「うわあ…!」

べたりと帝人が水槽に張り付く。
その目はとてもキラキラとしていて何時にもまして高校生には見えない。

「ありがとうございます、静雄さん!テレビで見た通りだ。」

水槽の中で無数の魚が泳ぐ様を一心不乱に見つめる帝人を眺める静雄。
どこに行きたいかという問いに水族館に行ってみたいと言われた時はどうしようかと思ったがこうも可愛らしい姿が見られるなら連れてきてよかったと思う。

内陸に住み、地元から出たことのない帝人は海はおろか水族館にすら言ったことすらない。だから目の前に広がる青の世界はテレビやインターネットで見るよりもずっとずっと衝撃的だった。
クリオネやラッコ、イルカ…
初めて見る生き物達はどれも愛くるしくてどれだけいても飽きないと帝人は思う。

「こっちきた!可愛いですね静雄さん。」

ガラス越しに寄ってきたイルカを見てその口元あたりに指をもっていくと心なしか笑ったような気がした。
嬉しくなって静雄の方を振り返れば顔を真っ赤に口元を抑えている。

「え、えとごめんなさい…はしゃぎすぎましたよね…?」

そこで初めて帝人は己の行動を我に返り顔を真っ赤に染める。
子供のような態度をとってしまったことが恥ずかしい。
きっと一緒にいて静雄にも恥ずかしい思いをさせてしまったに違いない。

「いや、いいんだ。存分に見ててくれ。」
「は、はい。静雄さんも一緒に見ませんか…?」
「おう。」






(言えるか、イルカなんかよりも帝人の方が可愛いだなんて!)



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