さぁさ、言ってごらんなさいな。
煉獄の七姉妹にいつも通りもみくちゃのボロボロの肉塊にされて。気付いた時にはこうだった。
いつものように、身体も服も何事も無かったように綺麗に再生してあった。けれどたった一つ、違うのは。
己の身体が、椅子に縛り付けてあったこと、だった。
がしゃり、がちゃりと金属音が魔女の喫茶室に響く。手も、足も冷たい金属の枷によってしっかりと椅子に縫い止められている。
我武者羅にもがいてみても皮膚が擦り切れただけ。
何より耐えられないのは、纏わりつくような視線だけ寄越して姿を見せないこの悪戯の犯人。
「てっめぇえええぇえベアトおぉおおぉぉおおお!いるのは分かってんだよ出てきやがれ腐れ魔女があああああああ!!」
戦人の激昂を嘲笑うかのように黄金の蝶が踊り狂い、やがてそれらが人の形を成す。
耳障りな高笑いと共に、黄金の魔女が顕現する。
「くきゃはははっはははァ!い〜い格好だなぁああァ、ば〜とらぁあああ?」
大層ご機嫌に笑いながら、ベアトリーチェが縛り付けられた戦人の元に歩み寄る。
「…外せよ。」
「断る。生憎とこのような形でしか、そなたへの愛を表現出来なくてなぁ。」
さも残念と言わんばかりに肩を竦める魔女。わざとらしいその仕草が、一々癪に障る。
頬を撫でる指先から身を捩って逃れながら、戦人は挑発的に魔女を見上げた。
「ハッ。千年生きたとか嘯いてる割に表現力が乏しいと見える。…こんなん愛とは言わねーんだよ。」
「じゃあお前が教えてくれよォ。お前の言う愛ってのはどんななんだよぉ。今の妾は機嫌が良い。そらそら言ってみろよぉ!
お前の言う通りに愛してやるからさぁああぁあ!」
逃避なぞ許さないとばかりに、両の手で戦人の顔を包み込む。
黒と青の瞳が、がちりと噛み合い歪む。前者は嫌悪に、後者は愉悦に。
唇が触れ合いそうなほどに顔を寄せ、ベアトリーチェは、それはそれは優しく囁いた。
「なぁ。お前の愛ってのは一体どんななんだよ。母親を裏切った父親を、それでも許すことか?父親を奪い取った女を慕うことか?
それとも自分には与えられなかった愛情を一身に受ける憎き小娘を妹と可愛がることかぁあァ?」
「ッ!…っ、るせぇええぇぇええええ!黙れ!黙れよッ!お前に俺の!何が分かるってんだ!!」
その叫びは、助けを求める声にも似ていた。漆黒の瞳が、ゆるりと潤む。
ぐらついた戦人の瞳にベアトリーチェは満足そうに、微笑んで。
「幼稚よの。だがそのようなそなたでも妾は愛おしく思うぞ。のう戦人。これを愛と呼ばずして何と呼べばよい?」
必死にかぶりを振って、ベアトリーチェの手から逃れた戦人の頭は、そのまま力なく項垂れる。
「……知る、かよ………もういいだろ……外せよ……。」
「断る。断るぞ。そなたが、妾が納得するような愛情表現を示せたなら、その時は外してやろう。それまでは妾の好きなように、
そなたを愛でることにするぞ。くっくっく!もしかしたら永遠にこのままかもなぁあぁああ?妾はそれで一向に構わぬがな!きひゃひゃははっはは!」
さぁさ、言ってごらんなさいな。
あなたはどんな風に愛されたいの!?
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あとがき。
椅子に拘束、というとあれを思い出しますね。椅子に拘束して爪切り+爪磨きなヨハ十のお話を。いやぁあれは酷い話だった。
同じシチュでロノバト書きたいんだとか言ったら皆様どうしますか。引くよね普通。それにネタの二番煎じとか恥を知れ俺。
(2009.10.03)