四
ついに輝は胃袋へたどり着いた。
食道の物よりも柔らかい肉と、おぞましい腐臭が獲物を歓迎する。
床にはどろどろとした、濃い黄色の液体が薄っすらと溜まっていて、輝の体を汚す。
ぬちゃ・・・くちゃ、くちゃ・・・・・
緩慢な蠕動が始まり、食べ物の体をほぐしだす・・・。
「ふん、思い知ったか 人間風情が」
吐き捨てるように、クルスは言った。
クルスは憎き恋敵を消した満足感に浸り、ニヤニヤと笑っていた。
「有人は渡さない・・・有人は絶対に渡さない・・・・」
当然、中の輝にはその言葉は届いていない。
消化液はどんどんと溜まっていき、輝の体を浸してゆく。
「僕は・・・・お前なんかに屈しない・・・・・お前みたいな怪物に・・・鬼道監督は渡さな・・・・・」
ぐにゅ、ぐにゅっ
胃壁は輝の言葉を遮るように蠢き、胃液をすり込んでゆく。
服を食い破られた輝は、素肌に直接消化液を塗られ、すぐに体がふやけてしまう。
「んん・・・ふぅ、ふ、ん、んん・・・・くぅ・・・・」
じゅぷ・・じゅぷ、ぬちゃ・・・くちゃ、くちゃ、ぬちゅる・・・・・・・
じゅ・・・じゅぶ・・・じゅぶ・・・・ぐちゅっ、じゅるぅ・・・・・
輝の体は音を立てて溶け出し、ゆっくりと崩れだす。
むずむずとした気持ちよさに襲われる。体が溶かされているのに、なんだか心地よい。
「なん・・・で・・・・きもち・・・・ぃ・・・・」
指の本数が曖昧になってゆく。耳に聞こえてくる音が濁ってくる。
感覚が痺れてくる。体が流れてゆく。視界がにじんで来る。
輝の体はどんどんととろけ、液状になってゆく。
胃液は黄色と肌色が混ざり合った色に染まる。
ぐにゅぅ・・・とろ・・・・・ぬちゅり・・ぬちゅる・・・・
ぐっちゃ・・・ぐっちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ・・・・
ぬぷ・・ぬぷり・・・・ぬちゅっ、ぬちゃ・・・・
どろ・・・・ぬちゅ・・とろぉ・・・・・・
胃壁は輝の体をぐちゅぐちゅと擦り、すり崩していく。
溶けて柔らかくなった肉は、突かれる餅のように粘り、胃壁にへばり付いて糸を引く。
にちゃっ、にちゃ・・とろ・・・とぷっ・・・
ちゅぷ・・ぬちゅ・・・ちゅる、とろぉ・・・・
どろっ・・・とぷん・・・・くちゅ・・・・
「んん・・・はっ・・はぁ・・・あ・・・・ぁ・・・・あぁ・・・・・♪」
輝が飲み込まれて2時間ほどはたっただろうか。
輝の体は、肌色と蒼が混じった液状になった。
たぷたぷと胃壁の底で揺られ、そして腸へとじわじわと流れてゆく。
これからゆっくりと吸収されてゆくだろう。
クルスは、小さくなった腹を確認すると、人の姿へ戻っていった。
「所詮人間なんてこんなもんだよね・・・。脆くて弱い・・・
有人を守れるのは、私だけ・・・。」
12/02/28 23:58更新 / クルス