十七日目
うん、こんなことあった。 前にもこんなことあったぞ。
目が覚めたらB君の股間が俺の太腿にくっついてて、若干元気ですよみたいな。 さらにそれを俺に押し付けてきたりとか!
チャンス到来? ついそう思ってしまい、つい俺も元気になってしまった。……股間が。 俺は寝たまま、B君のほうに向き直った。 B君はまどろみながら、うすく目を開けた。 ああ。 「……B君」 シーツの中で手を伸ばして、手探りでB君のパジャマのズボンを下ろすと、B君が嫌がるように身をよじり、起き上がろうとした。 「だめ。じっとして」 それを押さえて、B君のペニスを強めに握ると、はっとしたように目を見開く。一瞬だけ視線があったような気がして、どきりとする。だけどやっぱり気のせいだったのか、次の瞬間にはまた目が遠くを見ていた。 そうだよね、正気だったら、こんなこと許さないよね。 ほっとしながら、少し残念に思いながら、手の中のB君を促していく。 「……ん」 掠れた小さな声をあげて、B君が震える。 俺はじっとB君の顔を見てた。 白い顔に、内側から昇るように朱色がさしていく。眉が寄せられて、目は溶けるように潤んで、開いた唇から忙しない、弱弱しい息を吐いて。 えろい。 なんかもう半端なくえろいぞ、 「B君」 俺は自分のパジャマの下から、ほぼ臨戦態勢になっちゃってるペニスを取り出した。B君の腰の後ろを押して、自分のと密着させると、びくんと腰を引こうとする。 だめだよ、気持ちいいでしょ? B君の足を自分の足で押さえて、――逃げられないように。 自分のとB君のを重ねて一緒に扱きあげる。 すでにぬるぬると出てきてるB君の先走りを、自分のにもB君のにも塗り広げるようにこすりつける。 「っ……あ……」 B君は堪らない、というように首を振った。ぎゅっと閉じた瞼に涙が浮かぶ。 なんか虐めてるみたい。……どうしよう、もっと虐めたい。 「……ん……!」
俺のペニスに、ピシャン、と何かが当たる。あ、まだ。 ほとんど反射的に、B君のをきつく掴んだ。 「アぁっ……!!」 射精を塞き止められて、悲鳴を上げて身悶える。 ぞっとするほど、いやらしい顔で。 うわ、凄い。 B君、そんな色っぽさどこに隠してたの。
B君は俺の胸をぐいぐいと押して、離れようともがいている。だめだってば。 「……っ、もうちょっと、だから。B君」 一緒にいこうよ。
片手でB君のを握りこんだまま、もう一方の手で自分のと一緒に擦る。先端のほうだけ、強く何度も。 「ふ、あ……あ……」 B君の、薄く開いた瞼から、ぱたっと涙が零れた。 たまらなくなって、首を伸ばして口付けた。 いやいやと首を振る仕草を許さないで、体半分伸し掛かるようにキスをする。 手は止めない。 見つけた舌を強く吸い上げて、俺はB君を握っていた手を放した。 くぐもった声を喉で放って、B君はいった。俺も。
唇を離すと、はあっと大きな息が、俺からもB君からも漏れた。……気持ちよかった。 ごめんね、意地悪したかな。でも良かったよな? B君は赤い顔をして、まだ荒い息をついている。俺もだけど。 もう一度、今度は軽くキスをした。B君は嫌がらない。
やばい。 なんかもう、欲しい。
十八日目
俺は若干困っている。
昨日から、B君をベッドで寝かせて、俺はソファで寝るようにしたんだけど、いつの間にかB君が俺のいるところへやって来るのだ。 そしてソファにもたれて、俺の腹あたりに頭を乗せて寝てたりする。 俺は眠ったB君をベッドに戻し、ソファに戻る。 でもふと気づくと(たぶんB君が俺の腹とか肩とかによっかかるので目が覚めるのだと思う)またすぐ近くにB君が来てる。 最後は俺もめんどくさくなって、結局ふたりでベッドで眠った。 そんなわけで、ちょっと今日は睡眠不足だ。
昨日の朝、ついついあんなことをしてしまって、俺はまたしても一人反省会を開いた。 前、抜く手伝い以上しないって決めたはずなのに。そうやって決めてあっさり数日のうちにB君にベロチューかましたりもしたけど。 しないって、誓ったのに。 チャンスだと思ってしまった。 B君の善がる顔を見るチャンスだ、B君に触るチャンスだ、って。 しないと決めたことなのに、その決心を思い出せなかった。 B君が無防備なのがいけないとか、エロい顔するからいけないとか。言い訳する気持ちもあるし。 いや俺、ちゃんと自制心くらいあるぞ?ある……つもりだ。きっと。
だけどもっともっと、と望む気持ちもある。 だからせめて寝る場所は別にしようと、狭いソファに寝ていても、B君は側によって来る。 正直嬉しかった。なんて可愛いんだ!
だけどまずい。 これ以上はまずい。
襲ってしまいそうだ。……いやもう既に襲ったも同然、かなあ? だから離れて眠りたいのに、きっとまた俺がソファで寝れば、B君は追って来るだろう。そんなじゃ風邪を引いてしまう。 やっぱりベッドで一緒に寝るか? 試されてるのかこれ。何の試練? ……頑張ろう。
二十日目
俺たち(俺とB君とA君)が休憩室でお茶をしてると、ハニーがやって来た。
俺がコーヒーを用意してると 「セバスチャン……?」 びっくりしたようなA君の声。 振り返ると、ハニーがB君を抱き上げていた。子ども抱きで。 「ハニー!?」 ちょ、なにそれ!離せよ……! 「なんで!?なんで唐突に抱っこしてんですか!」 思わず怒鳴りそうになったけど、A君の叫びのが早かった。……良かった、今、勝手に触るなとか言いそうだった。
「痩せたか」 「え?」 「Bだ。痩せたな」 ハニーはそっとB君を抱えなおす。いつもどうりにぼうっとしたまま、B君はされるがままになっている。でも、その腕はハニーの首に回っている。なにそれ。
「そう……ですか?」 「ああ。数キロは落ちている」 ハニーはB君を下ろした。 俺はほっとして、我に返った。B君が痩せた? 痩せただろうか。気づかなかった。 「言われて見ればそうかも……?」 A君は曖昧に同意した。 たぶん痩せた云々より、B君が抱っこされたほうがインパクトが強いんだと思う。俺もそうだけど。
「B君もとから細いからなー」 ハニーに注いだコーヒーを渡し、席に着く。 「52キロ、だな」 「それ、抱き上げてわかるんですか?」 「わからないのか?」 う、とA君が詰まる。判らないのだろう。そりゃあ比較もせずに正確な重さまでわかったらすごいと思うぞ。というかA君はB君を子ども抱き出来ない気がする。背負うとか横抱きは出来るだろうけど(たぶん)、片手だっこは確実に無理そうだ。俺はできるけどな!
俺もB君を毎日のように抱き上げたり背負ったりしていたが、判らなかった。なんだか悔しい。 あとでB君の体重計ってみよう。
とは思うものの、俺は体重計など持ってない。 この家のどこかにはあるだろうけど。 廊下で会ったツネッテちゃんに聞いて見ると、自分のがあるからどうぞ、と貸してくれた。 そのままツネッテちゃんの部屋に行って、計った。
B君、現在52キロ。 ハニー、ビンゴだ。
B君は身長は170センチちょいくらい、骨も細いから病的ではないけど、痩せすぎだ。 いや、世話し始めの頃は、もうちょっとあったと思う。 動かないから筋肉も落ちて、カロリー消費も減ったけど、それ以上に食が細くなってたんだ。 気づかなかった、ずっと一緒にいたのに。 申し訳ないような、(ハニーには判ったのに)悔しいような気持ちで、B君の髪を撫でた。 今までみんなと同じご飯だったけど、少しメニュー変えるからな。運動もしような。
ふと脇に目をやると、一緒に体重計を覗き込んでいたツネッテちゃんは、なんだか打ちひしがれていた。 大丈夫、ツネッテちゃんは太くないぞ。
続
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