【日記ログより】
突然ですが、小さくなりました。
「えぇ!?ちょ、どうしたの?!帝人君。」
「どうしたのと言われても朝起きたらこうでした。としか。」
ぺたり、と約16センチほどになった帝人が紅茶に乗ってる角砂糖で遊んでいる。
当然、合う服などないので臨也の妹であるマイルとクルリに適当なのを持ってきてもらう手筈になっているが、まだなのでタオルと静雄のリボンタイを巻いているのが現状だ。
「とりあえず、後で新羅んとこでも行くか。」
「そうしましょうか。」
砂糖で遊ぶのに飽きた帝人は今度はティースプーンに乗って遊んでいる。
「楽しんでるねぇ、帝人君。」
かちゃかちゃと金属音をさせて遊ぶ帝人の小さくなった頭を人差し指で撫でながら臨也は言う。
「楽しいですよぉ。たぶんもうこんな経験は出来ないでしょうから、とりあえず元に戻る時まで楽しまないと損でしょう?」
ちゃんとお二人が面倒見てくれますしね。
にこりと笑うと臨也も静雄もそれに答えるように両サイドからその頬に触れる。
「「もちろん。」」
こんな美味しい役目、誰にも譲るものか!
「きゃー!ミカ兄可愛い!」
「愛(かわいい)」
「あー、クルちゃん、マイちゃんいらっしゃい。」
「とりあえず適当に持ってきたよ。後また買い足しに行くから。」
「ありがとう〜」
「勧(おすすめ)…猫(猫の)…」
「そうそう、この猫耳フード付パーカーにジーンズ!絶対ミカ兄似合うって!」
「そうかなぁ。着てみるから貸して〜」
【じつは気になってたんです】
とてとてとて。
可愛らしい効果音が辺りに響く。
約10分の1に縮んでしまった帝人がテーブルの上を行ったり来たりしている音だ。
「…あー…俺がやるから無理すんな。」
「ダメです。働かざるもの食うべからずです。それから静雄さんたまに力入れすぎて箸折ったりするじゃないですか。今は店開いてないから却下です。」
と言って大きめのスプーンを抱えてまた行ったり来たり。
「出来たよ。」
そういって臨也が運んできたのはオムライス。
実は今日の夕食は帝人が作るつもりで材料を買っていたのだが、まさかの縮小が起きてしまったために臨也がそれを引き継いだのだ。
「こうしてみると臨也さんたちのオムライスはでかいですね。」
何気に瞳がキラキラしているのが可愛らしい。
「帝人君のもちょうどいいサイズにしてみたよ、どう?」
と、目の前に差し出されたのは普通のサイズの大体10分の1くらいのミニマムサイズのオムライス。
「凄いです!流石です!褒めてあげます!」
飛び上がらんばかりに喜ぶ帝人に2人は口元を抑えて悶えていた。
まぐまぐとオムライスを頬張る帝人に臨也と静雄は今後を話し合う。
「これからどうしようか。とりあえず交互で家に連れて帰るのは決定。服とか調度品はネットと双子に頼むでしょ、移動手段は…」
「あ、それならもう決めてあります。」
食べ終えたらしい帝人が2人の前に。どうやら小さくなった時から決めていたらしい。
「臨也さんのフードの中と静雄さんのポケットです!」
これは決定事項です!
(反論は許しません。)
【新セルのところに行ってみたよ】
「あれ?珍しいね臨也と静雄が僕のところに来るなんて。…帝人君がいないみたいだけど。」
珍しいこともあるもんだと新羅は思う。
あの高校生を溺愛してやまない2人が連れずにこうしているなどとは。
「こんにちわ、新羅さん。」
するとどこからともなくボーイソプラノの声が聞こえる。
どうやら件の彼はちゃんといるようだ。
「何だ、いるんじゃん。どこ?」
「あはは〜ここ。」
と言って臨也が己の後ろを示す。
臨也の背後に回ってみるが誰もいない。
「ここです。新羅さん。」
ぴょこんと臨也のフードの中から出てきたのはどう見ても帝人君。
ただし、10分の1くらいに縮んでいたが。
「………」
多分、5分くらい絶句していた。
「で、朝起きたら縮んでた、と。」
「そうなんですよ〜」
うるさい2人をリビングにおいて軽く問診を開始する。
本人に至っては特に気にしてはいないらしく、むしろ楽しんでいるようなのでストレスで状況が悪化することはないだろう。
「変なもの食べたりした?」
「いえ。料理をするのは僕か臨也さんですが何か入れたとは思えないですし。」
そんなことをすれば一発でこの少年の怒りを買うのは目に見えている。
その末路を知っているので何だか妙に納得できた。
「とするとウイルス性か何かかな。恐らく時間が経てば元に戻るとは思うけど、体調に変化が見られるようなら言ってね。出来れば採血させてもらえると助かるんだけど…」
「このサイズじゃ注射器なんてもっての他ですしね。カッターでもいいですけど量がたかがしれてます。」
「何よりそんなことしたら俺が2人に殺されるよ。」
「じゃ、最終手段ということで。ところでセルティさんは?」
「出かけてるだけなんだけど…」
すると丁度いいタイミングで扉の開く音と臨也の声が聞こえる。
「帰ってきたみたい。」
新羅の掌の上に乗ってリビングへ移動すると何やら臨也がセルティに突っかかっているようだった。
「臨也さん、あまり失礼なことばかりしないで下さい。」
「あ、帝人君おかえり〜。新羅に変なことされなかった?」
「死ね。」
「まったくですね。いつ死ぬんですか?」
「何このユニゾン!?」
『……み、帝人…?』
ついこの間まで160くらいあったはずの帝人が何故だか新羅の掌の上に乗るまでに小さくなっている。
目の前の光景にセルティは思いのほかパニクっていた。
「お疲れ様です、セルティさん。朝起きたら縮んでたんで、新羅さんに診てもらってたんです。」
新羅の手の上からセルティの手の上に移動する。
『大丈夫なのか?不便なこととかないか?』
「大丈夫ですよ。心配してくださってありがとうございます。」
「和むねぇ。」
「和むな。」
「で?どうだったの。」
「とりあえず、問診的には問題なし。何か変わったことがあったら連れてくるといいよ。」
「りょーかい〜」
何の進展もない日常。
「臨也さん、静雄さん。今日はセルティさんのところに泊まります。」
「えぇ〜!?」
「…!」
「文句でも?(にこり)」
「「イエ。」」
「(相変わらず見事な手綱さばきで。)」
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