4
服を脱ぎ終わり、ドワーフは暗い面持ちで地面を見つめている。
地面にはさっき舐められたときこぼれた唾液が垂れ、小さな水たまりを作っている。
毛皮に残っているよだれのせいで、全身がべたべたしている。
獣臭い。
「さて、と」
髪に竜の吐息がかかり、ドワーフはびくりと身をすくませる。
おずおずと見上げると、手が届きそうなくらいの近さに、竜の鼻孔があった。
うつろに見上げていると、そのばかでかい鼻づらがドワーフから離れ、代わりに目の前の地面にぴったりと置かれた。
「入れ」
そう言って、上あごがドワーフの肩に届くくらいにまで、竜は口を開ける。
ドワーフはやりきれない表情で、竜の口内を見つめていた。
涎が糸をひく白い牙。分厚い赤い舌。
鼻先に腐った肉の匂いが立ち込める。
さっき舐められた時の感触をいやでも思い出す。
いっそ死んだ方がましだ。
そう思ったが、仲間のことを考えると他に仕方はなかった。
竜の舌の上に足を乗せる。ぶよぶよした感触に鳥肌が立った。
急に足もとがぐらつき、ドワーフはべちゃりと音をたてて、ざらつく舌の上に頭から倒れこんだ。
鼻をつく涎の匂いと舌の熱さにうめく。
あたり一面赤黒い。舐められた時嗅いだ腐ったにおいでむんむんしている。
ふいごのような音がする。震えながら顔をあげると、すぐ前に竜の喉が見える。
音に合わせてぬらぬらと柔らかく収縮するそれは、うさぎ穴のようにも見えた。
暗くて底が見えないが、においの源はどうやらそこらしい。
音がするたびに匂いが吹きかかるので、それがわかった。
そして、俺はこれからそこに押し込まれるのだ。
背中を伝う竜の涎に、毛が逆立つ。
鼻の奥がツンとした。涙が抑えられなかった。
あたりが急に暗くなり、背に固い感触を感じた。と、思う間もなく顔がやわらかい肉に埋まる。
唾液が体にからむ。熱い。
竜が口を閉じ、舌でドワーフを持ち上げたらしい。
ドワーフは眼をつぶった。歯を食いしばり、体を塗りつぶすような熱気と臭気に耐えながら、そのときを待った。
地面にはさっき舐められたときこぼれた唾液が垂れ、小さな水たまりを作っている。
毛皮に残っているよだれのせいで、全身がべたべたしている。
獣臭い。
「さて、と」
髪に竜の吐息がかかり、ドワーフはびくりと身をすくませる。
おずおずと見上げると、手が届きそうなくらいの近さに、竜の鼻孔があった。
うつろに見上げていると、そのばかでかい鼻づらがドワーフから離れ、代わりに目の前の地面にぴったりと置かれた。
「入れ」
そう言って、上あごがドワーフの肩に届くくらいにまで、竜は口を開ける。
ドワーフはやりきれない表情で、竜の口内を見つめていた。
涎が糸をひく白い牙。分厚い赤い舌。
鼻先に腐った肉の匂いが立ち込める。
さっき舐められた時の感触をいやでも思い出す。
いっそ死んだ方がましだ。
そう思ったが、仲間のことを考えると他に仕方はなかった。
竜の舌の上に足を乗せる。ぶよぶよした感触に鳥肌が立った。
急に足もとがぐらつき、ドワーフはべちゃりと音をたてて、ざらつく舌の上に頭から倒れこんだ。
鼻をつく涎の匂いと舌の熱さにうめく。
あたり一面赤黒い。舐められた時嗅いだ腐ったにおいでむんむんしている。
ふいごのような音がする。震えながら顔をあげると、すぐ前に竜の喉が見える。
音に合わせてぬらぬらと柔らかく収縮するそれは、うさぎ穴のようにも見えた。
暗くて底が見えないが、においの源はどうやらそこらしい。
音がするたびに匂いが吹きかかるので、それがわかった。
そして、俺はこれからそこに押し込まれるのだ。
背中を伝う竜の涎に、毛が逆立つ。
鼻の奥がツンとした。涙が抑えられなかった。
あたりが急に暗くなり、背に固い感触を感じた。と、思う間もなく顔がやわらかい肉に埋まる。
唾液が体にからむ。熱い。
竜が口を閉じ、舌でドワーフを持ち上げたらしい。
ドワーフは眼をつぶった。歯を食いしばり、体を塗りつぶすような熱気と臭気に耐えながら、そのときを待った。
11/11/21 05:33更新 / ベンゼン