むすんでひらいて


 

  ある時、僕は小説を書こうと思いました。
  以前から、僕は小説をよく書いていたのですが、また書こうと思ったのです。
  ではどんな小説を書こうか、と考えました。そういうことを考えたときに、ふと思い出しました。世の中には「私小説」というものがあるのです。「私小説」というのは、小説の主人公が自分なのです。自分というのは作者のことです。作者が自分自身を主人公にして、自分の身の回りであったことや考えたことなどを書いていくのです。
  しかし私小説といっても小説であり一個の作品であるわけですから、それなりに脚色や誇張もしてあります。ただの日記ではないのですから、多少なりとも芸術性とかエンターテイメント性とかを求めるのであれば、それは然るべきことです。つまり、まあ仕方がないというか当然のことながら、私小説には多少の嘘も混じっているらしいのです。作家といえど人間ですから、人に知られるとまずいことや恥ずかしいこともあるでしょう。そういう意味でも、私小説がすべて本当のことだと思ってしまうのはたいへんに危険なことです。もちろん、大半は本当にあったことだからこそ私小説なんですけど。
  で、じゃあ、私小説というものを僕も書いてみようじゃあないかと思いました。
  書きました。
  その、僕が書いた私小説は以下のようなものです。まあ、この私小説は全部が全部100パーセント混じりっけなしのほんとなんですけど。



 ある時、僕は窓辺に座って青い空を眺め、来たりつつある夏の匂いが風に混じっているのを味わっていた。近くの梢では小鳥がさえずっている。太陽は暖かくて、そのままそうしていると、ついうつらうつらとしてしまいそうになる。
  ところで、僕が座っている窓辺には椅子があり、僕はその椅子に座っているわけなのだが、その椅子の前には机が置いてある。机の上にはちり紙とか灰皿とか、細々としたものの他に、パソコンのモニターとキーボードと、マウスが置いてある。つまり、僕は窓辺の椅子に座りながら目の前にある机の上でパソコンを操作することができるというわけなのだった。
  初夏の薫りに身を任せて休日のひとときを過ごすのもそれは素晴らしいことに違いはないのだが、そのままだと僕はやがて心地よさのあまり眠ってしまいそうだったので、何か行動をすることにした。
  僕はパソコンの電源を入れ、インターネッツにアクセスした。インターネッツはとてもよい娯楽であり暇つぶしの道具だ。
  インターネッツサーフィンをしばらく楽しんで、僕はふと思い出した。そういえば僕はブログというものを持っていたのだ。ブログというものは何だろうか。ブログというものはインターネッツ上で公開する日記のことである。
  日記というとなんだか秘密のもので他人には見られたくないものであり、かつ自分の身の回りのことしか書いていないので他人が見てもたいして面白くないというイメージがあるのではないかと思う。
  だがインターネッツ上で公開されている日記であるブログというもののイメージはそれとは少し異なっている。それは他人に見られるために書く日記だ。コラムやエッセーを思い浮かべてみてほしい。コラムやエッセーほどきちんとしたものではないが、インターネッツ上で公開されている日記であるブログにはそういう側面があるのだ。
  いまやごくごく普通の人々がたくさんたくさん、インターネッツ上にスペースを確保してブログというものを公開している。ぼくもそのたくさんたくさんの人たちの一人なのであった。
  そこで僕はそのインターネッツ上に確保してある自分のスペースにアクセスして、自分のブログをひとつ更新してやろうと思った。更新というのは日記を新しく書くことである。
  どんな日記をかこうかなあ、と僕は考えた。ただの日記なら自分の身の回りのことや考えたことを好きなように書いていけばいいのだが、これから書こうとしているのはインターネッツ上に公開されている日記であるブログだ。みんなに見られるのだ。そこのところはちゃんと考えなければならない。
  僕はいい考えが浮かんだ。そうだ、こういう日記を書いてやろう。
  その日、僕が書いた日記というのは、以下のようなものだ。



  5月8日
  みなさんこんにちは。
  おげんきですか。ぼくはとても元気です。
  僕はこの前、なんだかとっても不思議な夢を見ました。なんだかあんまりにも不思議でへんてこな夢だったので、目が覚めたあともしばらくぼうっとしていました。実はいまも体とアタマがふわふわして自分というものがよくわからない感じです。どうしましょうか。
 ちょっとあんまりにもよくわからない夢で、まだ僕もちょっとかなり混乱してしまっています。
  とりあえずその夢をここに書きますね。かなり長いのでめんどくさいかたは読みとばしちゃってください。もしぜんぶ読んだ人で、この夢がいったいどういう訳なのかわかる人はコメントを残してくださるとありがたいです。
  もしかしたら、話にするととっても単純な夢なのかもしれません。体験した本人にとってはわけのわからないことだけれども、第三者からみたらとっても簡単なことだった、なんていうのはよくある話ですから。
  じゃあ書きますね。
  僕のみた夢っていうのは、こんな夢です。


  夢の中で、僕は大学生でした。今はもう僕は大学を卒業して大学生ではなくなっているので、それだけで夢だということがわかります。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいました。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていました。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのです。とても楽しい宴会でした。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がりました。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話をしていました。
  でもそれは夢なのです。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言いました。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中ですので僕にはよくわかりません。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのです。
  それはこんな話でした。


 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、あ、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。


 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は大学生だった。僕はまだそのとき大学生ではなくて小学三年生だったので、それだけで夢だということがわかる。
  大学生じゃないはずなのに大学生の僕は、友達の部屋にいた。その部屋には、僕の友達が五人くらい集まっていた。みんなでお酒を飲んだり、麻雀をしたりして遊んでいるのだった。とても楽しい宴会だった。
  夜も更けてくると、みんなお酒が回っていい気分になり、女の子の話やアルバイトの話で盛り上がった。ゼミのあの子がかわいいだとか、バイト先にこんな嫌な上司がいてさ、とか、みんなで話していた。
  でもそれは夢なのだった。夢の中の僕は、みんなに向かって、「ちょっと聞いてくれよ」と言った。
  なぜそんなことを言ったのか、夢の中だから僕にはよくわからない。でも夢の中の僕は「ちょっと聞いてくれよ」と言った後、みんなに長い話を語り始めたのだ。
  こんなふうに。



 なんだか、何でもないことがきっかけでふと昔のことが頭に浮かんでくることってない?  たとえばコンビニで立ち読みしてるときとか、何気なく道を歩いてて空を見たときとか、ほんとに大したことじゃない、なんでもないことがきっかけで、今まですっかり忘れてた子供時代のことが頭に浮かんでくることって、ない?
  いや、デジャヴじゃない。あれとはまた違う感覚なんだけどさ。白昼夢っていうのともなんか違うんだよ。
  そうだなあ、匂いで思い出すのが一番多いかなあ。たとえば、ほら、学校のプールってすごい塩素の匂いするじゃん。で、大人になってから全然関係ないところで塩素の匂いを嗅いだりすると、学校のプールの匂いだ、って思うの。プールの匂いだけじゃなくて、景色とか、水の中の感覚とか、そのとき好きだった女の子のことまで一気に頭に浮かんじゃうんだよ。そういうのってないかな?
  そう。それでさ、こないだこんなことがあったんだよ。ここからが本題。
  一週間くらい前かなあ。原付乗ってたんだよ。あの、大学行く途中の、広いけど車のあんまり通らない道。そう、橋に続くとこの。
  で、原付乗ってるときに、さっき言ったみたいなのが、いきなり昔の事が頭に浮かんでくる、っていうのがきたんだよ。そのときもやっぱりなんかの匂いがしたと思う。
  でも変なのは、その記憶はたしかに昔の僕のことなんだけど、どう考えてもそんなはずないんだよ。そんな記憶が僕の中にあるはずない。僕がそんな体験をしてるはずがないんだ。おかしいんだ。
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  ああ、ごめん。じゃあその記憶、頭に浮かんだ記憶がどんな記憶だったかって、細かく話すよ。長くなるけど、いいかな?



  そこは畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだったと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  そのうちに僕は眠りに落ち、とても不思議な、長い夢をみた。



  夢の中で、僕は坂道を下っていた。その道はどこまでもどこまでも下っていて、最後のほうはまるで巨大な穴の中に降りていくような感じだった。僕は大して急がずに、でもきっちりと一歩ずつその穴の中へと降りていった。
  歩きながら僕はいろいろなことを考えた。昔のこと、今のこと、未来のこと。僕のこと、他人のこと、僕じゃない僕のこと。この穴のこと、この穴の中のこと、この穴の外のこと。
  上を見ると空が見えた。空は青かったが、そのむこうには無限に深い大宇宙がどこまでも続いているのだった。どこまでも深く、底無しの宇宙が。この穴のように。
  この穴がもし本当に底無しで無限に続いていくのだとすれば、そこを降りていっている僕はまるでブラックホールに吸い込まれているようなものじゃないか?  と僕は思った。
  永遠に続く落下とは、言い換えれば無重力状態のことだ。宇宙飛行士は落下する飛行機のなかで無重力状態に慣れる訓練をするのだという。
  僕という自我が内側に向かって落ち続けて、落下感が無重力に変わるほどの時間がたつのならば、それはつまり僕にとって僕という自我が存在しなくなってしまうということではないだろうか。
  そのようにとりとめのない考えはどこまでも続く。歩きながら自問自答を繰り返す内に、僕の思考は形を無くしていくのだった。
  まるで白昼夢をみるみたいに、思考は場所になり時間になり人物になった。
  それでも足は穴の深くへと進む。
  歩きながら、僕は夢の世界に落ち込んでいった。
  こんな夢だ。



  夢の中で僕がいる場所は畳敷きの部屋で、ベランダに通じる大きな窓があった。僕はその窓際に布団を敷いて寝ていた。寝ていた、といってもそれは姿勢だけのことで、眠りについていたわけではなかった。眠ろうとしてはいたが、なかなか眠れなかった。
  たぶん小学生の低学年くらいだと思う。夏だった。窓の向こうに見える夜空は静かだったが、遠くのほうで繁華街の明かりが瞬いているのがうっすらとわかった。虫の声はしない。
  僕の隣には高校生か大学生くらいの女の人が寝ていた。女の人は腕を立ててその上に頭を乗せ、横になって僕を見ていた。
「お父さんは?」
  僕は言った。今夜はもう何回も同じことを聞いているのだった。
「今夜は帰らないの。先におやすみなさい」
  女の人も、今夜何度目かの同じせりふを言った。
  何故かお母さんのことを訊ねようという気にはならなかった。訊いてはいけないことのような気がしたのだ。
  女の人は僕が眠るまで僕を見ているつもりのようだった。僕は目を閉じ、眠ろうとした。女の人が僕の顔を見ているのがわかった。
  視線が気になったが、僕は早く眠らないと女の人が困るということを知っていたので、我慢して目を閉じてじっとしていた。
  だがやはり眠れずに、僕はもう一度目を開けて女の人の顔を見た。
  女の人は言った。
「眠れないの?」
  僕はうなづく。
「じゃあ、お話をしてあげようか。どんなお話が好きかな?  私小説の話、ブログの話、不思議な夢の話、大学の友達と宴会をする話、匂いで記憶が呼び起こされる話、穴に落ちていく話。さあどれがいい」
  僕は首を振った。どんなお話も聞きたくなかったのだ。
  女の人は少し困ったような顔をした。
  僕はいった。
「お話は、僕がするよ」



  僕はよく小説を書く人で、インターネッツ上にブログを開設していて、変な夢を見て、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、大学生で、匂いで記憶を呼び起こされて、布団の中で女の人に寝かしつけられていて、穴の中に降りていって、あなたに寝かしつけられていて、あなたにお話をするんだ。
  でも僕は小説を書き終わって、インターネッツ上のブログは公開し終わって、変な夢は醒めて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、大学を卒業して、記憶は忘れてしまって、布団の中で目を開けて、穴の中から這い出して、あなたは僕を寝かしつけることはできなくて、あなたにするお話はこれで終わりなんだ。



  布団の中で僕が話し終わると、女の人は眠っていた。
  さっきまで夜空のむこうに見えていた繁華街の明かりも、今ではほとんど消えてしまって、あたりには虫の声がきこえていた。
  僕は立ち上がると、自分の布団を女の人にかけた。
  そうして、その寝顔をいつまでも眺めていた。



  白昼夢から醒めると、僕は立ち止まった。ふと、嫌になったのだ。
  もうだいぶ歩いていた。相当に深いところまで降りてきてしまっている。太陽の光は届いてこず、あたりはジメジメとして空気がとても悪い。
  僕は少し考えた後、回れ右をした。今度は上に向かって歩きだす。
  ゆっくり降りるよりゆっくり登るほうが大変だった。でも僕は一歩ずつ踏みしめるように、穴から少しずつだが確実に這い出していった。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って僕は語り終えた。みんなは、へえ、と言った。正直いってあんまり興味がなさそうだった。まあいい。
  僕はコップに酒を注いで飲んだ。
  友達の一人が煙草に火をつけた。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるため、僕はもう一度麻雀をやることを提案した。



  そんな夢を見ていた。
  僕が目を覚ますと、女の人はもういなかった。
  窓の外が明るかった。雀が鳴いている。となりの部屋から朝食を作る物音が聞こえていた。
  僕は布団から出て、朝日に向かって伸びをした。



  そんな記憶なんだよ。おかしいだろ?
  僕には姉はいないし、父親は自営業だからいつも家にいて、夜帰らないなんてことはなかった。だから子供のころにあんな体験をしているわけがないんだ。
  でも、なんだか、確かにあれは僕なんだっていう気もするんだ。女の人に話をして、夢を見て、穴に降りようとして引き返して、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見て、変な記憶を思い出して、みんなに話をして、夢を見ていたのは。
  確かに変な記憶なんだけど、なんだかすごく懐かしいような、嬉しいような、そんな感じがするんだよなあ。



  そう言って、僕は語り終えました。みんなは、へえ、と言いました。正直いってあんまり興味がなさそうでした。まあそれは仕方ありません。
  僕はコップに酒を注いで飲みました。
  友達の一人が煙草に火をつけました。
  少し気まずくなった雰囲気を和らげるために、僕はもう一度麻雀をやることを提案しました。



  僕のみた夢っていうのは、こんな夢でした。
  ちょっとあんまりにもよくわからない夢で、まだ僕もちょっとかなり混乱してしまっています。
  もしかしたら、話にするととっても単純な夢だったのかもしれません。体験した本人にとってはわけのわからないことだけれども、第三者からみたらとっても簡単なことだった、なんていうのはよくある話ですから。
  ではまた。



  僕はインターネッツ上に公開されている日記であるブログを書き終えると、マウスを動かして更新ボタンをクリックした。僕のパソコンの中にあったデータがインターネッツ上に確保した僕のスペースにアップロードされる。
  コメントがつくとしても、まだ時間がかかるだろう。僕はパソコンをシャットダウンして、モニターを消した。
  なんだか疲れていた。これまでになく長い日記だったので、書くのにも相当の時間がかかってしまったようだった。
  外はもう夕暮れだった。
  僕は心地よい疲れに身を任せて、優しい赤紫色に変わってゆく空を窓辺から眺めていた。このまま眠ってしまってもいいかと思えてきた。



  以上が、僕の書いた私小説です。
  この私小説は100パーセント混じりっけなしのほんとなのですが、こう書いているこの文章もやっぱり私小説の一部なので、もしかしたら嘘や誇張が混じっているかもしれません。でもそれはやっぱり多少なりとも芸術性とかエンターテイメント性とかを求めるのであれば、それは然るべきことなのです。
  でもまあ、やっぱりこの話は100パーセント混じりっけなしのほんとなんですけど。




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©有賀冬馬 2007/5

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