「竜ヶ峰?」






どうして、この人はいつも僕を見つけてくれるんだろう。




















「こんにちわ、静雄さん。」
にこりと笑うと血相を変えてこちらへと向かってくる。
「ば、…っお前こんなところで何してるんだ…!?」
持っていた傘を僕のほうへ差し出し、己の服の袖ですっかり濡れ鼠になった顔を拭いてくれる。
「駄目です、そんなことしたら静雄さんまで濡れちゃいます。」
距離をとろうと腕を突っぱねるがびくともせず、あろうことか傘を放り投げて体を引き寄せられた。
「こんなに冷たくなって…!」
髪を梳く手が暖かく、抱きしめてくれる腕がいつも以上に手加減してくれている。
「…静雄さんの手、好きです。」
髪を梳くその大きな手に触れる。
「俺の手は壊すことしかできない。それでもか?」
「それでも、です。誰かにとっては壊すことでも、僕にとっては守ってくれる優しい手です。」


誰かに絡まれたとき。
落ち込んだとき。
喧嘩したとき。
嬉しいとき。
悲しいとき。
寂しいとき。


静雄さんの手は全部ぜんぶ優しかった。

「そんなことを言うのはお前くらいだ。」
ふ、と頭上で彼が笑う。
「僕以外が言ってたら困ります。」
というと本格的に笑われた。







離さないで。

(離れないで。)










「とりあえず、風邪引くから俺ん家行くぞ。」
「そんな。大丈夫ですよ。」
「好きなやつが冷たくなってるのを放っておけるほど俺は落ちちゃいねぇつもりだがな。」
「///(それはずるいです。)」





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