小ネタ
「裕一、『チャタレイ夫人の恋人』って本知ってる?」
「いや、知らない」
「やっぱり勉強してないんだねぇ……
まぁとにかく、その本を借りてきて欲しいんだけどいいかな?
私は明日用があって、自分じゃ行けないの」
「ん‥‥別にいいけどさ……」
「フフ……不満そーだね?」
「い、いや別に」
「じゃあ、よろしくね。 『チャタレイ夫人の恋人』を」
「…………」
(里香がニヤニヤしながら僕に何か頼むときって、ロクな目に遭わないんだよなぁ……)
翌日、里香に言われた通り、
図書館に『チャタレイ夫人の恋人』を借りに行く裕一。
本を探すのが面倒で受付のお姉さんに聞くことに。
「すいませーん、
『チャタレイ夫人の恋人』って本、置いてありますか?」
「ええ……ちょっと待って下さいね。
受付のお姉さんは端末で検索して、本があるか調べてくれた。
「……ありましたよ」
「ありがとうございます。 じゃあ借ります」
「あの、でも……この本……」
「何ですか?」
「猥褻な表現が作中あるという事ですが、年齢から見ても大丈夫ですよね‥‥?」
「えっ‥‥!? ちょっとぉ! そ、そんな本だったのか〜〜‥‥‥!!」
「………………借りますか?」
「か、かります………」
「ほら里香、『チャタレイ夫人の恋人』、借りてきてやったぞ………?」
「あっ……! ふふふっ、ありがとね裕一‥‥」
「………里香は意地悪だな」
「なんの事?」
「この本のおかげで俺は受付で恥をかいたんだぞっ?」
「‥‥‥なに言ってるのよ裕一? 私は一作でも多く有名な作品を読みたいだけよ」
「はぁ―――……‥‥まぁでも、いいっか………」
「で、この本ってどういう話しなんだ?」
「確か……昔のイギリスが舞台で、主人公は結婚してる貴族の女の人よ。
その人の夫が戦争の怪我で不具者になっちゃって――」
「ちょっと待った」
「なによ?」
「不具者って何? 俺は里香と違ってボキャブラリーが無いからわからないんだよ」
「それは‥‥その‥‥この場合は」
「なに?」
「……が、出来ない人」
「ん……何が出来ないのか、聞こえなかったんだけどなぁ〜?」
「……バカッ! 裕一のスケベッ!
にやにやして聞き返さないで、辞書でも引けっ!!」
「わかったわかった里香! そんなに顔赤くすんなよ!? 冗談だって冗談!
だ、だから広辞苑を凶器にするのはっ! やめっ!」
里香と裕一の喧嘩の様子が、壁越しにわかった里香ママ
「……また、里香と裕一君はにぎやかねぇ……まるで私とお父さんの若い頃みたい」
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