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連載小説
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第三話
それから数日が経過した

タツノオトシゴは最初と比べると少し大きくなっていた
ちなみに餌はペットショップで買った熱帯魚の餌である

「シロも大きくなったな」

体が真っ白という理由でこの名付けたらしく、名付け親である南沢はタツノオトシゴに夢中だった
ただ真っ白な体を揺らしながら水の中に浮いているだけなのに、それが何処か魅力的だった

ふと金魚鉢に写った部屋の光景が彼の目に写る
丸みを帯びた硝子には南沢の机が写っていた
そこには彼がサッカー部として活動していた頃の写真とサッカーボールが置かれていた

気がつけばシロもそこを見ていた
タツノオトシゴには意思があると思わない南沢は特に気にする事もせず、写真を手にとった

「懐かしいな…」

写真には自分を含め、同級生と後輩が写っていた
全員が楽しそうな表情を浮かべている

「はぁ…」

重い溜息が零れる
あの豪雨の日を最後に彼は雷門中へ足を運ぶ事は無くなった
新しい中学校へと転校し、そこでまたサッカー部として活動し始めた

それはサッカーを楽しむ為ではない
雷門中を試合で潰す為だった

ただ、彼の心には口では言い表せない複雑な感情が取り巻いていた
少年だった頃から好きなサッカーに対する気持ちに背徳感を抱いていた

その感情が彼の心を締め付け、一度決めたはずの決意を躊躇させていた


ゴロゴロ……


「ん?雨?」

突然窓から差し込む光が消えた

硝子越しに空を見ると、黒い雨雲が空を覆っていた
南沢は椅子から立ち上がり、明かりをつけようとした

その時だった

「ア…ツシ…」

「え?」

唐突に名前を呼ばれ、咄嗟に振り向く
しかし部屋には誰もいない
彼は空耳だと思い込み明かりをつけるスイッチに手を伸ばした

「アツシ」

「!?」

今度ははっきりと聞こえた
もう一度振り向けば金魚鉢が光り輝いていた

「シロ!?」

そう名前を言った瞬間に彼の視界は眩しいほどの光に包まれた

そして一瞬の閃光

彼は片腕で目を覆い、その場で固まった
数秒の間があり、彼は恐る恐る腕を降ろし金魚鉢を見た

「!?」

目の前の光景に思わず腰を抜かした

そこに龍がいたからだ
12/06/01 20:12更新 / どんぐり
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