考を巡らすほど邪魔してくる脳内再生の映画・・・
それを破ったのは、足に何かがぶつかった感覚だった。
「冢(づか)!ボールを!!」
叫ぶクラスメートの声。
はっと足元を見れば、そこにはボールがある。そして周りにはゼッケンを着た敵選手が・・・
急いで味方にボールを渡そうと、周囲を見回す。
だが・・・味方は、全員が離れた位置に居た。逆に敵選手はすぐ近くまで来ている。
厄介な事に、敵は味方までの道筋から迫っており、パスはとても出来そうにない。
「壱冢(いづか)!ゴールへ走れっ!!」
その声を聞き、よく見れば・・・確かに、敵のゴールはキーパーが一人のみ・・・これは最大のチャンスだ。
だが周囲には敵が居る。下手な僕は、ボールの操作を何回か誤った事があるが・・・
この重要な局面で、ミスは許されない。果たして上手くいくかどうか・・・
・・・考えても仕方がない。思考で世界は変えられない。
やるしか無い!
そう考え、僕は走り始めた。
「っ!・・・」
ドリブルを始めた僕の前に敵選手が立ちはだかる。立ち往生していると、後ろから他の敵選手が・・・
下手くそな僕は、目の前で邪魔をする選手を突破出来そうにない。
それを知っているせいか、目の前の選手はニヤニヤしながら僕を見ている。
悔しいが、もうどうにも出来ない・・・
その時だった。僕の中で何かが・・・何かの感覚が轟いたのは。
「「えっ・・・!?」」
一瞬、何が起こったのか分からず、僕と敵選手が同時に呟く。
気がつけば、僕は敵選手の背後へとまわっていた。ボールも足元にある。
そのまま、自分でも信じられない程の速さでドリブルを続けていく。視界の隅で、敵選手が必死に追いかけてくるのが見える。
前にも何人か立ちはだかった。だが・・・まるでイナズマイレブンの選手であるかのように、
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