あの日から、棘が刺さったときのような違和感は消えない。
彼の声が、聞こえない。




結局覇王がデュエルアカデミアに到着したのは、あの異変を感じてから2日後のことだった。
時差と長旅とでだるさを感じないでもなかったが、構っている暇はない。
教師への挨拶も華麗に無視して、覇王は十代が居る筈のレッド寮へと向かった。



コンコン、と軽いノックの音。
自分たちの他に、誰がこの部屋を尋ねてくるというのか。主不在のこの部屋を。
疑問に思いつつも翔はドアを開けようと腰を浮かせ…そして、開く前に乱暴に開けられたドアの向こうにいる人物を見て、
3秒は思い切り固まった。
「あ、あああああ、ああに、アニキ!!?」
「初対面の人間に兄貴呼ばわりされる謂れはない。…十代はどこだ。」
斬って捨てるという表現とは正にこのことか。うろたえる翔や剣山をよそに彼は続ける。
「聞こえなかったか。遊城十代はどこにいると聞いている。」
絶対零度のその声に縮み上がって声も出なくなった二人に、
至極呑気な声で助け舟が出された。
「じゃあ、取り引きしようじゃないか。…十代君似の誰かさん?」
「ふっ吹雪さん!?」
またこの人は何を言い出すのか。普段の言動があまり信用ならないだけに気が気ではない。
「ボクたちが十代君の居場所を話す。その代わり君は正体を明かす。
 …これでどうだい?」
「……。」
胡散臭そうに吹雪に視線を向けて…けれど、彼は承諾した。
「…まあ、良かろう。我が名は覇王。…十代の、双子の兄だ。」
直後、レッド寮に翔の叫びが響き渡った。



話を続ける吹雪をよそに、翔は覇王をおそるおそる観察する。
着ている服はブルーの制服を基調にしているのだろう。色は上下真っ黒だけども。
裾などに入るラインは瞳と同じ黄金。
十代を鏡に映したような容姿。双子なのだから当たり前なのかもしれないが、それにしたって似すぎというものだ。
けれど、十代とは纏う温度が絶対的に違う。そう、正しく「王」を冠するに相応しいような。
「…成程。…大方の事情は飲み込めた。」
「推測も大分多いけどね。今のところ真実は十代君を問い詰めるしかないっていうのが現状だ。」
吹雪はそう、説明を締めくくる。そう、真実は十代しか知らない。
あの日、十代は誰にも何も言わずに姿を消した。彼の身に何が起きたか。彼が何を思っていたか。
それを知る術を自分たちは知らない。
「ならば問い詰めるとしよう。…十代はその、ホワイト寮とやらにいるんだろう?」



その建物は、異様なほどに真白だった。
寸分の隙も無く白に塗りつぶされたそれに、狂気すら感じる。
そしてそこに、今正に入ろうとしている、人影。
―――見間違える筈などない。魂の姿見たる彼を。
らしくもなく、覇王が叫ぶ。

「十代!!」
その声に、一瞬肩が跳ね。信じられないといったように、恐る恐る振り向く。
「……、は、覇王…?」







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あとがき。

予想以上に進まなかった…。そして中途半端…。
この後の覇十会話まで入れるととんでもなく長くなってしまうので、一旦ここで切ります。
覇王様の服装、なんとなくでも伝わりましたでしょうか…?ブルー制服の黒版みたいな…そんなカンジです。

(2007.12.24)





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