5
「リザードン! 何してる!」
突然、威勢のいい怒声が鳴り響いた。
リザードンだけでなく、リオルもビクリと反応してしまった。
「ちっ、見つかってしまったか」
そう言うと、リザードンの拳から力が抜けていく。
やがて彼の拘束から解放されると、リオルはパタリと地面に倒れた。
「ゲホッ! けへっ。……ハァ、ハッ……」
体を震わせながらむせこむリオル。
そんな彼に、誰がが近付いてくるのが床の振動で分かった。
さっきの声の主だろうか
。
「ほら、大丈夫か?」
なんだろう。なんだか懐かしい声だ、そう思ってリオルは顔を上げる。
「に、兄さん!?」
おもわず叫んでしまったリオルはそのまま、またゲホゲホとむせてしまった。
「リザードン。ちょっとやり過ぎだ」
「我輩は手加減というものを知らぬのでな」
キッとリザードンを睨むルカリオ。
対するリザードンは、そんなものなど知らんと顔をそらす。
まるで親と子のような感じである。
「兄さん。ハァ……ルクシオが……僕の友達が」
息切れの最中、必死に言葉を繋ぐリオル。
ルカリオは目を見開き、リザードンを睨み付ける。
「なんだリザードン、またやったのか。いい加減弱いものいじめはやめたらどうだ?」
「俺は弱いやつに興味がないのだが?」
ルカリオの言葉をさらりとかわすリザードン。
「兄さん、こいつと知り合いなの?」
「ん、まぁそうだな」
驚きのあまり、言葉が出てこない。
こんなに恐ろしいようなやつと知り合いなんて。
「じゃあ、ルクシオを助けてよ。知り合いなら話も通じるでしょ!」
ルカリオの腕を掴みながら必死に頼み込むリオル。
しかし、ルカリオはたいして慌てるような素振りを見せなかった。
「落ち着け。残念だが、そいつは無理だ」
「何で!?」
「リオル。俺はそんなことをする為にここに帰ってきたわけじゃない」
リオルをなだめるかのように落ち着いた口調で、ルカリオは続けた。
「お前を迎えに来たんだ」
「――は?」
それは今言うことなのだろうか。
それに、そんなことと言った兄の心境が気になった。
「リオル。俺らと一緒に旅をしよう。もうこんな殺風景な場所を離れるときがきたんだ。さぁ」
再び手を伸ばすルカリオ。
ちょっと前までのリオルなら大好きな兄の頼みなら喜んで受けていただろう。
だが、事情が変わった。
兄は自分の友達が大変なことになっているというのに、何でもないような事を言う。
「……ごめん。もう兄さんの言うことは聞けない」
「……そうか。じゃあ仕方ないな」
フゥと息を吐き出し、頭をかく。
「リザードン、やれ」
刹那、リオルの体が再び拘束される。
「なっ! に、兄さん!?」
「悪いなリオル。こうするしかないんだ」
「なん――」
ベロリと頬を舐められ、体が硬直する。
「いいねぇ、その絶望的な顔。もっと見せてくれよ」
リザードンが牙をちらつかせながら言う。
生暖かい吐息がリオルに吹きかかる。
「う……何で…」
「理由なんてどうでもいいんだ。ただ俺らを知っていると言うことは、後々めんどくさくなるからな。今ここで手を打っておくことが一番、てわけだ」
そこにはもう、あの優しくて頼りがいのある兄はいなかった。
「さよならだ、リオル」
冷たく放たれた言葉。
次の瞬間、リオルは自分がどこにいるのか分からなくなった。
景色が下に流れたかと思うと、今度はその逆が起きた。
冷たい空気が下から吹き付ける。
自分は投げ出された。
そう気付いた時、目の前には真っ赤なリザードンの舌が現れた。
「うわぁああっ――!」
なす術なく、リオルはぽっかりと開かれた地獄の門へと吸い込まれてしまった。
突然、威勢のいい怒声が鳴り響いた。
リザードンだけでなく、リオルもビクリと反応してしまった。
「ちっ、見つかってしまったか」
そう言うと、リザードンの拳から力が抜けていく。
やがて彼の拘束から解放されると、リオルはパタリと地面に倒れた。
「ゲホッ! けへっ。……ハァ、ハッ……」
体を震わせながらむせこむリオル。
そんな彼に、誰がが近付いてくるのが床の振動で分かった。
さっきの声の主だろうか
。
「ほら、大丈夫か?」
なんだろう。なんだか懐かしい声だ、そう思ってリオルは顔を上げる。
「に、兄さん!?」
おもわず叫んでしまったリオルはそのまま、またゲホゲホとむせてしまった。
「リザードン。ちょっとやり過ぎだ」
「我輩は手加減というものを知らぬのでな」
キッとリザードンを睨むルカリオ。
対するリザードンは、そんなものなど知らんと顔をそらす。
まるで親と子のような感じである。
「兄さん。ハァ……ルクシオが……僕の友達が」
息切れの最中、必死に言葉を繋ぐリオル。
ルカリオは目を見開き、リザードンを睨み付ける。
「なんだリザードン、またやったのか。いい加減弱いものいじめはやめたらどうだ?」
「俺は弱いやつに興味がないのだが?」
ルカリオの言葉をさらりとかわすリザードン。
「兄さん、こいつと知り合いなの?」
「ん、まぁそうだな」
驚きのあまり、言葉が出てこない。
こんなに恐ろしいようなやつと知り合いなんて。
「じゃあ、ルクシオを助けてよ。知り合いなら話も通じるでしょ!」
ルカリオの腕を掴みながら必死に頼み込むリオル。
しかし、ルカリオはたいして慌てるような素振りを見せなかった。
「落ち着け。残念だが、そいつは無理だ」
「何で!?」
「リオル。俺はそんなことをする為にここに帰ってきたわけじゃない」
リオルをなだめるかのように落ち着いた口調で、ルカリオは続けた。
「お前を迎えに来たんだ」
「――は?」
それは今言うことなのだろうか。
それに、そんなことと言った兄の心境が気になった。
「リオル。俺らと一緒に旅をしよう。もうこんな殺風景な場所を離れるときがきたんだ。さぁ」
再び手を伸ばすルカリオ。
ちょっと前までのリオルなら大好きな兄の頼みなら喜んで受けていただろう。
だが、事情が変わった。
兄は自分の友達が大変なことになっているというのに、何でもないような事を言う。
「……ごめん。もう兄さんの言うことは聞けない」
「……そうか。じゃあ仕方ないな」
フゥと息を吐き出し、頭をかく。
「リザードン、やれ」
刹那、リオルの体が再び拘束される。
「なっ! に、兄さん!?」
「悪いなリオル。こうするしかないんだ」
「なん――」
ベロリと頬を舐められ、体が硬直する。
「いいねぇ、その絶望的な顔。もっと見せてくれよ」
リザードンが牙をちらつかせながら言う。
生暖かい吐息がリオルに吹きかかる。
「う……何で…」
「理由なんてどうでもいいんだ。ただ俺らを知っていると言うことは、後々めんどくさくなるからな。今ここで手を打っておくことが一番、てわけだ」
そこにはもう、あの優しくて頼りがいのある兄はいなかった。
「さよならだ、リオル」
冷たく放たれた言葉。
次の瞬間、リオルは自分がどこにいるのか分からなくなった。
景色が下に流れたかと思うと、今度はその逆が起きた。
冷たい空気が下から吹き付ける。
自分は投げ出された。
そう気付いた時、目の前には真っ赤なリザードンの舌が現れた。
「うわぁああっ――!」
なす術なく、リオルはぽっかりと開かれた地獄の門へと吸い込まれてしまった。
12/03/21 02:01更新 / ミカ