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連載小説
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本文
「ん…ちゅ…じゅる……」

夜の森に囁く音は、空風が木の葉を揺らす乾いた音とは異質のものだった。パチパチと焚き火の弾ける音に、橙色の炎がひとつ。その傍らにもうひとつの炎。それをゆっくりと辿っていくと、一人の女性とポケモンの姿があった。

「ふぁ、リザードンの舌、おっき…ん…ぷは……」

女性は巨体の上に跨るような形で座っており、その太い首に腕を巻きつけていた。明らかにトレーナーとポケモンのそれとは異質な雰囲気に、冬の空気も熱を帯びる。女性はほとんど裸同然だった。綺麗に折りたたまれた洋服が、その行為が無理矢理でないことを語っていた。

ポケモンとのキス。軽いスキンシップ程度のものならば、経験がある者もあったかもしれない。しかし、目の前で起こっているその光景はそんな易しいものではなかった。巨大なリザードンと女性のキス。顔の幅ほどもありそうな舌に顔をうずめ、唾液を貪る。

「んんっ……じゅる……よだれ…美味しい…」

彼女は唾液塗れになった顔を持ち上げる。まるで平泳ぎの息継ぎをするかのように、何度も何度も舌の表面に顔を押し付ける。巨獣の舌は枕のように彼女の身体を柔らかく受け止め、その様はベッドではしゃぐ子供のようにすら見えた。リザードンもそれに答えるように彼女の頭に舌を巻きつける。彼女はそのまま頭を左右に動かすと、舌のとぐろの中で鼻先を舌に擦り付ける。粘り気のある音を立てながら、その行為は数分にも及んだ。

「にゃ…リザードンの舌…ベチョってして…きもちいいよぉ……」

舌の中から顔を引き抜くと、手のひらで太い首筋を愛しげに撫でる。すべすべとした皮の感触が心地よい。絹のような感触にうっとりしていると、リザードンがだらりと垂らした舌で彼女の上半身をべろりと舐めあげる。そのまま数秒間見つめ合う彼女達。先に堰を切ったのは、彼女の心だった。

「もう、我慢できないよ…!!」

言うが早いか、彼女はポケモンの口の中に顔を突っ込んだ。粘つく唾液を押しのけながら、彼女の顔は舌の根元で優しく受け止められる。熱い息遣いと、舌が唾液をクチュクチュと掻き回す音に包まれて、彼女の心は震えるように彼を求めた。滑らかな舌の表面に顔を何度もこすりつける。舌の汚れが顔中について口臭の何倍も臭い。ネバネバとした口の奥の粘液が彼女の髪に、顔に、鼻に口に絡み付いて。昂ぶった心は、むしろその臭いを、彼の臭いを、さらに求めるように歓迎した。貪るように口の奥へ這い進むと、彼女の上半身が全てリザードンの口の中に納まってしまう。

「んはぁっ!いい、いいよぉ、リザードン……もっとぉ…舐め…て…」

ぶにぶにと顔に押し付けられるだけだった舌が、攻めに転じた。狭い口内で彼女の首筋を、鎖骨を、なぞるように舐めまわす。脇をくすぐるように弄ると、舌は形の整った乳房に、ゆっくりと巻きつき、その頂上に向かってしぼり上げるように圧迫する。ねっとりとした滑らかな舌で、優しく、力強く、愛撫は続いた。口に含まれた彼女の身体はビクビクと跳ねるように動く。その姿はまるで鵜に呑まれる川魚のよう。

「んぅ…はぁ、はぁ……もっとぉ…リザードンの……ネバってしたの…ちょうだい……」

まみれたかった。彼のものに。全身を全て彼のものにしたかった。口の奥、喉の入り口にほとんど顔を突っ込んだ状態の彼女は、ぐりぐりと顔を粘膜に押し付けると、身体をぐりぐりとよじりながら懇願する。数秒の後、巨獣の喉がぷくりと膨れたかと思うと、大量の粘液が口の中の彼女に向かって吐き出された。

「ひゃぁぁぅぅ!!ん…にゃぁぁ…ネバネバって…まみれてぇぇっ!!」

口から溢れるほどの粘液の勢いで、そこからずるりと垂れ落ちる彼女の身体。糸をたっぷりと引きながら、リザードンの腹の上にしがみつくと、その柔らかい腹の上で、粘ついた、臭い、彼のものに全身がまみれた感触、征服された快感を、たっぷりと感じていた。ビクビクと振動する彼女の身体を、リザードンの腕が優しく腹に押し付けると、全てが彼のものになった気がして、幸せな気持ちでいっぱいだった。身体をもぞもぞと動かすと、スライムのようにまとわりつく彼の粘液が、彼女の身体を抱きしめるかのような拘束感を与え、いっそう、包まれる事の幸福感に目を閉じる。橙色の竜も、それに呼応するように安らかな感情を覚えた。そんな静寂の中、腹に押し付けられる彼女の耳に、彼の腹がぐぅ、と鳴る音が聞こえた。いけない想像に彼女の身体がびくんと跳ねる。止まらなかった。

「り、リザードン…?わ、私を……食べて……?」

彼女はとろりと溶けた視線で彼の目を、顎を、大きく開かれた口の中を見つめると、粘液を纏わせた身体をゆっくりと、彼の下顎の方へ持っていく。だらりとだらしなく垂れたリザードンの舌を抱きしめるようにすると、舌の上に上半身を当て、そのまま滑るように口の奥へ身体を押し込む。粘つく舌の上をぬめる身体に、頭がじんわりと痺れていくのを我慢しながら、頭を喉の中へ押し込んでいく。彼の中へ、これから全身を取り込まれるという想像に、背徳感と羨望を同時に感じると、頭をすっぽりと包み込んだ熱い肉の壁に吐息が漏れる。リザードンが一瞬えずき、粘ついた喉の肉は彼女の頭を強く締め付ける。顔中に張り付いた粘膜が、口にまでめり込んでくる。呼吸もしづらい彼の中。体内の、独特の臭いのする空気。におい。粘ついた粘液の味。舌に餅のようにからみつくどろどろの液体。頭しか入れていないのに、もう全身が彼の中に入ってしまったかのように、狂った快感を訴えている。

(く、苦し…ああん…!!気持ちいい!もっと、私を飲み込んで!!私をあなたの餌にして!)

宙ぶらりになっている足を快感にばたつかせると、肩を芋虫のようにうねらせ、もっと奥へと、彼の中へと入ろうとする。リザードンもそれを受け入れ、平たい舌を彼女の身体に蛇のように絡みつかせると、その儀式が無事に済むように、ぬらぬらと唾液をぬりつけていく。そのまま頭を持ち上げると、彼女の上半身は地面に垂直になり、いくぶんかその行為を楽にした。重力に任せて肩が狭い食道に押し込まれると、口からはみ出ていた彼女の下半身が、徐々にリザードンの口の中へと入っていく。彼の柔らかい喉はぷくりと膨らんで、頭がその中に収まっているのがよく分かった。足が膝まで口の中に入ると、彼女の身体は一度大きく跳ねた。その後の動きは本当に素早く、舌で下半身をぐっと押し込むと、リザードンは一度の動作で彼女の全身を飲み込んだ。ごくり。

(んんっ…はぁ!!熱い!ぬめぬめしてぇぇっ!!!ああんん!!)

体中を熱い粘膜に包まれて。つま先が喉の中に収まった頃には、彼女の頭は胃袋の入り口へと迫っていた。唾液よりもはるかに濃厚な、先ほど吐きかけられたほどの粘液を体中に絡ませながら、徐々にその肉の洞窟を進んでいく。それはまるで男女の行為のようで、全身が快感を受ける器官になってしまったようで、喉から叫び声が漏れそうになったが、狭く息苦しい中ではそれも叶わず、心の中で爆発する嬌声。頭が胃袋の中へと到達する。

(んぅぅぅぅー!!!リザードンの、おなか、の、中ぁぁっ!入っちゃった…!)

愛しい彼の中に身体を埋める喜び。普通なら心地よいとはいえない臭気も、彼の臭いだと思うと、これ以上なくよい香りに思えた。ドロドロの粘膜が彼女の頭を受け止めると、苦酸っぱい液体が口の中に入る。彼の胃液の味。全身が痺れたような狂喜に打ち震え、貪るように顔を胃壁にうずめる。リザードンの胃袋は彼女の頭を優しく受け止め、その内部へと彼女の身体を取り込むかのように柔軟に伸びる。頭を柔らかく受け止めた胃袋は、肩、胸、臍と、濃密な粘液をまぶしながら彼女の身体のすべてを受け止めていく。だんだんと身体が胃の中に収まっていくにつれ、狭い胃袋の中で身動きがとりづらくなってくる。きっと彼女ひとりが丸くなってようやく入るぐらいだろう。腰までが収まった。胃液と胃粘液の溜まった袋の中で、さかさまになりながら、背中に、腹に、身体に張り付く胃壁の感触と、愛するポケモンに身体ごと取り込まれていっているという事実に身悶えが止まらない。身体がバタバタと暴れるたびに、ぐよぐよと柔らかくそれを受け止める胃袋は、彼の愛情の顕現のように感じられて、それが心の底から愛しかった。粘液を絡みつかせながら、リザードンの体温と、臭いと、粘膜に包み込まれる、幸せの絶頂。それはつま先が胃袋の入り口を通過した時にピークを迎えた。

(ひ、ひゃぅん!!ん…くぅ……リザー……ドン……私を…)

身体全体が彼の腹の中に収まった、その事実を感じ取った瞬間、彼女の心は爆発したように白くなり、炎のような快感が身体の中を走っていった。心も身体も、パートナーと一緒になる瞬間。熱く、ネバネバした胃袋の中で、縮こまるように丸くなると、全身を優しく、リザードンの胃袋が包み込む。そのまま消化されていきたい、そんな願いすら持ちながら、彼女の意識は眠るように、途絶えていく。

_______________

「おはよう、リザードン」

彼女は身体に染み付いたにおいをあえて取らずに、そのままで昨晩畳んだ衣服を着る。今までもずっとそうしてきたように、平然と次の町を目指していく。そのせいか。行く先々で「リザードン臭い」と言われるのだが、その言葉はむしろ彼女の心を急速に乾かし、その晩の行為をまた熱いものへとしていくのだった。
12/03/14 22:38更新 / くじら

■作者メッセージ
トレーナーとポケモン、食べられちゃうのはどっちの方が需要あるんでしょう。ポケモンかな?
サーナイトかイーブイあたりでバージョン違いも書いておこうかと思いますが、どっちがお好みでしょうか?
ご意見など頂ければ幸いです。

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