4
次の日、せっかく掴んだ情報を無下にするわけにもいかず、俺はしぶしぶと旅の準備に取りかかった。
「木の実、地図、飲み水。ハァ……、頭いたい」
とりあえず頭に思い浮かぶだけの物を準備し、仲間たちに軽く挨拶をして群れを離れた。
『見つけたら直ぐに俺の元へ持ってきてくれ』
「……そんなに大事なものなのかねぇ」
群れを離れるとき、長に言われたことを思い出しながらそう呟く。
隣ではそんなことなど、どうでもいいというように川の水がサラサラと流れていた。
そのせいか、吹き付ける風はやけに冷たい。
その風に少し身震いした。
ピカチュウと約束した集合場所に、少し早く着いてしまった俺は、川を眺めながらあることを考えていた。
「ハブネーク。お待たせ!」
急に声をかけられ、ビクッと反応する。
俺は恥ずかしくて顔が火照った。
仮にも、俺はピカチュウから見て捕食者なのだ。
そんな俺が、獲物に驚かされるとは――なんとも笑える話だ。
「……本当に俺と一緒に行くのか?」
「えっ? 当たり前でしょ?」
可愛らしく首をかしげ、顔を疑問のそれへと変える。
「いや、聞いてみただけだ」
「――? そう……」
「それより、その“宝の地図”ってのにはどこにアイオライトがあるって示してあるんだ?」
その言葉を聞くと、ピカチュウはハッとして担いでいたバックパックから古びて黄ばんだ紙切れを取り出した。
とたんにカビ臭いニオイが鼻に突き刺さる。
俺は思わず顔をしかめた。
「えっと……。ここからそんなに遠くない場所だね。具体的には、山を登らないといけないかな」
――山、この辺りでそんなものは一つしかない。
「ロエフ・マウンテンか、えらい場所だな。案内出来るのか?」
半分冗談で聞くと、ピカチュウは苦笑いをする。
そのあとに「たぶんね」と自信なさげにつなげた。
一気に不安になった俺は、思わず顔がひきつる。
ロエフ・マウンテンはこの地方の丁度真ん中に位置し、東の“キムール王国”と今俺達がいる西の“スクルド”と呼ばれる地方の境界線とされている。
「でも、ちゃんと計画は立ててあるから」
ピカチュウは真っ白な歯をチラ見させながら笑って言った。
「ならいい。何にも計画無しであの山に登るのは、死にに行くようなものだからな」
チロチロと舌を出して、シューと音を鳴らす。
山の天気は変わりやすい。
標高もそれなりにあるその山なら、雪が降るのもおかしくない。
そうなったら、俺にとってとても厳しい道のりになるだろう。
場合によっては命も危ないかもしれない。
そうまでして手に入れなければならないものなのか。
分からない。分からないけれど、長の言う事は絶対だ。
逆らうことは出来ない。
フゥ……と落ち着いたため息を吐き出し、顔を空に向ける。
とても澄んだ青い空だ。
「よしっ! 行くか!」
そう言ってピカチュウの方に顔を向ける。
黄色い電気ネズミは、ニッコリと穏やかに笑ったのだった。
「木の実、地図、飲み水。ハァ……、頭いたい」
とりあえず頭に思い浮かぶだけの物を準備し、仲間たちに軽く挨拶をして群れを離れた。
『見つけたら直ぐに俺の元へ持ってきてくれ』
「……そんなに大事なものなのかねぇ」
群れを離れるとき、長に言われたことを思い出しながらそう呟く。
隣ではそんなことなど、どうでもいいというように川の水がサラサラと流れていた。
そのせいか、吹き付ける風はやけに冷たい。
その風に少し身震いした。
ピカチュウと約束した集合場所に、少し早く着いてしまった俺は、川を眺めながらあることを考えていた。
「ハブネーク。お待たせ!」
急に声をかけられ、ビクッと反応する。
俺は恥ずかしくて顔が火照った。
仮にも、俺はピカチュウから見て捕食者なのだ。
そんな俺が、獲物に驚かされるとは――なんとも笑える話だ。
「……本当に俺と一緒に行くのか?」
「えっ? 当たり前でしょ?」
可愛らしく首をかしげ、顔を疑問のそれへと変える。
「いや、聞いてみただけだ」
「――? そう……」
「それより、その“宝の地図”ってのにはどこにアイオライトがあるって示してあるんだ?」
その言葉を聞くと、ピカチュウはハッとして担いでいたバックパックから古びて黄ばんだ紙切れを取り出した。
とたんにカビ臭いニオイが鼻に突き刺さる。
俺は思わず顔をしかめた。
「えっと……。ここからそんなに遠くない場所だね。具体的には、山を登らないといけないかな」
――山、この辺りでそんなものは一つしかない。
「ロエフ・マウンテンか、えらい場所だな。案内出来るのか?」
半分冗談で聞くと、ピカチュウは苦笑いをする。
そのあとに「たぶんね」と自信なさげにつなげた。
一気に不安になった俺は、思わず顔がひきつる。
ロエフ・マウンテンはこの地方の丁度真ん中に位置し、東の“キムール王国”と今俺達がいる西の“スクルド”と呼ばれる地方の境界線とされている。
「でも、ちゃんと計画は立ててあるから」
ピカチュウは真っ白な歯をチラ見させながら笑って言った。
「ならいい。何にも計画無しであの山に登るのは、死にに行くようなものだからな」
チロチロと舌を出して、シューと音を鳴らす。
山の天気は変わりやすい。
標高もそれなりにあるその山なら、雪が降るのもおかしくない。
そうなったら、俺にとってとても厳しい道のりになるだろう。
場合によっては命も危ないかもしれない。
そうまでして手に入れなければならないものなのか。
分からない。分からないけれど、長の言う事は絶対だ。
逆らうことは出来ない。
フゥ……と落ち着いたため息を吐き出し、顔を空に向ける。
とても澄んだ青い空だ。
「よしっ! 行くか!」
そう言ってピカチュウの方に顔を向ける。
黄色い電気ネズミは、ニッコリと穏やかに笑ったのだった。
12/03/05 07:43更新 / ミカ