必ず君に逢いにいく この体が朽ちても この魂がきえようとも 必ず君に逢いにいく 愛してる 愛してる 愛してる 「相棒?何聴いてるんだ?」 とある雑誌の撮影中。先に撮影が終わった遊戯はパートナーであるアテムを待っていた。 ポケットから携帯音楽プレイヤーを取り出してイヤホンを耳にはめる。 心地よいメロディーと歌詞が体の隅々まで行き渡っていく感覚。ゆらゆらと海の中を漂うように半ば夢見心地で聴いているとイヤホンの片方が外された。 アテムだ。 「お疲れ様、ユウギ。」 「ただいま、ゆうぎ。」 仕事中は本名で呼ばない。 それがボクたちの決めたルールの一つだ。 「何を熱心に聴いてたんだ?」 「ん?聴いてみる?」 はい、とアテムの持っていたイヤホンを耳に入れ、音量を少し上げる。 「……”Neos”か。」 「うん。よくわかったね。」 ”Neos” 今ネット界で話題のプロでもストリートミュージシャンでもない、ただ気が向いたときに音声ファイルとして投稿サイトにアップされる正体不明の歌姫。 「どうしたんだ?これ。」 「知り合いにおとしてもらったんだ。」 「ふ〜ん…」 いかにも興味なさそうな返事だが、ボクにはわかるんだよね。 「今度CDにやいてもらってくるね。」 「!」 事もなさげに言うとどこか照れたように首筋をかいて小さく、頼む、と言われた。 「それにしても、まさかもう一人のボクが”Neos”に興味があるなんて思わなかったよ。」 自分にも他人にも厳しいアテムは基本、自分が認める実力者でなければ興味を示さない。 逆に言えば、彼の眼鏡に適うということは力があるということだ。 (でも、きっとボクは例外だと思うんだよね。) 一体彼はボクのどこを見て気に入ってくれたのか。 今度一度聞いてみようと思う。 「何だ何だ、2人とも。一体何してるんだ?」 背後からひょっこり現れたのは城之内くんだ。 「お疲れ様、城之内くん。」 「お疲れ様だぜ、城之内君。」 城之内克也くんは今、新進気鋭のカメラマンで、ボクたちの専属さんだ。 同い年ということもあってか、いつの間にか意気投合し今ではすっかり親友なのだ。 「お疲れ、2人とも!今日も凄く良かったぜ!」 「ありがとう、城之内くん。お世辞でも嬉しいな。」 「何言ってるんだ、相棒!日に日に上手くなっていってるぜ!俺が保障する。」 「そうだぜ、遊戯。」 仕事のことに関しては嘘は言わない二人だからその言葉が純粋に嬉しくて、ありがとうと笑った。 「で?何してたんだ?」 「”Neos”の曲を聴いてたんだよ。」 「なにぃ!」 ”Neos”の言葉に城之内くんが過剰に反応する。 その勢いにボクももう一人のボクもただ驚くばかりだ。 「なあ!遊戯!後生だ、それ俺にも分けてくれないか?!」 「え、あ、うん。頼んでみるけど…城之内くんもファンなの?」 「おうよ!だけどよ、彼女の曲が出るたびに回線がパンクするとかでなかなか聞けなくてよ…だから、遊戯!頼む!」 パン、と大きな音を立てて城之内くんが頭の上で手を合わせる。 変わらない、彼がどうしても譲れない頼み事をするときの昔からの癖。 思わず笑いが零れてしまう。 「あれ?何で彼女?性別とかまったくの謎なんでしょう?」 「いや!彼女だ!きっと可憐で可愛いらしい人に違いない!俺にはわかる!」 力説する城之内くんに2人で苦笑い。 「…あんまり理想を高くもたない方がいいと思うよ。」 「?何か言ったか?相棒。」 隣で首を傾げるアテムに何でもないと笑顔で答える。 「まさか城之内君もだったとはな。」 「も、ってことはお前もかアテム。意外だな。何だかクラシックとかジャズっていうイメージでポップなやつを聞く感じじゃなさそうなのに。」 「君が普段どう思ってるのかよーくわかったぜ、城之内君。」 笑ってるようで笑ってない。心のなかで城之内くんに合掌した。 「べ、別に悪い意味じゃねえって!あ、いいよな。俺この曲が一番好きだ。」 「…それもいいけど、俺はこっちだな。」 「へぇ、結構コアだな、アテム。」 「そうか?こうなんていうか…切なげに篭められている感情にぐっときたというか…」 「あー!何かそれわかるぜ!」 いつの間にか2人、熱いファントークを繰り広げている。 2人の会話が嬉しくて、嬉しくて、思わず飛び上がってしまいそうだ。 よかったね。伝わってるよ、君の想い (どうかしたのか?相棒) (ううん!なんでもなぁい!ね、ボクも混ぜてよ) (おう!遊戯も一緒に語ろうぜ!) |