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連載小説
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愛は永遠に【下】【大】【小】
 ブプッ! ブリッ! ミチミチミチッ……!
「んんっ……! 最高の香りだ……!」
 そして翌日。灼熱の太陽の光を浴び続けるキャンプ場の仮設トイレの中。ぎっしりと脂肪が詰まった巨体からポタポタと汗を滴らせつつ、山のように膨らんだ腹をプルプルと震わせながら、まさに朝の儀式を執り行おうとしていたのは――森の主のベロベルトだった。百キロ超の肉を大便にしたのだから当然の話。中の空気は一瞬で茶色く染め上げられる。しかし、
「でも……個室で座ってウンチできる快適さには代えがたいなぁ! いやぁ、トイレがあって本当によかった!」
 そんなものは些細な欠点に過ぎなかった。最高に心地よく花を摘める喜びを噛み締めるベロベルト。便座に深く腰掛け直した彼は、両手を胸の前で構え、
「さぁ、気合い入れて踏ん張るぞぉ!」
 声高らかに宣言すると同時に大きく息を吸って、そして止め、
「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ……!」
 グッと腹の底に力を込める。
 ムチッ、ムチチッ! ……ブニュゥゥゥゥッッ!
 硬さ、滑らかさともに絶妙だった。全開になった肛門から絞り出され、強烈な体臭を放つ茶褐色の大蛇に生まれ変わった獲物たちは、便器の中で蜷局を巻きながら何段にも積み重なっていく。カイリューでも不自由なく用を足せるよう設計された便器なので溢れさせる心配はなし。終始リラックスした気分で宿便まで出し尽くし――
 ブウゥゥゥゥッッ!
 最後に思いきり放屁したら出来上がり。ドロッとした腸液のソースがたっぷりトッピングされたチョコレートソフトクリームの完成だった。だらしなく舌を垂らした彼の口から大量の涎が溢れ出す。
「むっはぁぁぁぁぁっ……! 気持ちよかったぁ……!」
 天国に昇るような快感に背筋をゾクゾクと、茶色く汚れた肛門をヒクヒクと震わせた彼は、うっとりとした表情で呟くのだった。しかし、そんな余韻に浸る間もなく、
「……うぉっ! きたきたっ! 漏れちゃう、漏れちゃう!」
 押し寄せてきたのは猛烈な尿意だった。股の裂け目に舌を伸ばした彼は、その中から立派な雄の象徴を引っ張り出す。
「へぇ! このトイレ面白いなぁ! ウンチとオシッコを分けて集める仕組みになってる!」
 下を向いて気が付いたのは、いま彼が座っている便器が変わった形をしているということだった。後方に大便をするための穴が、前方に小便をするための穴が設けられた、特殊な構造をした便器だったのである。が、それについて深く考えている暇はなかった。失禁する寸前で前方の穴に狙いを定め――
「みずでっぽう、じゃなかった! ハイドロポンプ!」
 ジョボッ、ジョボボッ! ……ジョォォォォォォッ!
 滝のような勢いで放尿し始める。ひり出した大便の太さと長さに見合うだけの凄まじい量だった。排泄された泡立つ液体は小便器の底に集められ、グルグルと黄色い渦を巻きつつ、ゴボゴボと音を立てながら穴に呑み込まれていく。放尿を続けること数十秒あまり。最後の一滴まで出し尽くした彼は、晴れ晴れとした面持ちで、元あった場所に雄の象徴を仕舞う。
「ふぅぅ……! スッキリ! さぁて、紙、紙と!」
 これにて儀式は無事に終了。一つ深呼吸した彼は、その後始末をするべくトイレットペーパーのホルダーに手を伸ばす。途端に気が付いたのは、
「おや、何か書かれてある。えーっと、なになに……?」
 ホルダーの上の壁に貼られてある注意書きの存在だった。手を止めた彼は声に出して読み始める。
「当キャンプ場では環境に配慮したエコトイレを採用しております。このトイレで回収された大便は堆肥に、小便は液肥に加工され、当キャンプ場併設の農園で使用されます。環境を守る取り組みに、ご理解とご協力をお願いします……だって! なるほどぉ! だから便器の前後で穴が分かれているのかぁ!」
 謎が解けた瞬間だった。彼は大いに納得する。
「素敵な取り組みじゃないか。喜んで協力させてもらうよ。でも……!」
 トイレットペーパーをホルダーから巻き取るベロベルト。便器に視線を落とした彼の顔に皮肉な笑みが浮かぶ。
「一番の環境を守る取り組みは、みんなの森を勝手に壊してキャンプ場にするような子をウンチとオシッコにして自然に還すことだけどね! あははっ!」
 尻穴の汚れをトイレットペーパーで拭いながら、彼は嫌味たっぷりに言うのだった。
 使い終わった紙をクシャクシャと丸めて便器横のゴミ箱に捨て、二本の足で立ち上がって振り返ったら待望の鑑賞タイムだった。便器いっぱいの作品と対面を果たした彼は歓声を上げずにはいられない。
「うっひゃあ、こりゃ凄い! 長さも太さも完璧! 形も綺麗な螺旋状で美しさも満点! ここ最近で一番の傑作だ!」
 違法伐採者の一家を食べ尽くした翌朝に産み落とした作品に次ぐ完成度だった。間近で観察するべく腰を下ろそうとした次の瞬間――
 コンコンッ。
 乾いた音が個室に響く。出てくるのが遅いのを心配したベロニカがドアをノックしたのだった。夫のベロベルトは慌てて振り返る。
「あぁ! ごめん、ごめん! いま終わったとこ! すぐ行くよ!」
 ドアに向かって叫んだ彼は、天井からぶら下がった紐を手に取る。
「というワケで……もう少し目に焼き付けたかったけど、ここでお別れだね。それじゃあ! バイバーイ!」
 作品に向かって笑顔で手を振りながら紐を引っ張るベロベルト。それと同時に大便器の底が抜け、
 ボットン!
 大蛇になった獲物たちは真っ暗な便槽の底へと消えていったのだった。
「うへぇ、もう汗でベトベトのベトベトンだ! 早いとこ出ようっと!」
 ガチャッ! ……ギィィィィィッッ! バタンッ!
 真夏の仮設トイレはサウナのよう。今更ながら思い知らされた彼は個室の鍵を開け、逃げるように退出するのだった。
「やぁ、待たせたね! それじゃ、帰ろうか!」
 ドアの前で佇んでいたベロニカに手を挙げてみせるベロベルト。不安そうだった彼女の顔に笑みが戻る。
「……えっ、なになに? 話があるから耳を貸してって? いいよ?」
 そのままキャンプ場を後にしようとした彼だったが、まだ何かやり残したことでもあるらしい。言われたとおりにするベロベルト。直後に彼女の口から飛び出したのは――
 ボンッ!
 予想の斜め上の言葉だった。一瞬で赤面した彼は目をぱちくりさせる。
「そっ、そりゃ構わないけど……帰ってシャワーを浴びてからにしない? 見てのとおり汗びっしょりだし、おまけにウンチしたばかりだから臭いよ? ……えっ? 今ここで綺麗になる方法があるって? どんな方法だい?」
 頭の上に疑問符を浮かべるベロベルト。その答えは――彼の視界が桃色に染まると同時に明らかになる。
 ベチョッ! ……ヌチャァァァァァッ!
「んんんんんんっ!?」
 ベロニカに思いきり顔を舐められたのだった。くぐもった悲鳴を上げるベロベルト。長い舌で全身舐め回して体を綺麗にする――これが彼女の言葉の真意だった。クスクスと笑う声を耳にした彼は、対抗心を燃やさずにはいられない。
「あっ! やったねぇ!? 今度はオイラの番だ! ベロォォォォォン!」
 ベチャッ! ……ネバァァァァァァッ!
 お返しとばかりにベロニカの顔を舐めるベロベルト。嬉しそうな悲鳴が彼女の口から上がる。
 あとは同じことの繰り返しだった。舐めて、舐められ、また舐めて――その果てに互いの全身を舐め尽くす二匹。ベロベルトはグツグツと煮えたぎるマグマを噴火させてしまわぬよう、ベロニカは満々と水を湛えたダムを決壊させてしまわぬよう、肛門にギュッと力を込めて耐えるも――
「……うぅっ! もっ、もう我慢できないっ! いくよっ、ベロニカ!」
 やがて限界が訪れる。その言葉を合図に抱き合う二匹。長いベロとベロを絡め合い、柔らかな唇と唇を重ね合った二匹は、全身がトロトロに溶けるような幸福感に包まれるのだった。
 その後、ベロニカが大きなバスケットにいっぱいの卵を産んだのは、また別のお話。二匹の愛の物語はいつまでも続くのでした。
 おしまい。
24/09/28 11:17更新 / こまいぬ
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