新雪を踏みしめて、踏みにじって、ぐちゃぐちゃにして。
もし。そんなふうに君を汚せたとしたら?
軽くノックをしてから部屋に入る。俺の姿を見つけるなり十代はこちらへ突進してきた。
頼りない肩を抱きとめてやって、不安に瞳を潤ませる彼女に微笑みかける。どうしたの?
「ヨハン、ヨハン。なあ、おかしいんだよ。みんなここがおれのおへやだって、いうんだよ。」
「どうして?おかしな事なんて何も無いよ。ここが今日から、十代の部屋。」
「ちがうもん、ちがうもん!かあさまがおれはきたないからおへやからでちゃだめってゆったからおれはおへやにいなきゃいけないんだよ!
だからここはおれのへやじゃないんだもんおへやからでたらおこられるんだもん!そしたらまたかあさまはおれのことぶたなきゃいけないんだよ、
かあさまにそんなことさせるおれはわるいこで、わるいこにはにいさまもあいにきてくれないから、だからおれおへやにいなきゃいけないんだ!」
その華奢な身体の何処にそんな勢いがあるのかと疑いたくなるような物凄い剣幕で十代は捲くし立てた。
もともと知恵遅れの傾向の見られる十代に、おそらく彼の親は碌な説明もしないままこの地へ送り出したのだろう。どうせ話しても無駄だから、と。
「なあヨハン、おれのおへやどこにいったのかな。どうしたらかえれるかな。かあさまおこってないかな?」
十代はただただ部屋に帰りたいと、それだけを願う。。けれどそれはホームシックからくるものではない。
部屋にいなければ母親に怒られると。十代はただそれだけを恐れる。母親を怒らせる自分は悪い子だからと。嗚呼、可哀想な十代!
あんな所にいたら、十代は幸せになれない。君はもっと愛されて、幸せになるべきなんだ。
…だから俺が愛してあげる。愛して、愛して、愛して…君を世界で一番幸せにしてあげる!!
「…十代、もういいんだよ。」
そう言って髪を撫ぜる自分に、十代は心底不思議そうに、きょとんと見上げてきた。
「もうずっとお部屋にいなくても、誰も十代の事を怒らないんだよ。これからは好きなだけお外で遊んでいいんだ。」
「…どうして?」
長年の定義を突然ひっくり返された事に、十代は首を傾げることしか出来ない。いいよ。ゆっくり、ゆっくり…教えてあげるから。
そうしてじわじわと毒のように染み込ませて…最後には、俺しか見られないように。俺がいなければ生きられないように。
描いた未来図に口角が上がるのを止められない。愛してるよ、十代。
「俺が守ってあげるからさ。ここにいれば、俺が十代を守ってあげられる。だから十代は、自由に遊んでいいんだよ。」
言って、柔らかな唇に己のそれを重ね合わせる。十代のことだから、きっと訳も分からずぽかんとしていることだろう。
だから、すぐに離すつもりだった。挨拶代わりのような、軽いキスのつもりだった。
―――けれど十代は、「求めてきた」のだ。
下唇を甘噛みして、歯列を執拗にゆっくりと舐める。どこまでするのかと思って口を開くと、十代は待ってましたとばかりに舌を侵入させた。
迎え入れた舌を絡めてやれば、鼻にかかった甘い声。嬉しそうな、とても嬉しそうな”嬌声”だった。
…その声を聞いた瞬間、頭の片隅で火花が散って何かが…焼き切れた。
痛がる十代を無視して無理矢理腕を引き、ベッドの上に引き倒す。
そこここに口付けを落としながら淡い桃色のドレスを肌蹴させていく。白雪の肌に、赤い痕。痛々しいのに美しい、倒錯的なコントラスト。
そんな淫らな己の行為にも、十代はあ、とかん、とか短く…けれどやはり嬉しそうな声。
確信する。十代は初めてではない。既に誰かと寝たことがある。相手は誰か?そんなの考えるまでもなくあいつしかいない!
脳裏に過ぎる金の瞳。絶対零度の煌きを持つ、十代の片割れ。双子の兄。
「…十代。いっつも覇王と、こんなこと、してたの・・・?」
「ん、うー、あう……ん、う!」
小ぶりだけれど形のいい乳房を手で包んで揉みしだいてやれば、それだけで十代は返事も出来ないくらいに乱れてくれる。
本当に、どれだけ教え込んだんだ!兄の、妹に対する執着をまざまざと見せ付けられた気がして、眩暈がする。
嫉妬で頭の中が煮詰まって、どうにかなってしまいそうだ!!
性急に下肢に指を滑らせれば、既に濡れた感触。教え込まれた快楽に、ただひたすら従順に。
「もう濡れてる。…そんなに欲しいんだ、十代?…やらしい子だね。」
「っ、ほし…、ほしい、の…!」
耳元で囁けば、やはり素直に欲しいと言う。頬が赤いのはきっと恥じらいからではない。その先にある快楽を知っているから。教えられてしまったから。
柔らかい肉の裂け目に指を差し込む。1本、2本。するりと飲み込んだ十代が愛しくもあり、けれど悲しい。
緩慢に動かせばイイところに当たったのか、一際高い声。
「イイ声。可愛いね、十代。」
「あ、あ…!……ま、にいさまぁっ、うー、ほしいよう…!もっとほしいよう…!」
十代が発したその言葉に全身が凍りつく。頭から冷水を掛けられたかのように、ざっと全身が冷えていった。
十代は、『こういう感覚を与えてくれるのは覇王だ』と教え込まれている。だから今目の前にいる相手も覇王だと思っている。
容姿は全然違うのに。でもいいよ。分かってない事は教えてあげればいいだけのことだものね。
指を引き抜く。突然無くなった感覚に、駄々をこねるように十代が求める。
「やあ、にいさまぁあ、やだあああ、う、やぁあだああああああ!」
「十代。…ちゃんと見て。今十代の目の前にいるのは誰?」
「うー、うぅ…!にい、さま…!」
無意識のうちにか、目を逸らそうとする十代の顎を掴んで引き寄せる。逃がさない。
「違うだろう。ちゃんと見て。この顔はだぁれ?よぉく考えて、答えて御覧?」
「う…、っう…!」
顎を掴まれて目を逸らせないと分かると今度は目を閉じて逃避を図る。小さくかぶりを振って、眼前の違和感を拒絶する。
「ほら、十代。今十代を抱いてあげてるのは誰?君のにいさまじゃないことはもう分かってるでしょう?ほらだって全然違う声だもんねぇ?
否定しても逃げても駄目。ちゃんと向き合って。簡単な、とても簡単な答えなんだから答えられる筈だよ十代。さあ言ってごらん十代。
その可愛らしいお口で、可愛らしいお声で。正解を言ってごらんよ十代!」
恐る恐る彼女の瞳が開かれる。澄んだ琥珀の中に己の姿を見つけて、無性に嬉しくなる。
何かを言おうとしてけれど言葉に出来ず、何度か口をぱくぱくとさせるのを繰り返した後、彼女はようやっと音を発した。
「………、よ、…よ、は、」
「ん?なあに?」
「……………っ、よはん…!」
ようやく出てきたその名前に思わず笑みが浮かぶ。ねえ覇王、これで十代は君だけのものじゃなくなったね!
これからは俺が可愛がってあげる。大事に大事にしてあげる。
「ちゃんと答えられたね。十代は偉い子だね。…じゃあ、いい子の十代にご褒美をあげる。」
「さあ、足を開いて、十代。」
―――愛しい愛しい、琥珀の人形。
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あとがき。
ほうろさん宅のにょた茶での宿題。ヨハにょた十でした〜。はっは〜。
通常はととヘルはととどっちで書けばいいですか?って聞いたらヘルで!って即答されましたしょぼん。
一応設定的には表の「琥珀の寵姫」と一緒。08.01.15のブログでなんかほざいてるので暇な方は覗いてみると暇つぶしになるかも。
これは両親が勝手に十代をヨハンにあげちゃったバージョン。多分というか絶対に覇王様は鬼のような形相で取り返しにきます。こえええ
(08.02.01)