溺れる。
海でもない、湖でもない、川でもない。
広がる闇の中、十代は確かに、溺れていた。
はぁはぁ、と。上気した己の息遣いが聞こえる。
熱い。熱い。ああ、ああ。もう全身が溶けてしまいそうだ。…もういっそのこと、溶けてなくなってしまいたい。
こんな責め苦がいつまで続くのか。意識を飛ばしても無駄だった。すぐさま、暴力的なまでの刺激を与えられ、覚醒せざるを得なかった。
なら死ぬまでか。この心臓が動きを止めて、だがそれぐらいの事で今己の身体を玩ぶものが諦めるとは思えなかった。
十代は、死体となった己が辱められるのをうっかり想像してしまった。思わずえづく。
しかしながら口から出てきたのは胃の内容物ではなく、はしたない嬌声だった。
「や、ああああああ!いや、だ…っ、もう、もうやだ、やだ、うあ、んッ…!」
じゅるじゅると粘液を滴らせながら絡み付いてくる、得体の知れない触手。
狭い奥に2本、3本と容赦なく彼らは競って入り込んでくる。粘液と十代のものが混ざり合って、いやらしい水音をたてる。
ぐちゃり、くちゃりと聞こえてくるそれに、十代は身震いした。
感じてなんかいない。そう言い聞かせても身体の熱が収まるわけもなく。
むしろその逃避の姿勢を感じてか、全身を弄る触手の動きが激しさを増す。
乳首を吸い上げられる。奥を激しくかき回される。しまいには耳にも細い、繊毛のようなものが入り込んでくる始末。
「あ…!あ…!」
高い、高い、自分の声では無いような。否、これが己の声などとは思いたくない。
違う。違うのだ。こんな、…こんな。
暇をもてあましていた一本が、標的を見つけ出す。
別の一本に扱かれていたものの…その先端。にゅるりと繊毛を伸ばし、容赦の無い動きでそれを尿道に突き立てる。
「ひっ、ぎ、……、っい、あ…!あ、うああ、あああ゛ああああー!!」
何もかも放り捨てて、十代は叫んだ。
開きっぱなしの口からみっともなく零れた涎は触手の粘液に紛れて分からなくなった。
そうだ。分からない。痛い。痛いのだ。焼け付くとかなんだかそういう次元ではない。分からない。けれど痛い。
嗚呼、けれど、どうしてだろう―――それと同じくらい、気持ちいい、のだ。
そのことに気付いて…気付かされて、十代は愕然とした。違うと。言い聞かせていたのに。崩れる。崩れてしまう。
入れられた時と同じように乱暴に、尿道から繊毛が引き抜かれる。
あまりに過剰な刺激に逆らわず、十代は白濁をぶちまけた。
屈辱にか、快楽にか、それともその両方か。十代の瞳から一筋、涙が零れた。
しかしながらそれもまた、触手の粘液に紛れて、すぐに分からなくなってしまった。
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あとがき。
これも茶会中召喚の即興文。即興といってもはとさん遅筆なので一時間くらいかかってますが。
最近触手ブームと聞いて乗っかってみた。
触手はいいよねじゅるり。自分のじゃ萌えないけど。
(サイトアップ:2008.07.12)