みんなちょっと聞いてください。
いじめられっこも、浮浪者も、気狂いも、犯罪者も、お母さんから生まれた人はみんな聞いてください。
いま苦しい人。絶望してはいけません。あなたの苦しみはいずれあなたの力になるでしょう。いま苦しめば苦しむほど、その先に用意されている喜びは大きなものになります。
無気力で何もできない人。いまは休むときなのです。いくらでも心ゆくまで休息をとって、それからまた歩きだせばいいのです。大丈夫、みんな待っていてくれます。
誰にも理解されない人。気を落とすことはないのです。みんながあなたを理解できないのは、あなたがみんなより優れているからです。いまはさみしくても、いつかはあなたを理解し、愛してくれる人が現れるでしょう。
罪を犯してしまった人。あなたの心は汚れてはいません。あなたが罪を認め許しを請うことによって、その罪は償うことができます。遅すぎることなど何もないのです。
というのは残念ながら嘘です。
そんなことが本当にあると思いますか? 本当に信じているのですか?
知らないのですか? 本当はあなたもわかっているのではないのですか?
絶望しなさい。あなた方の苦しみがむくわれることはありません。あなたが苦しめば苦しむほど、未来はもっと苦痛に溢れたものになります。みんなはそれを笑って見ているのです。わかっているのでしょう?
死になさい。何もしないあなたは生きていても何の価値もありません。誰にも迷惑をかけていないなんて思ってはいけません。あなたが生きていることが汚いのです。わかっているのでしょう?
殺しなさい。あなたは理解されています。あなたがあまりにも愚かだから、みんな目をそらしているだけなのです。あなたを愛する人なんていません。あなたの病が移ることを嫌って、みんな去ってゆきます。わかっているのでしょう?
地獄に落ちなさい。あなたの汚れはもう取り返せません。過去は変えられません。何をしても償うことなどできないし、清い自分を取り戻すことなどできないのです。わかっているのでしょう?
いじめられっこでも、浮浪者でも、気狂いでも、犯罪者でもないと自分のことを思っている人。あなたがたはもうどうしようもありません。
あなたがたはみんなそうです。いじめられっこで、浮浪者で、気狂いで、犯罪者です。お母さんはあなたを生んだことを後悔しています。生まれてこなければよかったのです。あなたの未来は苦痛です。あなたは社会の屑です。あなたはただの馬鹿です。あなたは鬼畜です。
どぶの水を啜るのです。砂を食うのです。紐で括られるのです。踵で蹴られるのです。
笑われています。蔑まれています。憎まれています。諦められています。
あなたがたは犬です。奴隷です。塵です。糞です。あなたに理性はありません。檻に閉じ込められています。あなたの瞳は濁っています。醜くゆがんでいます。
あなたは人から愛されません。あなたは貧しいままです。あなたは人を不幸にします。病に冒されています。みんなはあなたを許しません。あなたの望みはかないません。
あなたは、もうどうしようもありません。
いじめられっこも、浮浪者も、気狂いも、犯罪者も、みんな私についてきなさい。どうしようもないあなたがたは私の下に来なさい。私に従いなさい。
いじめられっこで、浮浪者で、気狂いで、犯罪者で、どうしようもないあなたがたは私の後に続くのです。母親から生まれた人はみんな私のところへ来なさい。
私に忠誠を誓いなさい。私を愛しなさい。私の下僕になりなさい。私の顔を見なさい。私はそれを許します。
私が、あなたがたを許します。
あなたが誰なのかは、私にはわかりません。
©有賀冬馬 2007