つり橋理論 「生理・認知説の吊り橋実験」によって実証されたとする学説。 生理・認知説は人は生理的に興奮している事で、自分が恋愛しているという事を認識するというもの。 ---フリー百科事典wikipediaより抜粋。 「なんだって、帝人君。」 「何をもって今、この状況でそんな話になってるか問い詰めたいところですが、とりあえず、離せ。」 「やっだ〜!太郎さんったら怖い!」 ケタケタと楽しそうに笑ってチャットの甘楽口調になる臨也に帝人はイラッとする自分を感じた。 殴りつけてやりたくなったが、今自分がいる状況ではそれもかなわない。 というのも、帝人は今、臨也に半ば強引に連れてこられた小さな雑居ビルの屋上の縁に臨也に抱えられて立っているのだ。 身じろぎひとつするだけで、まっさかさまに落ちてしまうくらいの細さ。 ここで暴れなどしたら間違いなく、帝人の体は重力に導かれるまま、地面に叩きつけられ、血と臓物をぶちまけて絶命するだろう。 下など見れるものではなかった。 「い、臨也さん…」 「ん〜?」 声を振るわせる帝人に臨也は呑気な答えを返す。 「…一体、何がしたいんですか…?」 帝人がそう問いかけると臨也はにんまりと笑った。 刹那、帝人の背筋を悪寒が駆け巡る。 怖いこわい恐いこわいこわいこわいこわい。 恐い恐い怖いこわい恐い。 帝人の頭の中はその言葉しかない。 「ねえ、今ドキドキしてる?」 「え、えぇ…ま、まぁ…」 強がってはいるが実際はドキドキなどというどころではない。 一歩間違えば落下という状況で、心臓がバクバクといっていて、冷や汗はダラダラだ。 「うん。それ、忘れないでね。」 「え?」 見えたのは臨也の楽しそうな笑顔。 次に襲ってきたのは浮遊感。 オ チ テ ル … … !? そう、帝人が認識出来たときにはもう、景色が逆さまに映っていて、嫌が応にも先程の所から飛び降りたのだとわかる。 正確には帝人を抱えた臨也が道連れのような形で飛び降りたのだが。 今の帝人にとってその事実を認識する暇などない。 (あぁ、僕死んじゃうんだ…) 覚悟して思い切り目を瞑ればぼす、という柔らかい感触。 思ったような衝撃は襲ってこず、痛みもない。意識もちゃんとある。 恐る恐る目を開けてみればどうやら大きめのマットに落ちたようだ。 「!!?」 何で、どうしてと驚いていると臨也がまた笑う。 「あはは、驚いた?ちょっとお願いしてね。業者にある時間にここに止まるように言っておいたんだ。」 ぱくぱくと金魚のように小さな口を開いて閉じてを繰り返す帝人に臨也は額に軽くキスを落とし、あっさりとネタばらしをする。 全部臨也が仕組んだことだと理解した瞬間、帝人は臨也に殴りかかっていた。 それを予期していた臨也はあっさりとその攻撃をかわし、バランスを崩した帝人の体をマットに押し付ける。 「ねえ、今のドキドキが恋にすごい似てるんだって。で、それを共有した2人はそのまま恋に発展する確立が高い。だからさ、帝人君。」 今度はリップ音をさせて唇を奪われる。 「もう、君は俺のことが好きなんだよ。」 そんな馬鹿なことがあってたまるか! (でも、ドキドキが治まらないのはまさか…!?) fin. |