見えない、見えない、見えない。
見えないよ。何もかもが真っ白なんだ。
ねえ、助けて、どこにいるの、





「明日、帰るんだってな。」
「…ああ。」
「しかしあっという間だったな〜、1年ってのも。」
我が物顔でベッドを占拠しながらヨハンは笑う。
注意はしない。…ジャイアニズムを極めた彼には何を言っても無駄だとこの1年で覇王は嫌というほど思い知らされたからだ。
なら無駄な労力は使わない。それが覇王様のお考え。
「う〜ん、しかし1度も勝てないまま帰られるとか…ちょっとムカつくぜ…。」
「これが今生の別れというわけではあるまい。奇跡的に機会がありかつ気分がのればまた相手をしてやらんでもない。」
俺としてはこのまま今生の別れにしたいのだが。
そう付け加えると彼はひっでー、とけたけた笑った。




「カードが、見えないのでしょう?」
「何で、それを…?」
「精霊たちが教えてくれたのですよ。あなたが道に迷っていると、ね。」




「でもさあ、ホントは1週間後だったんだろ、帰国。何でまた予定早めたんだ?」
「ああ…。…少し…気になることがあってな。」
いつもばさりと切れ味のいい彼の言葉が滲む。
気になったが、よほどのことなのだろうと思い、ヨハンは追求を止めた。
「ふうん。…まあいいけど。何かあったら遠慮なく連絡してこいよな!」
「…何故俺が貴様を頼らねばならんのだ。ありえん。」




「また、デュエルがしたくはありませんか?」
したいに決まってる、だってデュエルが出来ないと、あいつの傍にいられない。
隣に立つことも、追いつくことすらも許されない。
そんなのって、そんなのは嫌だ、だって、あいつがいなかったら、俺は、俺は。
「ならば、我が光の結社へ。」




「なんでだよ、つれないな〜。俺達親友だろ〜?」
「貴様つけあがるのもいい加減にしておけ。」
必殺の睨み。流石のヨハンにもこれは効いたようだ。
ちぇー、とか何とか言いながらもとりあえずはおとなしくなった。

ヨハンには悪いが、こうしている暇すら惜しい。一刻も早く帰らなければならない、彼の元へ。
数日前に感じた違和感。そしてその日から、彼と連絡が取れなくなった。
何か、あったのだ。彼の身に。
守ると決めた、自分の唯一。手遅れになる前に…早く、帰らなければ。




「光の…結社?」
「そう。大いなる光に加護された、世界を導く存在が集う所です。
 祝福を受ければ絶大なる力を与えられ、世界を変えるための使徒となることができるのです。」
加護?世界を変える?そんな大層なものはいらない。
俺にとって必要なのは、あいつとデュエルだけなんだ。
「その力があればまた…デュエルできるように、なるのか?」
「ええ。光の祝福があれば、容易いことです。」


「さあ
、遊城十代君。」
差し出された、手。
あいつ以外の手を掴む日が来るなんて、ちょっと前は想像もできなかった。

―――ごめんな、
覇王。




「―――っつ!!??」
体中を走り抜けていった衝撃。耐え切れずに膝を付く。
自分の一部をごっそり持っていかれたような、鈍いような鋭いような形容しがたい痛み。
「覇王!?」
異変を察知したヨハンが肩を支える。
「どうしたんだ!?…待ってろ、今人を…、」
「…大丈夫だ。」
「大丈夫ってお前、んな訳ねえだろこんな…凄い汗だぞ!?」
「大丈夫だと言っている!!」
覇王の一喝にヨハンはたまらず押し黙る。一体、何だっていうんだ。

若干落ち着いた呼吸。けれどまだじくじくと、火傷したときのような違和感は消えない。
「大分、落ち着いてきたみたいだな。…ホントに大丈夫かよ?」
「くどい。…これは俺の痛みでは無い。故に心配は無用だ。」
そう、己が痛みを感じることなど有り得ない。あるとすればそれは。

「一体、何があったというんだ…十代。」


今は遠く離れた、琥珀の瞳を持つ半身の。







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あとがき。

ホワイトガッチャパロ序章。アークティック留学中の覇王様+自称親友のヨハン。
同時進行で十代と勧誘する子安斎王(色つき文)。
十代サイドの色は…何というか、光の力に染まってくカンジを表現したかったんですが…。
後半ピンク祭りになっちまってるZE。しかも見にくいしな。作者はいっぺん死ねばいいと思う。
というわけでちょっと死んできます☆

(2007.12.21)





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