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連載小説
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1
くじは終わった。
昼下がりの森の中。
ドワーフは、ひきつった表情で自分の手の中にあるものを見つめている。
手には端が赤く塗られた細いこよりが握られている。
周りにはクラッズ、ヒューマン、バハムーンの三人がいる。
みんな手の中にはドワーフと同じようなこよりを握っているが、どれも白い。
白いこよりをにぎりしめながら、無言でドワーフを見つめている。

「どうやら、決まったようだな」

深いバスの声に、ドワーフははっと顔をあげた。
竜が、腹ばいになってもなお見上げるほど大きな竜が、ドワーフを舐めるような目つきで見ている。
猛禽を思わせる黄色い瞳に見られるだけで、体から力が抜ける。立っている気もしなくなる。

竜が赤い体を起こす。
立ち上がり、重い足音を響かせながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「できれば毛深い小僧などより、そこのクラッズの娘などがよかったのだが……」

ドワーフは、竜の言葉につられ、クラッズの方に目をやった。
竜の言葉に、クラッズはひっと息を呑む。
大きな目をいっぱいに広げ、竜を見つめている。
小さな体でふるえながら、泣き出しそうな様子で涙を浮かべている。
バハムーンがかばうように前に出、クラッズを竜の視線から隠す。

「ま、この際贅沢は言うまい」

足音がとまって、腹の底が震えるような感覚も消えた。
ドワーフは、再びおどおどと竜を見上げる。
巨大な前足、クリーム色の腹、首、そして人間など一飲みにできそうな、角の生えた赤い頭。
逆光のせいで、その表情を目で見ることはできない。
しかし、竜が今どんな表情で自分を見下ろしているかなど、この目で見るまでもなかった。

「覚悟は良いな、小僧?」

竜は、笑っているにちがいない。
11/11/21 05:32更新 / ベンゼン
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