わたしは何処へ?
都市の夜。
繁栄と安寧の対のような、退廃も堕落も、今はすべて夜の中。
ある宿の一室、ようやく少年の域を脱した青年がいる。
その足元に中年男の屍骸。
彼は床にひざをつき、屍骸の首に指をかけたまま。
今回は呼吸器を潰す毒を盛った。
少し時間が掛かるが、まあまあの使い出だろう。
いや、確か『対象』は40歳代だったはず。それでこのタイム。
若くて健康なものならば、もう少し時間が掛かるかもしれない。
まあ静かに黙ってくれてなによりだ。
「どうよ?」
背後から声が掛かる。
さして広くもない部屋の、扉に寄りかかって男が一人立っている。
「呼吸良し。脈拍良し」
つまりきちんと事切れている。
彼は屍骸から離れて立ち上がる。そして男を振り返った。
「その薬なかなかの出来じゃん」
「時間が掛かるけど」
「そおか?」
男に軽くうなづきで答える。
男は『緑の猫』と呼ばれている。本名は知らない。尋ねないし、尋ねても言わないだろう。
緑の猫は今回の仕事で、彼の相方であり見届け人であり見張り人だ。
少し前に『珊瑚の毒蛇』の名を戴いたばかりの彼の。
緑の猫は、先程彼がそうしていたように、屍骸の側に屈みこんでなにか観察しているようだった。
彼の作ったまだ名前もない毒薬。無味無臭で、酒に混ぜても変色しない。
今回は『対象』がふたつ、いや緑の猫にすれば三つなのだ。
ひとつは、ここに転がっている男。
ひとつは、自分の観察。
ひとつは、この毒の成果。
おそらく報告が行くのだろう。上層部へ。
緑の猫の、短い黒い髪を眺めながら、彼は思う。
迷わなくなったのは、いったいいつの話だろう、と。
他者を傷つけることへの躊躇はまだあるはず。
なのにいざ命令が下れば、『対象』を見つめたら、彼は迷わず考える。
毒を懐に、隠した片手にナイフを持って、
さあ、どう殺そう?
と。
いつのまに自分がこのように変質したか、彼は判らない。
自分で作り出した死に、泣いて、恐れて、怯えていたはずなのに。
あの嘆きは、どこへ行ってしまったのだろう。
今よりはるかに小さな手で、喘鳴する老人の胸にナイフを立てた日。
あの日の嘆きはどこへ。
後悔や恐怖や懺悔や憤怒や。
あの痛みはどこへ。
亡くしたものを数えてみて、途中でやめるのも何度目だろう。
いつかこの身とこの命を、なくす日もあるだろう。
明日か今日か知れない。
まあそれもアリだと思う。
こんなにこんなに、見知らぬ人も見知る人も切り伏せておいて。
「珊瑚の」
緑の猫が彼を呼ぶ。
引き上げる手筈だ。
彼らは窓を開けて闇へ乗り出した。
ああだけど。
私の嘆きはどこへ?
20031120
だから言ったじゃないですか。ここはやりたいことをやりたいよーにやる。そういうサイトなんですったら!
・・・ハイ、開き直ってみました★
読む人いないんじゃないかと思いますが。こんな妄想話。暗いしさあ!
明るくて切なくてラブい話とか書きたいといつも思ってますよ?ただ可能か不可能かっていう・・・ギャフン
誰か、読んだよ〜ってだけでも教えてください。マジで。
・・・・・・・・・・・・ぶっちゃけスカーレルが故郷を焼き出されてからゲーム開始までの話も、脳内でもそもそあるんですが。
書いていいですか。ってか書くし。書くよ?もういいよ!(脱兎)