たまにはこんなお遊戯は如何?





「ツモ。一盃口。」
「やっすい役で上がってんじゃねェですよ。」
ヱリカが盛大に舌打ちをしながら点棒を投げ捨てる。
ぎし、とお洒落なアンティークの椅子の背凭れが場の空気についていけないとでも言いたげに泣いた。
「ざけんな。てめーそれまた国士無双だろ、馬鹿の一つ覚えみてぇに積み込みやがって。」
「無能に馬鹿とは心外ですね。その萬子の九でも捨ててくれればまた色々甚振ってあげたのにィ。」
ヱリカの白い指が牌を乱雑に薙ぎ倒す。一九一九一九東南西北白發中、うんざりするような国士無双。
付き合わされているコーネリアとガートルードは最早何も言えない。最早、否、最初から、何も、言えない。
(だって麻雀のルールなんて知るわけがないじゃない!)

「今度は何を賭けますゥ?いいんですよ、戦人さんの童貞でも処女でも。」
「てめえは親父のモツ鍋でも食ってろよ。」
じゃらりじゃらりと牌を掻き混ぜる音が響く。
睦言のような悪口を言い合いながらそれでも互いの手元から視線は外さない。
「冗談じゃない。あんなジジイのヤニ臭い肉なんて食べたら舌がイかれてしまいます。」
「はッ。てめぇに正常な器官がひとつでもあるんなら教えて欲しいもんだぜ。」
逆撫でするようなその言葉に、ヱリカは艶然と微笑んだ。
上目遣いで挑発的に見上げ、掻き混ぜる牌の一つを取り上げて触れるだけの口付けを落とす。
けれど次の瞬間にはもう興味が尽きたとでも言いたげに、牌を卓に投げ捨てた。
「あなたも大概イかれてると思いますがね。」
「…違いねェや。」
ざらりと大きく牌を掻き混ぜ積み上げていく。山を切り崩し牌を揃え終わって、戦人とヱリカはどちらともなく凶悪な笑みを浮かべた。
さぁ、駒は、否、牌は並んだ。

「四人リーチ続行。リーチ後のカンは待ちが変わらなければアリ。」
「イカサマがバレたら終了。」
「…始めようか?」
「…今度こそひん剥いてやりますからね、戦人さん。」


ニタリと笑う二人を横目にコーネリアは未だ意味不明の牌を見つめ、こっそりと溜息を落とした。





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あとがき。

読者の声「なんで麻雀?」
はとの声「チェスなんてわっかんねーし!」

(2011.10.25)





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