第二話
ゴロゴロ……ザァァーッ!!!
「うわっ、降ってきやがった」
突然の豪雨
それを予期して早足で帰っていた彼だったが間に合わず、鞄を傘代わりに帰宅路を走った
少し水が溜まり始めた道にピチャピチャと足音を残す
雨は酷くなる一方
時折周りが轟音と共に稲光で白く照らされていた
一秒でも早く帰ろうと走り続ける彼だったが、ふと足を止める
「何だ…?」
雨水で更に黒く染まったアスファルトの道
その真ん中に深そうな水溜まりがあった
黄昏色の瞳は、その足首まで普通に入りそうな水溜まりの中に浮いている何かを見つめていた
「…タツノオトシゴ?」
水溜まりの中には海にいるタツノオトシゴと呼ばれる生物がいた
しかもかなり小さく、体は真っ白だった
南沢は目を疑った
海水で生きるものが淡水で生きていけるわけがないからだ
しかしその常識を破るように、確かに目の前にはタツノオトシゴはいた
黒い水溜まりの中で白く輝き、踊っているかのように浮いている
その夢を見ているような光景に南沢は思わず鞄から木製の小さな箱を取り出した
技術の時間に作ったらしく、少々小さいがタツノオトシゴが何とか入る大きさだった
南沢はもう雨に濡れることを気にせず、箱を持った手を水溜まりへと伸ばす
周囲に誰もいないか確認しながらタツノオトシゴを箱の中へと入れた
ソレは全く暴れる事はなく、箱に入った水の中で大人しくしていた
南沢はそれを一瞥し、少年のような眼差しで家へと帰った
場所は変わって南沢の部屋
ベッドと小学校の時から使われている勉強机があるという意外とシンプルな部屋である
窓の横に小さな机が置いてあるので、彼は先程の箱をそこに置いた
相変わらずタツノオトシゴは何もせず水の中で大人しくしていた
「確か水槽があったはず」
そう言って部屋を出て行く
その姿を箱の中からタツノオトシゴは見ていた
戻ってきた南沢はシャワーを浴びたのか服装は制服から部屋着に変わっており、首にはタオルが巻かれていた
熱を放つ彼の手には小さな金魚鉢があった
丸みを帯びた硝子の中には綺麗な水が入っており、彼は箱のすぐ横に置いた
「じゃあ移し替え…!?」
移し替えようとして箱の中を覗けばタツノオトシゴの姿はなかった
彼は目を見開き、もう一度箱の中を見るが中には雨水しかなかった
動揺を隠せず、箱の周りや床を探す
懸命に探す彼だったが、タツノオトシゴの居場所は簡単な場所だった
「ど、どうして…?」
驚いたことにタツノオトシゴは彼が持ってきた新しい金魚鉢の中にいた
胸を撫で下ろすと同時に何故場所が移動していたのかという疑問が彼の頭の中に浮かぶ
家に誰もいないのだから、部屋に自分以外の人間が入る事はありえない
そうとなればタツノオトシゴが箱の中から飛び出し金魚鉢の中に入ったとしか考えられない
とりあえずタツノオトシゴは無事
そう考えると彼はその疑問を消し去った
金魚鉢を机の上に置き、優しい眼差しでそれを見つめていた
「篤志、ご飯出来たわよ〜」
そんな静かな時間を夕食が邪魔した
彼は返事をすると扉を開け、部屋を出ていった
誰もいない部屋
あるのは、ベッドと机と……
「アツ…シ…?」
「うわっ、降ってきやがった」
突然の豪雨
それを予期して早足で帰っていた彼だったが間に合わず、鞄を傘代わりに帰宅路を走った
少し水が溜まり始めた道にピチャピチャと足音を残す
雨は酷くなる一方
時折周りが轟音と共に稲光で白く照らされていた
一秒でも早く帰ろうと走り続ける彼だったが、ふと足を止める
「何だ…?」
雨水で更に黒く染まったアスファルトの道
その真ん中に深そうな水溜まりがあった
黄昏色の瞳は、その足首まで普通に入りそうな水溜まりの中に浮いている何かを見つめていた
「…タツノオトシゴ?」
水溜まりの中には海にいるタツノオトシゴと呼ばれる生物がいた
しかもかなり小さく、体は真っ白だった
南沢は目を疑った
海水で生きるものが淡水で生きていけるわけがないからだ
しかしその常識を破るように、確かに目の前にはタツノオトシゴはいた
黒い水溜まりの中で白く輝き、踊っているかのように浮いている
その夢を見ているような光景に南沢は思わず鞄から木製の小さな箱を取り出した
技術の時間に作ったらしく、少々小さいがタツノオトシゴが何とか入る大きさだった
南沢はもう雨に濡れることを気にせず、箱を持った手を水溜まりへと伸ばす
周囲に誰もいないか確認しながらタツノオトシゴを箱の中へと入れた
ソレは全く暴れる事はなく、箱に入った水の中で大人しくしていた
南沢はそれを一瞥し、少年のような眼差しで家へと帰った
場所は変わって南沢の部屋
ベッドと小学校の時から使われている勉強机があるという意外とシンプルな部屋である
窓の横に小さな机が置いてあるので、彼は先程の箱をそこに置いた
相変わらずタツノオトシゴは何もせず水の中で大人しくしていた
「確か水槽があったはず」
そう言って部屋を出て行く
その姿を箱の中からタツノオトシゴは見ていた
戻ってきた南沢はシャワーを浴びたのか服装は制服から部屋着に変わっており、首にはタオルが巻かれていた
熱を放つ彼の手には小さな金魚鉢があった
丸みを帯びた硝子の中には綺麗な水が入っており、彼は箱のすぐ横に置いた
「じゃあ移し替え…!?」
移し替えようとして箱の中を覗けばタツノオトシゴの姿はなかった
彼は目を見開き、もう一度箱の中を見るが中には雨水しかなかった
動揺を隠せず、箱の周りや床を探す
懸命に探す彼だったが、タツノオトシゴの居場所は簡単な場所だった
「ど、どうして…?」
驚いたことにタツノオトシゴは彼が持ってきた新しい金魚鉢の中にいた
胸を撫で下ろすと同時に何故場所が移動していたのかという疑問が彼の頭の中に浮かぶ
家に誰もいないのだから、部屋に自分以外の人間が入る事はありえない
そうとなればタツノオトシゴが箱の中から飛び出し金魚鉢の中に入ったとしか考えられない
とりあえずタツノオトシゴは無事
そう考えると彼はその疑問を消し去った
金魚鉢を机の上に置き、優しい眼差しでそれを見つめていた
「篤志、ご飯出来たわよ〜」
そんな静かな時間を夕食が邪魔した
彼は返事をすると扉を開け、部屋を出ていった
誰もいない部屋
あるのは、ベッドと机と……
「アツ…シ…?」
12/06/01 20:11更新 / どんぐり