こんなのって。こんなのってない。
これじゃあ。意味が、ないじゃないか。
感覚が、蘇る。思考が、蘇る。
己を、”ベアトリーチェ”という存在を知覚する。けれどそれに真っ先に浮かんだのは歓喜ではなく、疑問。
何故。何故自分はここに存在している?もう自分は、諦めた筈なのに。消えた筈なのに。
恐る恐る、目を開ける。飛び込んできた白に反射的に目を瞑り、再度またゆっくりと目を開く。
懐かしい、光景だった。白い部屋。何度も何度もぶつかり合った、対戦席。そして、その向かいの席には。
「……ば、…戦人…?」
思わず疑問系になってしまったのは、彼の姿を忘れたからではない。
だって、こんな。…何があった。彼に何があった?どうしてこんな、抜け殻のような姿を晒している?
ゲームは終わったのではなかったのか。だって、最後に見た彼は、死んでいた、筈で。自分だって、消えた筈で。
彼に触れようと思わず伸ばした手が、ばちりと何かの力によって弾かれる。
「久しぶりぃ、ベアトリーチェ。」
「っ、ラムダデルタ卿…!」
明るく、刺々しい声音。光の欠片が集い、席に座る戦人にしなだれかかるようにして、絶対の魔女が顕現した。
「卿の仕業であるか。」
「違うわァ。アンタの復活なんて、誰が望むもんですか。…この子よ。戦人が頑張ったから、今アンタは此処に”い”る。」
「戦人が…!?」
そんなはずはない。覚えている。彼の、あの冷たくなった身体を。むせ返るような、血の匂いを。
状況が見えない己に、絶対の魔女は揚々と告げた。
彼が死んでいなかったこと。己が消えたあとに漸く彼が、全ての真実を知り、魔女の名を引き継いだこと。
激しいゲームの末に奇跡の魔女すらも打ち破ったこと。
…そしてそれは、己ともう一度対戦するためだけに、行われたこと。
「こうしてアンタは戦人が望んだとおり、蘇りましたとさ。メデタシメデタシ!」
「なら…なら何故戦人はそんな…!」
何も映さない漆黒の瞳。先程からのラムダデルタと己のやり取りにも、ぴくりとも反応しない。そして、首に嵌った血のような色の枷。
奇妙な既視感を覚える。…そうだ。これは己だ。第4のゲームの後の、己だ。
「勘違いしないでよね。アタシは戦人が望まないことなんて、何一つしてないわ。枷を嵌めたのだって、心を縛ったのだって、
全部全部ぜぇえんぶ、この子自身が望んだことなんだから!」
馬鹿な子ね、だからあれだけ言ったのに、と。刺すような言葉で、けれど甘やかすように戦人の頬を撫でる。
どうして。どうしてだ。どうして心を縛るなんて、馬鹿な真似を。折角こうして蘇らせてもらっても。
お前がそんなんじゃあ、意味がないじゃないか。
「もうよいだろう、ラムダデルタ卿。戦人の、戦人の枷を解いてやってはくれぬか。ゲームは終わったのだろう?」
「嫌ぁよぅ。だってゲームは終わっちゃいないわ。そうでしょう?だってこの子が望んだのは、アンタとの再戦なんだから!」
正論だった。酷いくらいの、正論だった。何も返せず睨み付けるだけの己に、ラムダデルタは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「悔しい?ねェ悔しい?残念ね、アンタの玩具はもうアタシのもの!まだ当分遊ぶつもりだから、アンタには返してなんてあげないわ!」
「……なら、奪い取るまでの話よ…!戦人のお望みどおり、戦ってやろうではないか…!」
精一杯に搾り出した言葉は、強がってみせてもがたがたに震えていて。それが余計に、ラムダデルタを愉しませる。
感情をどこにも吐き出せず、握りこぶしをつくってみても、爪が掌に食い込んでも、何も感じない。
ああこれが、怒りか。頭のどこかで呆けた呟きが聞こえた。
「くすくすくす!言っとくけど、この子のゲーム意外とエグいわよ〜?何せあのベルンすらもやっつけちゃったくらいなんだから!くすくすくす!」
そっとそぉっと、戦人の耳元に口を寄せて。吹き込むように、言葉を紡ぐ。
「さぁ。アンタが待ちに待った再戦よ?さいっこーにポップでキュートでグロテスクなゲームで、叩き潰してやりなさいよ!」
ラムダデルタのその言葉に、戦人がのろりと首を上げ、己を見据える。けれどきっと、対戦席に座るのが己であるとは認識していないだろう。
…何の感慨も無い、どこまでも冷め切った瞳だった。
馬鹿な戦人。
…待ってろ。必ず叩き起こしてやるからな。
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あとがき。
ラムダ難しいよラムダ。(お前はもっと他に言うことがあるだろう)
どうも前作でラムバトに火が付いたらしい+レ○プ目首輪戦人萌え+帰ってこいベアトおおぉぉおおぉ=これ 一体どんな足し算だ!
相変わらずはとさん意味が分からない!という皆様のお声が(ry
(2009.09.17)