その日、入院中の少女、秋庭里香は尿意をこらえながら、静かに読書をしていた
もう少しで本を読み終わるため、完全に読み終わってからトイレに行こうと考えていたのだ
しかし、その考えが、後々彼女に悪夢を見せることなんて、このとき誰が気がついたのだろうか………
「ふぅ、あとで裕一に新しい本を借りてこさせないと………でも、その前に………」
ブルっと体が震える
そろそろ膀胱にためられる尿の量も限界が近いようだ
とはいえ、本はもうすでに読み終わったため、我慢することなくトイレへ行くことができるであろう
体を起こすと読んでいた本をベッドの上に置き、そのまま部屋の出入り口へと歩き始める里香
そして、その出入り口であるドアに手をかけようとした瞬間、そのドアが開いた
「あ、里香。どこかでかけるの?」
ドアの向こうに立っていたのはさっき本を借りに行かせようとしていた相手、戎崎裕一であった
里香にとっては思いを寄せる相手でもある彼に対し、トイレに行きたいという気持ちを伝えるのは乙女心が許してくれそうにない
何とか、ごまかそうと考えた
「べ、別にそうじゃなくて、廊下で物音が聞こえたから!」
「………? そうなんだ」
一瞬、変な目で見られた気がするが、トイレを我慢していることがばれるよりはよほどましだと考える
「そうそう、実は面白いことがあってさ、この間病院を抜け出して………」
楽しげに話す裕一にトイレのことを悟られぬべく、普段のように布団に入り、上半身のみ出した状態で裕一の話を聞く里香
しかし、裕一の話が耳に入るはずもなく、必死にトイレに行くことを悟られず、トイレに行く手段を考えていた
一つ目のアイディア、機嫌が悪いフリをして、裕一を退散させる………という考えにたどり着く
「………つまらない………」
「………え?」
裕一の表情が少し間抜けっぽく見え、笑いたくなるのを堪えつつ、機嫌の悪そうなフリを続ける
「そんな詰まんない話をしにきたの? 私は忙しいの!」
実行してこのアイディアはあまりいいものだと思えないと気づく里香だが、もう後戻りも出来ない
そんなことを考えていた矢先、裕一の口が開いた
「じゃあ、この話は?」
「………え………」
そして始まる他愛もない話
他のアイディアを考えながら、必死に聞き流す里香
しかしなかなかいい案が浮かばない
「………っていうことなんだ」
「………」
そろそろ話が終わるであろうという期待をして里香は裕一を見つめる
「で、面白いのはここからなんだけど………」
だが、その期待はことごとく破られた
しかし、ちょうどその瞬間、いいアイディアが浮かんだ
「………裕一、続きはあとでいいから、これを返してきて、これの作者の本、適当に借りてきてくれる?」
「え? 何で急に………」
「いいから! 文句言わない!」
本を手渡すと、裕一が出て行ったのを確認してため息を吐く
が、同時に尿意の波が里香の体に襲い掛かった
(は、早くトイレ行かなきゃ………)
と思った矢先にまたドアが開く
今度は病院の看護師だった
「点滴を交換する時間ですよ」
「は、はい………」
バッドタイミングすぎると思いつつも、こればかりは仕方がない
さすがに裕一だってそこまで早く帰ってくることはないはずである
文句を一切言わず、早く点滴を変えてしまおうと、里香は考えた
ちくりと針が変えられると看護師は他の患者の元へ行くために里香の病室をあとにする
一方里香の尿意はほぼ限界まで達していた
布団の上から股間を必死に押さえつけ、その生理現象を無視しようとするが、もちろん無視することなど出来るはずがない
(ほ、ほんとに早く行かないと、もう………)
ベッドから起き上がろうとした瞬間、また病室のドアが開いた
「ごめん里香、図書館、今日休みみたいで………」
「そ、そうなの………?」
裕一だった。
どうやら、図書館が開いていない日だと言う事に途中まで行ってから気づいたらしい
里香にとって、これ以上もない絶望が襲い掛かる
「それじゃあ、これはここにおいておくよ」
「う、うん、ありがと………」
布団を出来るだけ体にかかるように引き上げ、股間を手でぎゅっと押さえつける
もしかしたら、この動作を裕一に気づかれているかもしれないと思うと、どんどん恥ずかしくなってくるが、ここまで跳ね上がった尿意を抑えるすべはもうこのくらいしかなかった
気がつくと、裕一の話は再度始まっており、当分終わる気配もない
だんだん体勢も前のめりになり始め、里香自身が気づかないうちに小刻みに震えてしまう
「………里香、大丈夫? もしかして具合が悪いとか?」
そんな里香の顔を、裕一が心配そうに覗き込んだ
「だ、大丈夫! 少し寒かっただけ!」
覗き込んできた裕一の顔が近かったこともあり、里香は顔を赤くしてその言葉を否定した
が、その瞬間、里香の白いショーツの中央部分に薄い黄色の液体が少しだけ漏れた
(あ、だ、ダメ!)
股間を押さえる手に力が入り、何とかショーツを湿らす程度で押さえることに成功する
しかし、もう本当に限界がきている事を悟らされる羽目になる
なんとしてもトイレに行かなければ………
「ゆ、裕一、ちょっとのどか沸いたから水飲んでくるね」
何とか病室を後にするため、思いついた部屋を出る理由を裕一に言ってみるが
「具合悪いなら休んでたほうがいいよ。水は僕が持ってくるから」
軽く返されてしまう
そして、裕一は病室を出て行った
だが、部屋から裕一がいなくなった今が最後のチャンスかもしれない
(早く、行かなきゃ………)
しかしここまで尿意が跳ね上がると、もはや移動することも難しい
ベッドから起き上がろうとしただけで下半身に尿意の波が襲い掛かる
もはや一刻の有余もない
ベッドから立ち上がると病室のドアまで歩こうと1歩目を踏み出した、瞬間だった
「はい、里香! 起きたらダメだってば」
いつもはのろく見える裕一が、今日に限って一段と早く感じる
そんな錯覚を感じながら、里香は自分の失敗に気がつく
裕一の手に握られていたのはペットボトルのお茶であった
もうすでに尿意は限界なのに、こんなものを飲めるはずがない
だからといってこれ以上のアイディアも浮かばない
「ほら、里香。 ちゃんと寝なきゃダメだよ」
優しく問いかける裕一に、里香はある決心を固めた
もうこれ以上は我慢できるはずがない
彼の前で漏らすくらいなら、真実を言ったほうがましだ
「………あ、あの」
「なに?」
顔に血が上って行くのがわかる
裕一は少し心配そうに里香の顔を覗き込んでいる
「………と、トイレに行きたくて………」
………沈黙
しばらくして、裕一の口が開いた
「も、もしかしてずっと我慢してたの?」
「そうだよ! 何で気づいてくれないの!? 裕一のば………」
そこまで叫んで里香の下半身を大きな波が襲う
それに耐えるためにも、里香は内股になり、股間を押さえる
「り、里香、歩ける?」
「………ま、まって………い、今動いたら、で、出ちゃう」
里香の顔がどんどん赤くなっていく
やっと波が収まり始めた頃に自分の行った行為、そして自分の言った言葉に気づきさらに顔が赤に近づく
「じゃ、じゃあ、僕は待ってるから、早く………」
「………」
裕一も顔を赤くして明後日の方向を見ている
里香は今度こそ歩き出して病室のドアを開けようと、股間から手を離した
その瞬間、今まででも最大の尿意の波が里香の体に襲い掛かった
(だ、ダメ!!! い、今出たら………裕一に………見られちゃう………!!!)
必死に股間を押さえてその場から動かなくなった里香を心配して裕一が駆けつけ、何かを言っている
しかし、里香はそれどころではなく、自分の尿意を抑えることしか頭になかった
そして、ついに………
「………いで………」
弱弱しく、里香が口を開いた
「………え?」
「みないで………裕一、見ないで………」
顔を赤くして必死に訴えた
限界を超えた尿は里香のショーツを突き抜け、パジャマを濡らし足を伝いながら床を目指し流れ出た
勢いがつき始めるとパジャマをも突き破り、直接床部分に向かって一筋の線となった
そして、里香の立っている病室の床の部分に、水の音が響く
「里香………」
「やだ………見ないで、裕一の、ばかぁ………」
泣きじゃくりながらも、流れ始めた水流は止まらない
限界以上に我慢していたおしっこは床をどんどん水溜りに変えていく
そして、どれほどの時間がたったのだろう
やっと長かったおもらしが終わり、里香はそのまま泣き続けた
「か、片付けたほうがいいよね………」
裕一が、優しく声をかけたが、里香は聞く耳を持たずに泣きつづける
「と、とりあえず、これ、拭くから、里香は着替えたほうが………」
「う、うん………」
そして、長かった地獄が終わりを告げた




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