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連載小説
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第三話
「ただいま」

玄関の扉を開け、誰もいない家に一人呟く

本田の両親は共働きで夜遅くまで家に帰って来ない

一人かったるそうに靴を脱ぎ、自分の部屋へと入った

部屋はベッドと勉強机、パソコンが置かれたいたって普通の部屋である

ドサッと鞄を置き、あの赤い紙を机の上に広げた

教室で皆が言ってた事を思い出しながら、十円玉を鳥居の絵の上に置き、指を置く

一人でやってはいけないと聞いたのも思い出していたが、まだ迷信だと思い込んでる本田は気にしなかった

「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいで下さい。もしおいでになられましたら“はい”の方までお進み下さい」

少しの静寂が訪れる

物音一つしない空間で本田は周りを見回し、また溜息をついた

「やっぱり迷信…ん゛っ!?」

急に空気が重くなった

何か重いものがのしかかってきた様な感覚と、妙な息苦しさが本田を襲う

本田はその息苦しさに悶えながらも、指を離そうとした

しかし指は十円玉にくっついた様に離れることはなく、気がついた時には……

「え…こ、こっくりさん…?」

十円玉は本田の指を乗せたまま“はい”へ移動していた

本田は慌てて姿勢を正し、十円玉を見つめる

「こ、こっくりさん、こっくりさん。僕の友達の田中は今何してますか?」

田中とは今日彼に話し掛けてきたあの男子生徒である

スッ…

“て”“に”“す”

「テニス…合ってる…」

田中はテニス部に所属している

時計を見てもまだ部活動をしている時間だった

本田は驚きを隠せなかった

迷信だと思っていた『こっくりさん』は本物だったのだから

戦慄と恐怖が走る。それと同時に本田は感動というものを覚えていた

そしてほんの数秒、十円玉を見つめると彼は決意を固めた

「鳥居の位置までお戻り下さい」

また十円玉がスッと動き出し、鳥居の絵の上に移動する

決して本田が動かしているわけではない

机が傾いてるわけでもない

「では、こっくりさん、こっくりさん」

深く息を吸った後に本題へと入った

12/03/12 13:50更新 / どんぐり
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