Aller Anfang ist schwer.
Bは深夜の見回りを終え、自室のドアを開けようとした。 誰かの足音がした気がして、ドアノブに触れていた手を離す。 ヘイヂかと思ったが、足音が違う。しかも一人ではない。音のほうを振り返ると、セバスチャンとデイビッドと、なぜかユーゼフが立っていた。 こんな夜中に、三人で何をしていたのだろうと思う。彼らが一緒にいるのは不思議ではないけれど、今の状況はなんだか妙だ。
「どうしたんですか?」 素直に聞いてみた。だがその問いには答えないまま、三人はBの前までやってきた。 「B君」 デイビッドがにこりと笑って、Bの手を掴んだ。 逆の手を、セバスチャンにとられる。 「あの?」 ものすごく意味が分からなかった。 説明を求めて、二人を見上げると、不意にすぐ側の壁がぼんやりと光った。 ユーゼフが壁に片手を入れていた。そしてこちらを振り向いて、セバスチャンの腕を掴む。 「な、なに、ちょ、うわあ!」 四人は手を繋ぎあって、壁の中に入った。
恐ろしくてぎゅっと目を瞑っていたが、一瞬の浮遊感に似た異様な感覚のあと、足は床についていた。屋敷の廊下とは違う、絨毯の感触。 そっと目を開けると、思ったとおりベージュの絨毯を踏んでいた。 周囲を見ると、見知らぬ部屋にいた。どこかの屋敷のゲストルームのようだった。
「ここ……」 「僕の家だよ」 応えたのはユーゼフ。いつものようにかすかに微笑んでいる。 ユーゼフはすでにセバスチャンと手を離していたが、まだBの手は二人に握られたままだ。 何が起こっているのだろう。 「……どうしてですか?」 また素直に聞いてみた。 「どうしてだと思う?」 聞き返された。さっぱり判らないが。
Bが首をひねっていると、セバスチャンが手を握ったまま、空いている片手を伸ばしてBの頬に触れた。手の促すまま、セバスチャンを見上げると、とても近くに顔があった。ぎょっとして身を引くが、頬に当てられた手が首の後ろに滑り、引き寄せられて口付けが降ってきた。 キスは一瞬で、呆然としている間に、ユーゼフとデイビッドにも口付けられた。 なんで、なにが。どうして。
目を見開いたまま固まっているBの頭をデイビッドがそっと撫でる。 「デイビッドさん……」 「うん?」 「どうして」
デイビッドは繰り返し髪を撫でながら言った。 「好きだぞ」 その後を次ぐようにユーゼフが言った。 「僕たち三人ともね」
「嫌だ……!」
ベッドに倒れたBを、六本の腕が押さえ込み、あっさりと体から衣服が取り払われていった。 精一杯暴れても、もとより体格のちがう男三人に敵うはずもなく、すぐに全裸にされてしまった。 そして三人の手が、体の至るところに纏わりついてくる。腕に脚に、頬に首に肩に胸に性器に。これから起こることにBは怯え、自分で気づかずに泣いていた。 「泣くな」 セバスチャンが慰めるようにBの瞼を舐める。 「止め、触らないで……うわ!」 急に下半身を持ち上げられ、自分の足が視界に入る。 自分の格好を知って、顔に血が上る。膝を折られ、脚を広げられ、全て曝け出された姿。
「誰かに使わせたことある?ここ」 「使わせた!?」 「ないんだな」 「ないって!?」 「うん、よかった」 「止めろ、やめろって!」 「まず洗おうなー。解れやすくなるし」 「何を!?放せ、嫌!」
押さえ込まれて浣腸された。 三度、腹の中を洗われて、排泄さえ見られた。 ふたたびベッドに戻された頃、精神的な苦痛でBはすすり泣くだけになっていた。
物心付いて以来、人前で大便を排泄などしたことなど無論ない。しかも浣腸をされて。 プライドどころか人としての尊厳さえ潰された。羞恥も怒りも感じていたが、今はみじめな気分で一杯だった。 彼らが自分を好きだなんて嘘だ。 嫌だとやめてくれと何度訴えても、体を暴いて心を踏みにじって、信頼を、裏切った。
横たえられたベッドのマットが揺れる。 セバスチャンがベッドに座り、見下ろしていた。 その手がBの方へ伸ばされ、反射的に顔を逸らした。誰にも触られたくない。きっとそれは叶わないだろうけれど。
「あっ、やっ……」 Bはベッドの上で、背後からデイビッドに抱かれて、脚を開き膝を曲げられた姿勢で、性器と肛門をユーゼフとセバスチャンに嬲られていた。
「きもちいいよな?」 触られ続けて赤く硬くなった乳首を摘んで、デイビッドが言った。 「起ってるものね。ねえB君。」 ペニスも上を向き、先端からにじみ始めた液体で指を濡らしながらユーゼフが言った。
「どこが気持ちいいか教えて。僕がこすってあげてるここ?それともデイビッド君に爪を立てられてるとこ?セバスチャンに悪戯されてるとこ?」 「ち、が……止め……」 「すべてだろう?」 「……嫌……ひぐっ!」 オイルでぬめるアナルを責めるセバスチャンの指が、二本に増やされた。 微かな痛み、気色悪さと内側を広げられる違和感。 ぐちゃぐちゃと鳴るアナルが信じられない。繰り返し浅く出し入れされ、ひどく熱い、と思った。
「ハニー、今何したの?」 「指を増やした。二本飲み込んでいる」 「えー見たいなあ。切れてない?」 「大丈夫。赤くなって腫れてるけど、傷はついてないよ」
頭の上で交わされるBのアナルについての会話に、Bはいたたまれない。
「ひうッ……見……るな……」
いつのまにかデイビッドとユーゼフの手が止まっていた。 それでもBのペニスは上向いたまま、たらりと先走りを零していた。デイビッドはにっこりと笑う。B君は向いている。男に抱かれることに。
セバスチャンはそろえた指を、ぐっと奥へ進めた。 ま ずは入り口をよく解すようにとデイビッドの指示があったのだが、もういいだろうと思った。ゆっくりと腸内を擦り上げ、なめらかな粘膜と広がってもきつい締め付けを指で楽しんだ。
「あ、あ…っ」
指の根元から先まで使って、腹側を探る。 「あった」 見つけたしこりのようなものに触れた途端、 「……イああっ!」 Bの体が跳ねた。三人の腕に捕らえられたまま、びくびくと震える。アナルもぎゅうっとまった。
「どうだ?B」 「う……嫌……あっ……」 内側のどこかを擦られたとき、ぞっとしたものが背中を走り抜けた。何がと思うまもなく、繰り返しそこに触れられる。 「あっ、あ……!……やめて、……ひぃっ」 初めて知る内側の感覚にBは怯えた。 無理矢理拡げられ、弄り回されている排泄の為の器官なのに、セバスチャンの指が粘膜のどこかを擦るたび、甘い痺れが走る。
「おお、気持ち良いんだなB君」 「可愛い声でなくねえ」 よかったよっかたと言わんばかりの二人に、混乱するBは文句も言えない。 「三本目いれるぞ」 「いやだあっ!」 「大丈夫だぞ、B君。入る入る」 「やめ、……ああ!」
一度抜けた指が、増やされて再び入れられる。 恐ろしいのに、アナルは抵抗しつつもセバスチャンの指を迎え入れ、締め上げた。
「入ったよ。切れてもいない」 Bのその部分を見られないデイビッドに、ユーゼフが教える。 「ああ。よく広がっている」 「や、見……るな……!」 「入り口もひくひくしちゃってるね。セバスチャンの指、おいしいかい?」 「嫌……も、やだ……」 「いい、でしょ?B君」
早く彼が認めてしまえばいいとデイビッドは思う。 指で犯されながらも、放置されているペニスの先を濡らしているBは、思ったより敏感で淫蕩だ。嫌だと言っても快楽に逆らえず、すでに体は彼自身のコントロールをなくして、アナルに与えられる刺激にびくびくと震えるだけ。 背後から回した手で、左右の乳首を一度に捻ると、可愛く啼いた。ここも好きなのだろう。
「……そろそろ良さそうかな」 「ハニー、ゆっくりだからね」 「ああ」
ぬるりと指が出て行く。 三人の手が離れ、Bの上半身をデイビッドがそっとベッドに落とした。 思わずほっと息を吐いたBの脚の間に、セバスチャンが割り込み、はっとしたときにはすでに両方の膝裏を持ち上げられてた。
「!」
すかさずデイビッドがBの腰の下にクッションを押し込むが、Bはそれにさえ気づかず、今更のように逃げようとしたが。
「ああ――っ!」
セバスチャンを飲み込まされた。 「……痛、あ……あっ」
ぐちっ、と音を立てて、オイルにまみれたアナルを押し広げ、他人の肉が入ってくる。 突っ張るような、引き攣れるような痛みに、肛門に異物が、セバスチャンの性器が入っているという現実に、Bはボロボロと泣いた。
「B君はかわいいねえ」 ユーゼフがいつの間にかBの顔を真上から見下ろし、顔やら肩やらを慰めるように撫でていた。 デイビッドはセバスチャンとBが繋がっている部分を覗き込んでいる。
「ひ、ぎぃっ……うあ……っ」
拡張感にBは抵抗もできない。動いたら裂けてしまうような気がした。 すくみ上がるBに構わず、セバスチャンは腰を進めてくる。体の奥深くが広げられていく。 どこまで、と思うほど。
動揺するBにセバスチャンが笑いかけた。見たことのない、嬉しそうで、奥底に重い光の燃える目だった。 「全部はいったぞ、B君。初めてなのに、ちゃんと飲み込めてるぞ」
Bのアナルは念入りに解されたためか、裂けることなくペニスをすべて受け入れていた。
「すごいな……」 溜息のようにセバスチャンが呟く。 入り口はひくひくと絶えず収縮し、ぎちっと食いついている。奥のほうは柔らかく、つるりとした感触で、それでもみっしりとセバスチャンのペニスを包んでいる。
繋がった場所を見下し、閉じていたちいさな穴が、こんなに広がるのか、と改めて思った。ペニスで感じる収縮と同じタイミングで動くアナルが、とてつもなくいやらしい。 Bの顔を見たい、と思ったが、ユーゼフの影で見られなかった。ユーゼフはBに、小さなキスを顔中に送っていた。
「痛いか?」 セバスチャンが尋ねると、ユーゼフが身を起こした。目を閉じて耐えるBは、しゃくりあげるような呼吸をして苦しげだった。セバスチャンの問いにも答えない。 哀れにも思ったが、止める気は起きない。
「あ、さすがにちょっと萎えちゃってる」 痛みに硬さを失っていたBのペニスを、デイビッドが愛撫し始めると、Bのアナルはぎゅうっと締まり、セバスチャンは痛みに眉を寄せた。 セバスチャンが腰を僅かに引くと、アナルはまくれ上がり、粘膜が引き出された肉を追うように伸びた。再びペニスを埋め込むと、つられて内側にもどる。 ほんとうになんていやらしい。
「あっ、――あっ、」 緩やかに抜き差しを始める。
「痛くなくなってきたかな」 デイビッドがBのペニスを扱き上げながら言う。Bのそこはまた硬くなってきていた。 セバスチャンの動きはじわじわと大きくなり、Bは揺さぶられるまま声をあげた。
「……ひぃっ、いや、……あっ……!」
Bは腹の中を出入りする感覚に混乱した。拡張される痛みはかすかになり、溶けるような熱さと快感に取って代わる。圧迫感が苦しかったが、その圧迫と摩擦で、快感は生まれていた。アナルに感じるそれはペニスまで確かに繋がっていて、デイビッドがペニスから手を離してもBは萎えずに先端から先走りを溢した。
「ああ、すごい感じてるね」 「すっかり完勃ちしたし。お尻気持ちいいんだB君」 「……い、ちが……あぅっ」 「こんなに、濡らしておいてか?」 「や……あ、あっ……」
辱める言葉に、首を振っても快楽はBを捕らえて離さない。 セバスチャンはパンパンと腰を打ち付けてくる。無意識に手を自分の性器にのばす。
イきたい。
だがその手はデイビッドに掴み取られる。 「だめだぞ、触っちゃ」 「……っ……はなし、……!」 もう少しなのに。
「――くぅっ……!」 セバスチャンが低くうなって、腹の中に液体を感じ取る。
「……あ……あ……」 ずるりと抜けていく感触に震えながら、終わった、と思った。 ユーゼフがベッドの上で動き、位置を変える。セバスチャンがBの脚を下ろした。 上質なベッドは大人を何人も乗せて、さすがに軋んだ。ぼんやりした頭で弾むスプリングを感じ、再び脚を持ち上げられ、Bは我に返った。 見ると、今までセバスチャンがいた位置にユーゼフがいる。まさか、まだ。
Bの表情を読んだユーゼフが笑う。 「うん、まだ終わらないよ」 そんな、という呟きは貫かれて上げた悲鳴で消えた。
すでに犯されたアナルはつるりとペニスを飲み込み、ぐちゅ、と空気を混じらせた音を立てる。 ユーゼフは最初から深く進み、そして引いた。 先端が内側を突き上げ、カリが括約筋に引っかかるように抜けていく。 そのときセバスチャンの指が、Bの乳首の先端を押すように擦りあげた。
「っあああ――っ!」 排泄感に似た強烈な快感に、一瞬目の前が白くなり、耳の奥で自分の鼓動が聞こえる。
「わ、いった」 「ふふ、B君は僕の気に入ったんだよ」 「……ちっ」 「まあまあ。ハニーがB君を可愛がってたからだって」
三人の会話がぼうっとした意識に届く。いった、のか。 恥ずかしいと思うより、Bは、今のはなんだ、と呆然と思った。知らない、こんな。
「お尻でいっちゃたなーB君」 「……ち、違う……」 「嘘はよくない」 デイビッドが萎えたBのペニスを指ではじく。
「感じてくれて嬉しいよ。でも、もうちょっと付き合ってね」 浅く挿入したまま止まっていたペニスが、また動き始める。 「ヒッ!……嫌、……あっ!」 「嫌ならお尻の、入り口も中もこんな嬉しそうに動かさないでくれるかい?」
からかう声を聞きながら、自分はどうなるんだろう、と微かに思った。
あれは夢か? とさえBは思い始めていた。 あの日、三人に犯された日から一週間。 Bはとても普通にデーデマン邸で働いていた。
夜を通して繰り返し嬲られ、辱められ、もう出ないというほどいかされた。尻を貫かれながらフェラチオされた時は、あまりの快楽に気が狂うとさえ思った。途中で記憶が途切れ、目を覚ますと自分の部屋にいた。 混乱しつつも着替えて部屋を出ると、Aに熱はもう下がったのかと言われ、曖昧に笑っておいた。丸一日寝ていた、らしい。
怯えつつセバスチャンに遭遇すると、彼は朝いつもそうであるように不機嫌だった。デイビッドはいつものように朗らかで、その日の午後現れたユーゼフもいつもとなんら変わりなく、あの夜を匂わすものは何もなかった。
自分の体を見ても、なんの痕跡もなく、おそるおそる触った肛門も、あんなに拡張されたのが嘘のように閉じていた。
夢かもしれない。
三人があんなことをするなんておかしいし、強姦されてあんな――気持ちいいのもおかしい。 きっとそうだ、と自分に言い聞かせるように思う。 でもそういう夢を見た自分の深層心理には考えないで置こう、と決めた。
夕食後の休憩室に入ると、デイビッドが日誌を書いていた。あの、なんとも言えない挿絵付きで。 思わず苦笑すると、デイビッドが顔を上げた。
「おお、B君」 「何かいてるんですか」 「うん、これ旦那様で、これハニー」
デイビッドは座ったまま、Bは傍らに立って、しばらく話をした。不意にそうだ、とデイビッドが言って立ち上がる。
「あれ良かったろ?」 「え?――!!」 Bに向き合うように立ったデイビッドは、両手でBの尻を強く掴んだ。
「……ひっ!」 薄い尻の肉を左右に広げ、揉みしだかれる。思わず体が跳ねる。 「俺はすごく良かったぞ」
Bは呆然としたまま、あれは、夢じゃなかった、と思う。 あれは全て現実に起きたのだ。
「ここに」 デイビッドが片手を離し、服の上からBのアナルを探る。 「……あ、あ……」 「俺が入って。お隣さんもハニーも入ったよね?」
指先で撫でられ、突かれて、Bはあの快楽を思い出した。 フラッシュバックのように鮮やかに。
粘膜を掻き回す指、その爪の感触も、貫く肉の感触も、直腸で出された精液の感触も、すべて。
「そん、なの……」
いま触れている手が、どこもかしこも触れていったのだ。 ぞっとした。 恐怖なのか怒りなのか、――期待なのか、自分でもわからなかった。
「B君はお尻の穴いっぱい拡げて、気持ちいい、って言って泣いたよね?」 デイビッドは尻から手を滑らせ、尻から腰、背中から肩、首とBの体を撫で上げ、Bの顔を両手で包んで、にっこり笑った。 いつものようにお日様のように。その向こうに隠されない欲があった。
「そうだろう、B君」
だってちょっと起ってるじゃない? 囁かれてから自分の体の変化を知って、Bは呆然とデイビッドを見上げた。
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