第四話
金竜の口内
そこは蒸し暑く、何も見えない場所だ
青年は舌の上に倒れていた
柔らかい絨毯は押せば簡単に沈んでしまう為に立つ事は出来ない
出口は堅い牙に閉ざされ、脱出は不可能
出来る事と言えば、ただ噛み砕かれないように祈るのみ
彼の下で静止していた肉塊が動き出した
大きくうねり、青年を下顎に落とす
腰辺りまである唾液溜まりに浸ってしまい、胸から上を舌が這う
べろぉ…
「ひゃぁっ…」
くすぐったいような小さな快感に上擦った声を零してしまう
魔女がクスッと笑ったようで、ぶわっとまた生暖かい息がかけられる
何度も身を捩っていると、舌が彼に覆い被さった
ゆっくりと彼の体が唾液溜まりの中へ沈んでいく
彼は危険を感じて舌を押し返そうとしたが、押してもぶにゅりと手が沈んでしまう
更にそこから、じわっと唾液が零れ、青年の手に絡み付いた
「待って…これじゃ…!うぶぶ!!」
彼女の力に勝てるはずもなく、彼はその水溜まりの中へ沈められてしまった
もがいても舌は呼吸の隙を与えず、唾液は暴れる彼の体力を奪っていく…
口に竜の唾液が入り込み、無味だがあの気持ち悪い感触が広がる
どんどん入ってくるそれは、どうする事も出来ずにただ呑み込むだけ
自身の喉に何かが張り付いているような感覚が伝わる
不快感に苦しみ、限界を迎えかけたところで解放された
舌で責められた時と同じく、青年は酸素を求めて大きく息を吸った
彼の肺に届くのは新鮮な空気ではない
生暖かい竜の吐息だ
それは吸う度に彼の心に敗北感を、そして喰われているという現実を痛感させた
じゅるるっ…
唾液が啜られる
彼の味が染み込んだそれは奥へと流れていき、ごくっ。と生々しい嚥下の音が響き渡らせた
次は自分が彼女の喉を鳴らすのかと思えば、青年はまた冷や汗をかく
だが、まだ呑み込む気はないようで舌による責めが再開された
べろっ…じゅるっ…くちゅ、にちゃぁ…
「はうぅ…くっ…」
何も出来ずに舌に弄ばれる体
肉壁だけとなった下顎に倒され、プレスを喰らう
体が触れたそこからは、またジワッと唾液が分泌されていく
今度は溜めずに青年へ塗りたくる
ねっとり、ぬるぬる
まとわり付く唾液は、次第に彼を快楽の世界へと引きずり込んでいく
顔を赤く染める青年に休む暇はない
足元から舌に掬い上げられれば、今度は持ち上げられて上顎に押しつけられる
固い肉壁と柔らかい舌に挟まれ、また声を漏らす
それは嬌声なのか、呻き声なのか…
背中もじっくり舌を這わされ、その味を捧げてしまう
腹も背も唾液にまみれ、服は重みを増している
所々糸を引き、動けばニチャッと水音を立てていた
この責めも長く、執拗に行われた
「んっ…んん…!」
体力を奪われ、抵抗しなければしない程彼女の力が増す
上顎に貼り付けられたままでは大した事は出来ず、身を捩って離れようとした
足で舌と上顎を蹴ったりもしていた
だが返って来るのは非力さを痛感させる魔女の笑い声
悔しさに青年は何度も舌を蹴る
何度も何度も…
しかしそれは自ら体力を削る無駄な行為
グリグリと押さえつけられているせいで、あっという間に息が上がってしまう
上顎から離れ、元の位置に戻ればまた生暖かい息を吸って、悔しさを噛み締めた
「まだいけるだろ?」
「えっ…」
口内全体に声が響く
それは疲れた青年の顔を更に歪ませる
舌が動き、今度は牙へと寄せた
暗闇の中で何をされるかイマイチ分からないが、横に移動してる事から何となく想像出来る
固いものに触れる
青年の手より大きく、ぬめっとした感触
先端は尖っているようで、触れた場所にチクッとした痛みが走る
それが牙だと理解するのに数秒もかからなかった
牙の役割と言えば…
青年の頭に嫌な予感が過る
左右に存在する牙
彼は今、下顎に並んだ牙の間に挟まれているのである
見上げても何も見えない
けれど、すぐ近くに上顎に並ぶ牙があるのかと思うと顔が引きつってしまう
しかも先程男が喰われた事により、血の匂いが漂っていた
もし、光があったなら彼の目には醜いものが写し出されていただろう…
かぷっ…むにぃ…
彼の体に鋭い痛みが走る
チクッと何かが刺さる痛み
牙が下ろされたようだ
腹部にゆっくりと突き立てられ、食い込んでいく
出血させないようにしているのか、その行為は慎重だ
「あっ…あぁ…か、噛むな…」
青年にその慎重さは伝わっていないようだ
むしろ、自分と一緒にいた男と同じ目に遭うのではないかと恐怖していた
噛まれる度に悲鳴を出してしまう
魔女の方も時折強く噛むようにしていた
常に死を意識させる為に
かぷっ…あぐっ、べろぉ…
肉の柔らかさを堪能する為に何度も行われる甘噛み
あちこちに歯形が残り、ヒリヒリとした痛みを伴いだす
更にそこに舌が這い、また上擦った声を出してしまう
死への恐怖と快楽
この二つを一度に体験している彼の心臓は破裂しそうな勢いで脈を打っていた
呼吸も荒くなり、ぐったりと倒れてしまう
それでも抵抗は続けていた。小さな抵抗を
がぶっ!!
「があぁぁあぁぁ!!」
突然肩に激痛が走る
耐えきれずに青年は悲鳴をあげた
牙が退いたそこからは、何か生暖かいものが流れる
同時に鉄の臭いが漂い始めた
「おっと、あまりにもそそる声を出されたものだから…クフフ」
笑いを含んだ声が響く
今のは事故か、わざとか…
どちらにしろ、心臓を貫かれなかっただけマシだった
不幸中の幸いとは、まさにこの事だと彼は思った
傷口にベロりとまた舌が這う
また呻き声を漏らすが、舌はお構い無く舐め続ける
そして咀嚼時と同じように顎を動かし、くちゃくちゃと味を味わう
その直後に舌が青年を再び上に乗せる
何が起こるかと思えば、傾斜が付き始めた
肉の柔らかさも味も味わい尽くしたらしく、次へと進もうとしているらしい
そう、喉越しだ
必死に命乞いの言葉を吐きながら、舌へ掴まろうとする
もう彼は演技をする、という事を忘れていた
自分の感情のまま、一匹の獲物として行動しているのだ
舌は無惨にも、にゅるっと彼の腕から滑り抜ける
互いに大量の唾液を纏っているせいで、余計に滑りやすい
「ぐっ!?」
そうしている間に彼の足が捕まってしまう
暗闇の中からグチュグチュと絡み付く粘液の音が聞こえてくる
弾力のある喉の肉が彼の足を圧迫する
そして、その蠕動によって徐々に彼を呑み込んでいく
懸命に腕を伸ばして何かを掴もうとするが、彼が掴んだのは空気ばかり
何の抵抗も出来ずについに胸まで呑み込まれてしまう
ぐにゅぐにゅと蠢く肉壁が彼を圧迫する
舌の圧迫のような優しいものではない
彼女の意思ではなく、獲物を呑み込む為の動きをしているようで、そのプレスに再び体が…骨が悲鳴をあげる
傷口から激痛が走り、肺から息も絞り出される
頭から爪先までが、その中に呑み込まれて揺すられる
気をつけのポーズしかとれない彼はただされるがままに…
外から見れば、ぷっくりとした膨らみが喉に出来ていた
時折それは、もぞもぞと動く
そこへ金竜は悪意に満ちた視線を送っていた
指で押せば、むにっと沈みくぐもった声が聞こえてくる
ニヤッと笑った後に指を離し、膨らみが落ちるのを待つ
その間も彼は圧迫に耐えていた
けれど、その苦しみはすぐに消える
ごくっ
嚥下の音と共に
そこは蒸し暑く、何も見えない場所だ
青年は舌の上に倒れていた
柔らかい絨毯は押せば簡単に沈んでしまう為に立つ事は出来ない
出口は堅い牙に閉ざされ、脱出は不可能
出来る事と言えば、ただ噛み砕かれないように祈るのみ
彼の下で静止していた肉塊が動き出した
大きくうねり、青年を下顎に落とす
腰辺りまである唾液溜まりに浸ってしまい、胸から上を舌が這う
べろぉ…
「ひゃぁっ…」
くすぐったいような小さな快感に上擦った声を零してしまう
魔女がクスッと笑ったようで、ぶわっとまた生暖かい息がかけられる
何度も身を捩っていると、舌が彼に覆い被さった
ゆっくりと彼の体が唾液溜まりの中へ沈んでいく
彼は危険を感じて舌を押し返そうとしたが、押してもぶにゅりと手が沈んでしまう
更にそこから、じわっと唾液が零れ、青年の手に絡み付いた
「待って…これじゃ…!うぶぶ!!」
彼女の力に勝てるはずもなく、彼はその水溜まりの中へ沈められてしまった
もがいても舌は呼吸の隙を与えず、唾液は暴れる彼の体力を奪っていく…
口に竜の唾液が入り込み、無味だがあの気持ち悪い感触が広がる
どんどん入ってくるそれは、どうする事も出来ずにただ呑み込むだけ
自身の喉に何かが張り付いているような感覚が伝わる
不快感に苦しみ、限界を迎えかけたところで解放された
舌で責められた時と同じく、青年は酸素を求めて大きく息を吸った
彼の肺に届くのは新鮮な空気ではない
生暖かい竜の吐息だ
それは吸う度に彼の心に敗北感を、そして喰われているという現実を痛感させた
じゅるるっ…
唾液が啜られる
彼の味が染み込んだそれは奥へと流れていき、ごくっ。と生々しい嚥下の音が響き渡らせた
次は自分が彼女の喉を鳴らすのかと思えば、青年はまた冷や汗をかく
だが、まだ呑み込む気はないようで舌による責めが再開された
べろっ…じゅるっ…くちゅ、にちゃぁ…
「はうぅ…くっ…」
何も出来ずに舌に弄ばれる体
肉壁だけとなった下顎に倒され、プレスを喰らう
体が触れたそこからは、またジワッと唾液が分泌されていく
今度は溜めずに青年へ塗りたくる
ねっとり、ぬるぬる
まとわり付く唾液は、次第に彼を快楽の世界へと引きずり込んでいく
顔を赤く染める青年に休む暇はない
足元から舌に掬い上げられれば、今度は持ち上げられて上顎に押しつけられる
固い肉壁と柔らかい舌に挟まれ、また声を漏らす
それは嬌声なのか、呻き声なのか…
背中もじっくり舌を這わされ、その味を捧げてしまう
腹も背も唾液にまみれ、服は重みを増している
所々糸を引き、動けばニチャッと水音を立てていた
この責めも長く、執拗に行われた
「んっ…んん…!」
体力を奪われ、抵抗しなければしない程彼女の力が増す
上顎に貼り付けられたままでは大した事は出来ず、身を捩って離れようとした
足で舌と上顎を蹴ったりもしていた
だが返って来るのは非力さを痛感させる魔女の笑い声
悔しさに青年は何度も舌を蹴る
何度も何度も…
しかしそれは自ら体力を削る無駄な行為
グリグリと押さえつけられているせいで、あっという間に息が上がってしまう
上顎から離れ、元の位置に戻ればまた生暖かい息を吸って、悔しさを噛み締めた
「まだいけるだろ?」
「えっ…」
口内全体に声が響く
それは疲れた青年の顔を更に歪ませる
舌が動き、今度は牙へと寄せた
暗闇の中で何をされるかイマイチ分からないが、横に移動してる事から何となく想像出来る
固いものに触れる
青年の手より大きく、ぬめっとした感触
先端は尖っているようで、触れた場所にチクッとした痛みが走る
それが牙だと理解するのに数秒もかからなかった
牙の役割と言えば…
青年の頭に嫌な予感が過る
左右に存在する牙
彼は今、下顎に並んだ牙の間に挟まれているのである
見上げても何も見えない
けれど、すぐ近くに上顎に並ぶ牙があるのかと思うと顔が引きつってしまう
しかも先程男が喰われた事により、血の匂いが漂っていた
もし、光があったなら彼の目には醜いものが写し出されていただろう…
かぷっ…むにぃ…
彼の体に鋭い痛みが走る
チクッと何かが刺さる痛み
牙が下ろされたようだ
腹部にゆっくりと突き立てられ、食い込んでいく
出血させないようにしているのか、その行為は慎重だ
「あっ…あぁ…か、噛むな…」
青年にその慎重さは伝わっていないようだ
むしろ、自分と一緒にいた男と同じ目に遭うのではないかと恐怖していた
噛まれる度に悲鳴を出してしまう
魔女の方も時折強く噛むようにしていた
常に死を意識させる為に
かぷっ…あぐっ、べろぉ…
肉の柔らかさを堪能する為に何度も行われる甘噛み
あちこちに歯形が残り、ヒリヒリとした痛みを伴いだす
更にそこに舌が這い、また上擦った声を出してしまう
死への恐怖と快楽
この二つを一度に体験している彼の心臓は破裂しそうな勢いで脈を打っていた
呼吸も荒くなり、ぐったりと倒れてしまう
それでも抵抗は続けていた。小さな抵抗を
がぶっ!!
「があぁぁあぁぁ!!」
突然肩に激痛が走る
耐えきれずに青年は悲鳴をあげた
牙が退いたそこからは、何か生暖かいものが流れる
同時に鉄の臭いが漂い始めた
「おっと、あまりにもそそる声を出されたものだから…クフフ」
笑いを含んだ声が響く
今のは事故か、わざとか…
どちらにしろ、心臓を貫かれなかっただけマシだった
不幸中の幸いとは、まさにこの事だと彼は思った
傷口にベロりとまた舌が這う
また呻き声を漏らすが、舌はお構い無く舐め続ける
そして咀嚼時と同じように顎を動かし、くちゃくちゃと味を味わう
その直後に舌が青年を再び上に乗せる
何が起こるかと思えば、傾斜が付き始めた
肉の柔らかさも味も味わい尽くしたらしく、次へと進もうとしているらしい
そう、喉越しだ
必死に命乞いの言葉を吐きながら、舌へ掴まろうとする
もう彼は演技をする、という事を忘れていた
自分の感情のまま、一匹の獲物として行動しているのだ
舌は無惨にも、にゅるっと彼の腕から滑り抜ける
互いに大量の唾液を纏っているせいで、余計に滑りやすい
「ぐっ!?」
そうしている間に彼の足が捕まってしまう
暗闇の中からグチュグチュと絡み付く粘液の音が聞こえてくる
弾力のある喉の肉が彼の足を圧迫する
そして、その蠕動によって徐々に彼を呑み込んでいく
懸命に腕を伸ばして何かを掴もうとするが、彼が掴んだのは空気ばかり
何の抵抗も出来ずについに胸まで呑み込まれてしまう
ぐにゅぐにゅと蠢く肉壁が彼を圧迫する
舌の圧迫のような優しいものではない
彼女の意思ではなく、獲物を呑み込む為の動きをしているようで、そのプレスに再び体が…骨が悲鳴をあげる
傷口から激痛が走り、肺から息も絞り出される
頭から爪先までが、その中に呑み込まれて揺すられる
気をつけのポーズしかとれない彼はただされるがままに…
外から見れば、ぷっくりとした膨らみが喉に出来ていた
時折それは、もぞもぞと動く
そこへ金竜は悪意に満ちた視線を送っていた
指で押せば、むにっと沈みくぐもった声が聞こえてくる
ニヤッと笑った後に指を離し、膨らみが落ちるのを待つ
その間も彼は圧迫に耐えていた
けれど、その苦しみはすぐに消える
ごくっ
嚥下の音と共に
12/11/04 18:36更新 / どんぐり