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ザッ・・・ザッ・・・

視界も遮られる程の吹雪の中、雪を踏みしめる足音が響く。
彼は今、自分の目標を終え、この山を降りようとしていた。

「・・・」

登る時、空は快晴で、雲の流れからして夜まで天候は良好・・・のはずだった。
だが生憎その予測は外れ、山頂から降り始めた直後、急に吹雪き始めた。
万が一に備え装備を持ってきてはいるものの、このまま吹雪の中を歩き続ければ倒れてしまい、凍え死ぬ。

・・・それは、彼自身も分かっていた。だが、この山の中、何処でしのげば良いのだろう?
よくあるような洞窟などは地形的に出来にくく、またこの吹雪だ。見つかるはずがない。
かといって、立ち止まってしまえば寒さで寿命を縮めるのみ・・・
彼に選択の余地は無く、ただ歩き続けていた。

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かれこれ1時間、彼は吹雪の中を歩き続けていた。
確かに出来にくいとはいえ、洞窟は、全くないわけではない。彼は、それに賭けていた。
・・・だが、そろそろ限界かも知れない。彼は感じていた。冷えによる強い眠気を・・・
体の深部の温度が下がると、人は眠気を感じる。彼は今、それに呑まれようとしていた。
ここで眠れば、待っているのは当然・・・死。
理性が眠気を叱咤し、必死に耐える・・・だが、とうとう限界まできてしまった。

「っ!・・・」

足がふらつき、倒れてしまう。立ち上がろうにも、体の自由がきかない。
しばらく動こうともがいた後・・・何故か、彼は厚く来ていた防寒服を脱ぎ始めた。

雪山で遭難した際、どういうわけか防寒服を脱ぎ捨てた状態で死体が発見されることが多い。
その状態で助かった人が居ないため、原因は分からない。
だが恐らく、周囲が暖かくなるという幻覚を見たのだろう。

彼も今、同じ状態だった。体温が下がりすぎた影響で冷静な判断は出来ず、ただ、服を脱ぎ捨てていく。
とうとう下着に手をかけた瞬間、彼は・・・意識を失った。
12/12/19 10:26更新 / 想西
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まろやか投稿小説 Ver1.53c