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連載小説
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第五話
どちゃっ!!


その音がすると同時に私の体に鈍い痛みが走る
更に冷たい空気が肌を刺す

「んん…?」

顔についた粘液を払いながらも目を開けると、見覚えのある光景が飛び込んできた
薄暗くて埃っぽい場所に袋が並んでいる
体液が空気に触れて悪臭を放つ中、私はここが何処か思い出した

風車の中だった

「大丈夫?」

背後から聞き覚えのある声がする
そう、今となっては憎たらしいあの声…

黄色い狼
いや、黄色い悪魔

「寒そうだったから、ボクのお腹に入れたの
 温かかった?」

どうやら介抱していたつもりらしい
何故添い寝ではなく、丸呑みだったのか聞きたいが、今はもうどうでもいい
とりあえずこの狼と離れる事が先決だ

私は無言で立ち上がると狼を睨んだ
相変わらず狼は、何処か無邪気さを感じる表情をしている
誉め言葉、あるいは遊ぶ話を待っているのか…
けど私はそんな事を言うつもりはない

「消えて」

「え…?」

「今すぐ私の前から消えてよ!!」

私は怒鳴った
風車の中で声が谺する
無駄に心臓が脈を打っているのが分かる

狼の表情が一気に変わる
笑顔に近い顔から、悲しそうな…怖がっているような暗い表情に
左右に振られていた尻尾も動きを止めて、垂れ下がってしまっている

そして一歩二歩と後退りし始める
鈍い足取りで、私から離れていく
その際も翡翠色の瞳は私を見上げていた

クゥーン、と切ない鳴き声を上げると狼は扉から出て行った
木製のドアが前後に揺れ、途切れ途切れに外の空気と光が入ってくる

「…はぁ」

重い溜め息が漏れる
何故だろうか
狼が出て行って、スッキリしたはずなのに何故かしない

確かにあの表情と鳴き声を聞いたら罪悪感を覚えない事はない
でも悪いのは向こうであって、私ではない

とりあえず私はベトベトになった制服を乾かす事にした
臭いはとれないと思うけど、このままでは心地悪い
あの場所なら風通しが良いから、すぐ乾くはず

そう思いながら、また階段を上る

「あっ、やばそう…」

先程テラスから眺めた景色が少し変わっている
これから雨が降るのか、雲が厚みを増していた
風も若干生暖かい…

まだ間に合うと思って、私は制服を脱いだ
そしてテラスの手すりに引っ掻ける
風が吹く度に制服は大きく揺れ、体液を床に垂らした

私は風車の中に入り、体育座りをして待った
近くにあった小麦粉の袋にもたれかかりながら、空を見上げる

濃い灰色の雲が蠢き、ゴロゴロと音をたてる
これは豪雨になるんだろうな…
12/08/05 00:34更新 / どんぐり
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