どこにでもいる君みたいな誰か
(臨→帝)



最初は半信半疑。
次は驚愕に昂揚。
じゃあ、その次は?


「最初は信じてなかったんだよね。よりにもよって、何でこんな普通のどこにでもいるような子がって。」
「不法侵入した挙句何をほざいてくれてるんですか。どうぞ、お帰りはあちらです。」

帰宅するとつい最近知り合ったばかりの折原臨也が部屋にいた。
あれ?鍵かけて出たよな?なんて思ってたら情報屋ですから。なんて返ってきた。
ぜひとも六法全書というものを読んでいただきたい。
そしてその角でしこたま殴られればいいのに。

「今、ものすごく失礼なこと考えてたでしょ。」
「あはは。まさか。」

愛想笑いを浮かべて電波なのになんで勘がいいのかなぁ、なんて考える。
それこそ、知り合って間もない友人でもなんでもない人間が鍵を開けて家に不法侵入している時点で現実逃避してもいいと思う。

「でさぁ、さっきの続きなんだけど。」
「…ダラーズの話でしたら以前にも言ったはずですが。」

始めはただのネタ。言ってしまえばネット上の冗談が発展したただの偶然の産物。

「まあ、それもあるんだけどさ。人間を愛するこの俺がどうして君みたいな子に特定の愛情を持っちゃったのかなぁって。」
「は?」
「あれ?わかんなかった?じゃあストレートに言うね。君の事あい…」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。もう失礼なこと考えませんからみなまで言わないでください!!」


知りたくなかった、そんな事実。


「大好きだよ〜帝人君。だから君も俺を愛してね。」
「全力で拒否していいですか。」






ギュッて抱き締められるのがいちばんスキ(静帝)



躊躇うのは…


恋人と2人っきりで部屋にいる。これが普通なら甘い雰囲気になってもおかしくないと思う。
いや、実際甘い雰囲気にはなっている……んだろうが、どうしても一歩が踏み出せない。

「静雄さん?」

小首を傾げてこちらを覗いてくる仕草が凄く可愛らしい。
誘ってるようにしか見えないのは恋人の欲目、というやつだろうか。
これが普通の恋人同士というやつなら抱きしめたり、キスのひとつもするのだろうが、なんというかどうしてもそれが躊躇われる。

「えい!」

悶々とそんなことを考えていたら急に体にかかる重み。

「!!?」
「大丈夫ですよ。こうみえて結構丈夫ですからそんな簡単に壊れたりしません。…静雄さんにギュッてしてほしいんですけど、ダメですか?」


上目遣いに見られたらこれはもう、誘ってるとしか思えないんだが。


俺の手が、君を壊してしまうこと。


「え、あれ?」
反転する視界。タイを外す静雄さんの姿。
「大丈夫、手加減してやるから。」
「(あ、明日学校行けないかも…!)」






あなたを信じることは、あなたに騙されることだった。(臨←帝)



「好きだよ。」

その言葉を信じた。

「愛してる。」

口付けが嬉しかった。





「あぁ、うん。もういいや。君に対する興味もないし、飽きちゃった。」

にっこりと笑う悪意の塊みたいな笑顔が今は憎い。
頭の悪い女の子じゃないから泣いて縋り付く、なんてことはしないけど。



本当は知ってたよ。睦言が全部、嘘だったことくらい。






きみ不足が深刻です(臨帝)



「帝人君帝人君帝人君…」
呪いの言葉のようにひたすらに自分の名を呼び続ける臨也に帝人は大きく溜息を吐く。
「…臨也さん、いい加減に離してくれませんか?」
帰宅後何故だかいる臨也に抱きしめられてからゆうに30分は経過していた。
何がしたいのかわからないまま思いのほか強い力でぎゅうぎゅうと締め付けられる。
「で、一体何がしたいんですか?」
「ん〜…充電中。」
「はあ?!」
「最近帝人君に会ってなかったし、チャットにも顔出してくれないし。帝人君欠乏症で死にそうだったんだよね。」
その言葉に帝人はまた大きく溜息を吐いた。
「…バカですか。」
「うん。帝人君バカ。」
開き直った、この変態!と内心で毒づく。
「…しょうがないですね…」


仕方がないから好きなようにさせておこう。



「…この手はなんですか?」
「ん〜、栄養補給。」
「(ちょっと優しくするとすぐつけあがる!!)」






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