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連載小説
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6
「……あの、ちょっと……」

森の小道を歩いていると、クラッズがつぶやくような声で、竜に声をかける。
声をかけられた竜は、最初は気付かなかったが、二度、三度とクラッズが呼びかけると、首だけで振り返り、クラッズを見た。

「なんだ?」

最初クラッズは竜の視線にひるんだが、やがて意を決したように顔をあげ、尋ねた。

「彼はどうなったんでしょうか。もう、その…」

最後の方は消え入りそうになった。死んだのか、とはさすがに訊けなかった。
立ち止まった竜は、しばらく思案顔で見返した。

「お前は消化、というものを知らんのか?」
「しょうか?……なんです、それ」

クラッズはきょとんとした。竜は何も言わない。言わずに、じっとしばらくクラッズを見下ろしていたが、やがてその表情に奇妙な笑みが広がった。
クラッズが重ねて尋ねたがやはり笑っているだけだった。

「だから、彼はいったいどうなったんです?」
「……ときにお前はスライムに敗れたことはあるかね?」

ようやく口を開いたが、出てきたのはまるでトンチンカンな返事だ。
首をかしげ、クラッズが首を振ると、竜は

「そうか、ならそれでよい」

それだけ言ってまた歩き出した。
もう一度尋ねようか、とも思ったが、なんとなく、もう答えてくれなさそうな気がした。
クラッズはうつむいて、また黙々と竜のあとを追った。


11/11/21 05:34更新 / ベンゼン
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