結局また自分は。
こうやって、閉じ込めてあげることしかできないのだ。



それは、あまりに突然のことだった。気付いた時には十代の身体と、意識もほとんどが闇に侵食されていて。
十代の精神の奥底にいた覇王は、慌てて十代を自分のいる所まで引きずり込んだのだ。
嘗て十代を閉じ込めた所よりも、もっともっと深い領域に。

あれ以来、十代は目覚めない。
覇王の膝を枕に眠る十代は、驚くほどに冷たくて。肌は異様に白く、唇は本来の赤みを失っている。
口元に顔を近づけて、微かに感じられる息遣いだけが、彼女が生きているということを示していた。
「…十代。」
今、十代の身体はどういう状態にあるのだろうか。
覇王には、こうして十代を庇いながら閉じこもるだけが精一杯で、外の状況が全く分からない。
自分たちがここに存在しているから、まだ十代の身体は現実世界に生きて存在していると…今はそう、信じるしかない。


以前、自分が十代を閉じ込めた時…その時、十代の意識はあった。けれど、今回は違う。
昏睡状態…むしろ、仮死状態と言ったほうがいいだろう。
十代の身体を蝕んだのが余程強大な闇だったか、又は、十代の心をここまで抉ってしまうような出来事があったか。
「すまない…十代。」
どうして自分は、守ってやれなかったのか。そう、何より誰より一番、彼女の傍にいたというのに。
襲い来る自責の念に、潰されてしまいそうになる。…けれど、今はできない。ここで倒れることは許されない。
十代がまた前のように笑顔を取り戻すまで…何としても守り抜かなければならない。
潰されるのも倒れるのもそれからだ。それからでいい。

「十代……頼む、起きてくれ…。」
返事が無いと分かっていても、呼びかけずにはいられない。
反応できなくても、聞こえているかもしれない。それで、己が傍についているのだと、十代が分かってくれれば、それだけでもいい。
「今度こそ…守るから。だから、そんな顔をしないでくれ…。」

音も光も、以前のように鏡すらない、漆黒の世界。
この世界に、また光が射すときはくるのだろうか。己を眠りにつかせた時のような・・・光が。
己は二度と目覚めなくても構わない。いずれ、十代の意識の中に溶けていく運命なのだから。
抱き締めた己の半身は、やはり冷たくて。暖めてやれない自分が、とてももどかしい。
「十代。…十代、十代。」


返事をしてくれなくてもいい。せめて、安心して休んでほしいのだ。
お前は一人ではないのだと、この半身は一体いつになったら分かってくれるのだろうか。





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あとがき。

Q,何が書きたかったんですか?  A,覇十の膝枕です
Q,別にダークネス設定である必要はないのでは?  A.そうですね。

事故とかで意識の無い人の応急処置をするときに呼びかけたりするのは、意識はなくても聞こえてはいて、
それが記憶に残るかららしいのです。
そんなイメージ。

(08.03.14)





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