生まれてきてくれたことに感謝を。 |
その日、帝人は非日常のど真ん中にいた。
せっかくの休日だからと散歩に来た池袋でまず出会ったのは門田たちだった。
こんにちは。と声をかけたら遊馬崎と狩沢に詰め寄られ、相変わらず呪文のようなことをいわれ続け、最後に2人からオススメだという漫画と小説を数冊もらった。
「それ、凄くいいから今度感想聞かせてね。」
門田と渡草からはお疲れさまの意味合いでジュースを。
「悪いな、あの2人が毎回。」
「大丈夫です。」
門田さんが謝ることないのに、と、こういう所が彼は大人だと思う。
その次は撮影中の幽に会った。
スタッフに何か言って幽がこちらへやってくる。ファンの声援が凄かった。
「はい。」
そう言って渡されたのは少し大きめの紙袋。最近若者に人気のブランドのものだ。
「え、え…!?」
「…だってきいたから。」
「そんな、高価なものもらえませんよ。」
「俺の気持ちだから。」
周りからの視線が痛い。幽の気持ちも嬉しかったので素直に受け取ることにした。
『帝人!』
「セルティさん!」
仕事帰りだというセルティさんに会った。
『今日、…だって聞いたから。私と新羅から。』
渡されたのは携帯音楽プレーヤー。
「え、えぇ!?こんな高価なのもらっていいんですか?!」
『いいんだ。帝人が池袋に来て、私たちと出会ってくれたお礼とでも思ってくれ。』
「…セルティさん。」
セルティさんの優しさにおもわずジーンときてしまう。僕に出来る精一杯のお礼として、そのヘルメットの側面にキスをした。
「せ〜んぱい!」
青葉くんにも会った。
満面の笑みで駆け寄ってくる後輩の後ろに、はちきれんばかりに左右に振れる尻尾が見える。(ような気がした。)
「はい!先輩にプレゼントです!」
もらったのは抱き枕。相変わらず青葉君はよくわからない。
でも、なかなかに肌触りがよくて可愛かったのでありがたくもらうことにしよう。
「みっかどくーーん!」
…とてつもなくウザイ人に会ってしまった。
「ウザイなんて酷いなぁ。」
…読心術でも使ってるのだろうか、この人は。
「これでも情報屋の折原臨也は忙しくてね。はい。用件だけ失礼するよ。」
なまじ強引に押し付けられたのは綺麗にラッピングされた箱。
「俺だと思って大事にしてね!今度情報も1個だけならタダで提供してあげる。じゃ!」
何だか嵐のように去っていった。(その理由はすぐにわかるのだが。)
…物には罪はないよね。(ちなみに中身はシルバーのドッグタグだった。イニシャルがi.oと彫ってあって投げ捨てたくなったのは内緒。)
「い〜ぃ〜ざぁ〜やぁぁぁ〜!!!」
臨也さんと入れ違いに電柱を持った静雄さんが現れた。(臨也さんが足早に去っていった理由だ。)
「こんばんわ、静雄さん。臨也さんならあっちに行きましたよ。」
「おぉ。竜ヶ峰か。」
持っていた電柱を脇に刺した。電柱があんなに簡単に刺さるものだとは驚きだ。
「…?何だか大荷物だな。」
理由を話すと驚いた顔をされた。
「な…!そういうことは早く言え!あ〜…俺何も用意してねぇな…」
「気にしないで下さい、強請ってるわけじゃないですし。」
「ダメだ。そういうのは大事にしろ。……今度、飯奢ってやる。それでいいか?」
「…はい。」
それから、夜も遅いし大変だろうと荷物を持って家までおくってくれた。
「おっかえり〜!!!」
「お、おかえりなさい。」
部屋に帰ると何でだか正臣と園原さんがいて、クラッカーで出迎えられた。
「……」
「何だ、なんだ〜?テンション低いぜ、帝人くん。」
「まさか臨也さん以外に不法侵入されるとは思ってなくて。」
「扱い同列!?」
「ご、ごめんなさい!竜ヶ峰君…」
「あ、謝らないで園原さん。ちょっとびっくりしちゃっただけだから。」
荷物を玄関に置いて中に入るとテーブルに並んでいたのはケーキにご馳走。
「これは?」
「俺たちからのプレゼントだ!」
「え、とあの…すみません…」
正臣と園原さんが顔をあわせたかと思うと再びクラッカーが鳴る。
「「お誕生日おめでとう!!」」
キミが産まれて出会えた記念すべき日に精一杯の感謝を。
(おめでとうございます、竜ヶ峰君。)
(2人とも、ありがとう!)
(いいってことよ!さ、食べようぜ。)
fin.
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