ライト・スペース・マシンガンズ・オペラ





人生において、頬にあたる雨粒の数は決まっているらしい。
たたく鼓動も涙の量もみんなおんなじなんだと。

「茶番だ、」
「というよりは、……欺瞞?」
「いや、できるかできないかで言えば」
「得手不得手でなんとかなる話か?」
「だから滑稽なんだって、」
「我儘だな……、」

つまりは現状打開のための現実逃避をしようという話。
胸を打つものの数を数える前に雨粒を振り払え、
タイマイを手に入れるために銀行に正面から飛び込め、そういうこと。

「まったく、命がいくつあってもたりない」
「捨てる気もないくせに」

どうでもいいけどタイマイを手に入れるための資金調達ってなんだか夢がない。
懐疑的野心というか、…細心? 夢のための?



食卓の上には紫と黄緑の葡萄が1房ずつ。
つまりはロシアンルーレット。
最後の一粒を口にしたほうが正面切ってマシンガンをぶっ放す。
怯える人々の叫ぶ声が聞こえてくるようだ。
マスクを被って派手な音をたてながら女の歪んだ化粧を笑うんだ。
クラウン並みだ、まるでダリのような筆致、名画だ、って。

「馬鹿馬鹿しい…、」
「まあ言うなればこれらにシンメトリーはあり得るかって」
「ないよ」
「コインのほうが良い?」
「コインは駄目だ、裏表がありすぎる」

我儘だなあ、ほんと。
見る間に葡萄はもがれていく。ぶつぶつと途切れる音、
睨み合うでもなく飄々と過ぎていく時間、
ある意味完璧にシンメトリーなふたり。



それから、結論は出たのかって?

「何がしたかったんだ」
「ああ、腹いっぱい」
「お前には欠けてるものがありすぎる」
「感情のシンメトリー」
「馬鹿。人間としての光、闇、その他」
「銀行強盗はなかったことにしたじゃないか」
「阿呆、もう黙れ」

葡萄は紫と黄緑に一粒ずつ残った。
お互い、引きちぎるように毟って相手の口に放り込む。
最後の一粒は自分が食べようと決めていた、ふたりとも。

「逃避は良いが玉砕は不健全だ」
「どうして?」
「…お互い様じゃないか、」

その瞬間、
誰しもに等しく落ちるはずの雨がコンクリートにぶつかって砕けていた。








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