悪友は伊勢の一般的な住宅に住んでいた。
奴にしては地味な家だと感じたが、ああ見えて
あいつは中身に凝るタイプでもあった。
呼び鈴を鳴らす。小気味良いインターフォンの音のあと、静寂が続く。
おかしい、電気は付いているし、人の気配もするのに。
人付き合いが嫌いな奴だったから、新聞か宗教の勧誘だとでも思って
居留守を決めこんでいるつもりかもしれない。
ぴんぽーん
もう一度鳴らしてみる。すると奥の方から同時に二人の人間の声がした。
「はぁ〜い」
「小夜子待て!」
上機嫌な若い女の声と共に悲痛な夏目の叫びが響く。
ガチャ
扉を開けたそこに立っていた女は、確かに樋口小夜子だった。昔のままの。
「え、と。なんでそんな格好を……?」
「あ、これは吾郎くんのしゅm」
「イヤイヤ待てよ!再会の挨拶も無しにいきなり核心かっ!」
「吾郎くん、他にもメイドさんとか巫女さんとか大好きで、
患者さんの女の子にも贈ってるの」
「夏目……おまえってやつは……」
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