「さぁ。一緒に行こうぜ、明日香。」
漸く、自分だけに差し出された手。離さない。…離すものですか、絶対に。
ずきん、ずきん、と脈打つ痛みに十代は意識を浮上させた。
「っ、う・・・。」
「十代!起きたのね。…大丈夫?」
「明日香…?」
目に入った明日香の白い制服に、何故か違和感を覚えた。
…どうして。彼女は光の結社の一員なのだから、当たり前だろう。緩く首を振って、違和感を振り払う。
「…俺…?」
「あの後、倒れたのよ。…どこか、痛いところは?」
再び首を振って、大丈夫だと伝える。少々不服そうな顔をしながらも、そう、と明日香は一応納得したようだった。
1年ぶり、だろうか。再会した、双子の兄。
『…それは本当に、お前が望んで決めたことか?』
脳裏に蘇る、彼の言葉。突き刺さるような金色。どうして。どうして覇王は、あんな事を言ったのだろうか。
漸く自分は、力を手に入れたのだ。それは己の為でもあり、覇王の為でもあった。
成長した自分を、褒めてくれると思った。なのに、当の兄にそれを全否定されたのだ。
「…どうして覇王は、あんな事言ったんだろう…。」
「十代?」
「俺、強くなったのに。…覇王はもう、俺の事…いらない、のかな…。」
常の彼らしくない、訥々とした口調。影を帯びた琥珀に、明日香の心がざわめく。
(…私では、駄目?)
(あの時差し出してくれた手は、本物でしょう?…なら、)
どろどろした想いをぶちまけそうになるのを、ぐっとこらえる。
斎王は言っていた。十代は今、とても不安定になっているのだと。ここで下手に彼を刺激するのは、良くない。
あの覇王とやらの付け入る隙を、広げさせるだけだ。
そっと、包み込むようにして抱き締める。
幼子をあやすように背中を撫ぜると、彼は安心したように身体の力を抜いた。
「…大丈夫よ、十代。」
「あす、か…?」
「お兄さんは、光の結社の事をまだ良く知らないだけ。教えてあげればいいのよ…私にしてくれたように。ね?」
そうだよな、と小さく頷く。そう、貴方の力があれば容易いこと。
その力で、全てを照らして。世界を光で染め上げて。
そうして出来上がった世界で…叶うなら、貴方の隣に置いて欲しい。
ブラウザバックで戻ってください。
あとがき。
いろんな方から催促されまくったのでホワイトガッチャ続き。まさかの明日十のターン!
このシリーズ的には光の結社に入ったのは十代、万丈目、明日香の順番。で、明日香とデュエルしたのは十代。(ほんとはじょめだけど)
本編ではサンダーは斎王とデュエルしてたけど、ここでは十代とデュエルしてるんじゃないかなぁ。(そんな投げやりな)
いろんな人を魅了してしまえばいいと思います。…はっ、本編とやってること変わんねぇ!wwww
(2008.05.15)