何かを、忘れている気がするんだ。
俺は大切な何かと引き換えに、このゲームに参加している気が、するんだ。
それはまるで、指に出来たささくれのよう。
大して害はないけれど、どうしても気になって無視できない。―――そんな、違和感。
どうして俺は、屋敷に入るときに戸惑わなければいけないのだろう。
どうして俺は、こんなに広いベッドなのに縮こまって寝ているのだろう。
…どうして俺は、こんな些細なことに違和感を覚えなければならないのだろう?
「どうした戦人ぁあ?もうリザインかぁああぁあ?」
魔女がニヤニヤとタチの悪い笑みを浮かべながら戦人の顔を覗き込んでくる。
「んなわけねェだろが。…まずは第一の晩被害者の死亡を赤で宣言してもらおうか。復唱要求だ。」
「はぁん。強くなったなぁ戦人ァ?だぁいすきな皆が殺されても表情一つ変えないなんざさぁ。」
戦人の心を鷲掴んで揺さぶろうとする魔女に、けれど彼は屈しない。
騙されない。もう二度と騙されない。その強い意志が、眼光となって魔女を射抜く。
「…早くしろ。復唱に応じるのか。それとも拒否か。」
火炙りにするようなその眼差しに、魔女は満足そうにけたけたと笑う。
「くっくっく!成長したお前に免じて、よかろう、その復唱に応じようぞ!」
そんな論戦の裏側で、ささくれは小さく、けれど確実に彼の心を苛む。
―――どうして俺は、ここに”い”るんだろう?
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